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ワーママのモヤモヤ整理します 第14回 初めての育休復帰、制約ある働き方で「やりたい仕事」は実現できる?

2020年07月13日 06:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
連載「ワーママのモヤモヤ整理します」は、託児付きランチサービス「ここるく」の経営者で、育休復帰・働き方改革のコンサルティングも手掛ける山下真実さんが、ワーママが抱えるモヤモヤを整理・解消に導いていく企画です。

10回目となるモヤモヤ整理の相談者は、7月に育休復帰予定のはるみさん。産休前とは異なる仕事、異なる職場で働くことに不安を抱えているといいます。山下さんがそのモヤモヤを整理していくと、不安な気持ちの原因は、もう少し根深いところにありました。

【今回の相談者】

はるみさん(33歳)
7月から第一子の育休を終え、復帰予定。記者職としてさまざまな分野の取材をしてきたが、復職後は産休前と異なる職場で働くことになっている。

○やりたい仕事はあるけれど……

はるみさん:
「産休に入る前は、記者クラブというところに詰めて、報道発表に基づいた取材をしたり、当事者の方のお話を聞いたり、という仕事をしていていました。しかし復職後は、育児をしながら、ある分野の担当に張り付きになるのは難しいということで、比較的自分で自由に取材テーマを決められる部署へと異動になったんです。育児をしながらの仕事も初めてですし、職場も仕事内容も初めてのことばかりで不安を感じています」

山下さん:
「職場が変わることで、これまで担当してきた取材テーマはがらっと変わる感じですか? その点が不本意だったりはするのかな?」

はるみさん:
「いいえ、産休前からずっと取材してきたテーマを追い続けられる環境ではあると思います。そして復職してからも、やっぱり引き続き取材したいし、子どもを産んだ今の目線でもう一度当事者の方から話を聞きたい、という思いがあります」

山下さん:
「そういう意味では、モヤモヤというか、やりたい気持ちはいっぱいあるんだけど、それが果たしてできるんだろうかっていうところで確信を持てないから、不安なのかしら」

はるみさん:
「そうかもしれません。今までと勝手が違う環境で、さらに時間の制約もある中で、やりたい仕事、やらなければいけない仕事をどう整理していくのか、どう成果を出していくのか、という部分で焦りがあります」

○職場がワーママに"仕事を振りづらくなる"原因は?

山下さん:
「はるみさんからは、すごくポジティブなエネルギーが感じられますね! 復職してがんばりたいんだっていう気持ちが伝わってきます。これはすごくいいことだと思うんですよね。なぜなら、育休から復帰してくる社員を職場が"使いづらい"と感じてしまう要因の一つは"やる気が見えないこと"だからです」「育児という制約により『任された仕事をやれるかどうかわからない、不安で心配です』という発信を部下の方からされてしまうと、上司は仕事を振りづらくなります。良かれと思って仕事を振らなくなるんです。やってみれば出来たことの方が多いかもしれないのに、仕事が振られなかったばっかりに、"これくらいのパフォーマンスは出せますよ"と立証する機会を逃してしまう。そのループが悪循環になって、いつまでたっても結果を出すチャンスが巡ってこない……これが、典型的なマミートラックです」

山下さん:
「だから、根拠はなくてもいい、『やれるかわからないけれど、やりたい』という気持ちは伝えましょう。どの仕事はやりたいのか、でもその中で、どういう制約があるのか、『5時にはお迎えに行きたいけれど、その範囲でこの仕事はぜひやりたい』と伝えて初めて、上司は『それなら振れる仕事は振ろう』『はるみさんが動きやすいようにチームで動こう』といったことを考えられます。はるみさんは、『うまくはできないかもしれないけれど、やってみよう』と思えるタイプだと思うので、きっとこの提案が上司にできるはずです」

はるみさん:
「私、『仕事頑張ります!』と復職の挨拶をしに行ったときに、職場の皆さんから『焦らないで』と声をかけられるのが少し嫌だなと思っていたのですが……今考えてみると、『頑張ります』という言葉を額面通り受け取って仕事を振っても大丈夫なのか、という思いやりの気持ちから生まれた言葉なんですよね」

山下さん:
「はるみさんは、今まで通りの働き方はできないという負い目を感じている中で、『焦らないで』という周囲の配慮を"期待されていない"と受け取ってしまったのかもしれませんね。でもこれは、働くママたちが共通して持っている感覚のような気がします」「もし今度『焦らないで』と声をかけられたら、なぜそういう風に心配してくれるのか、逆取材してみたら? もしかしたら、過去に復帰直後にがんばりすぎて体を壊したママがいたとか、実体験があるのかもしれません。そういう事例から、自分が学べることもあると思うしね」

○ワーママライフは「加点方式」で!

はるみさん:
「私は仕事が始まると、きっとフルスロットルになりすぎてしまうタイプ。実は育児がおろそかにならないかとか、子どもに目を向けられる時間が減ったら嫌だな、という気持ちもあるんですが……」

山下さん:
「もちろん仕事を始めたら子どもと過ごす時間は減ってしまうけれど、保育園になるのかな、子育てを誰かと共有するというのは、すごくその子の人生を豊かにすると思うので、罪悪感を持つ必要はないですよ。保育園という良きパートナーが増えたと思って、その上ではるみ家の子育てが最適化されるように考えればよいのでは? 例えば、平日仕事をしている間は保育園を信頼してお任せして、はるみさんは、ご自身にしかできないお子さんとの関わりに力を注ぎましょうよ」「幼児教室を運営している中で感じるのは、ママたちがみんな、"減点方式"のマインドを持っているということ。家事と仕事だけだった生活に育児が加わるのだから、何かができなくなるのは当たり前のはずなのに、出来なかったことに対してマイナス評価をしてしまっている。でも私からするとそれは逆で、家事、仕事、育児、すべてが100%できない中で、子どもと向き合う時間にいかに手を掛けられるか、 プラスにできる方向で考えられたのなら、『今日は●●が出来た』と加点していっていいはずなんです」

はるみさん:
「確かに、24時間、時間は限られているのだから、できたことに目を向けていった方がいいですね。……山下さんのお話を聞いて、なんだか気持ちが『シャキーン!』となりました!」

山下さん:
「はるみさんだけでなく、全国のママに加点方式で日々を過ごしていただきたいと思ってます。みんな楽しているわけではないし、手を抜いているわけではないんですから。はるみさんは、きっと復職後も活躍していける人だと思います、応援していますよ!」

○山下真実
株式会社ここるく 代表取締役・社会起業家・2児の母
米国留学によるMBA取得、米系投資銀行・金融コンサルを経て、ママになったことをきっかけに子育て支援という全くの新領域へ。人気レストランから選べる託児付きランチサービス「ここるく」を2013年にスタート。サービスを通じて集まる働くママのインサイトと、MBA・コンサルで得た専門知識の両面から、ママ向けサービス開発や育休復帰・働き方改革コンサルティングなども手掛ける。『第14回女性起業家大賞』、三菱UFJ銀行主催『Rise Up Festa』最優秀賞受賞。