新型コロナウイルスは最低賃金の引き上げにも影響を及ぼしている。厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会の第2回小委員会が7月10日開かれ、今年の最低賃金引き上げの目安設定をめぐる労使の議論が本格化した。
引き上げを主張する労働者側に対し、使用者側は新型コロナウイルスによる経済状況の悪化などを理由に凍結を求めている。
同委員会は6月26日に始まり、7月20日までの全4回を予定。だが、同省によると、過去には審議が5~6回に至ったケースもあり、今月中に意見がまとまるかはまだ不透明という。
焦点は「新型コロナの影響をどうみるか」
10日の小委員会では、具体的な金額の言及こそなかったものの、凍結を求める使用者側の意見に対して賛否の声が出た。政府方針により2016年以降4年連続で3%前後の引き上げが行われており、労働者側の多くは「経済再生の流れを止めるべきではない」などとして、これまで通りの引き上げ継続を求めた。
例年であれば、労使間の金額に開きがあり、折衷案を設ける方向性で審議が進むことが多いが、今年は使用者側が"凍結"を求めている。このことから、厚労省の担当者は
「今年は例年以上に両者の隔たりは大きい」
と印象を語った。同省によると、経済指標的には景気は上向きつつある。ただ、新型コロナウイルスの影響を数字だけで捉えていいものなのか、には疑問が残るのだ。さらに、
「新規感染者数がまた全国的に増えており、もし再び自粛要請を行うことにでもなれば状況は変わる」
として、今後の感染拡大状況などによっても審議が左右され得るとした。最終的な決定時期については「今回の審議結果で示した目安をもとに、各都道府県が最低賃金を決めます。したがって、両者ともにズルズルとずれ込むことは望んでいないはず」と答えた。
「リーマンショック時も上げてきた」と凍結に反対する人も
ネット上でも意見が二分している。引き上げを求める人からは
「これは小額でもあげるべき。あまり触れられないが日本のデフレ下においても最低賃金は一貫して上昇している」
「リーマンショック後の敗戦処理を押し付けられた悪夢の民主党政権ですら当然のように上げてきたのにね」
などと過去の不況時にも最低賃金を引き上げていた例を挙げる声が多かった。確かに、リーマンショックの影響を強く受けた2009年度の引き上げ率は1.42%、東日本大震災時の2011年度は0.96%と、いずれも引き上げ率は低いものの、プラスで推移している。
一方で「凍結した方がいい。経済実勢に見合わない賃金は失業によって報復される」「今上げると失業率が上がる。労働組合は失業者何ぞ知ったこっちゃない」と失業率の上昇を警戒する慎重派の意見も目立った。
安倍首相は3日、「今は雇用を守ることが最優先課題だ」などとして、今年は「年3%」の引き上げ目標に固執しない考えを示している。