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F1技術解説 オーストリアGP:より整流効果を増したメルセデスのコックピット

2020年07月11日 16:11  AUTOSPORT web

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2020年F1第1戦オーストリアGPに多くのアップデートを投入したメルセデス
5連覇中の王者メルセデスが、その実績にあぐらをかくことなく、他のどのチームよりも多くのアップデートを投入してきた。さらに開幕戦でわれわれが目撃したように、車体だけでなくパワーユニットにも改良を施し、驚くほどの進化を遂げている。

 ただしそんなメルセデスといえでも、信頼性は盤石とは言えなかった。1年前のレッドブルリンクでは冷却に大きな問題を抱え、今年の開幕戦ではセンサーに不具合が出た。縁石の凹凸による振動によって、ギヤボックスセンサーが正常に機能しなくなったのだ。そのためボッタスとハミルトンは縁石に極力乗らないよう指示され、一方レーシングポイントのストロールはリタイアを喫した。

 とはいえ開幕戦に投入したアップデート自体は、大きな成果を上げたようだ。まずはコクピット周りから見て行こう。バックミラーの支柱の形状が、変更されたことがわかる(黄色矢印)。滑らかな曲線を描いていたものが、より直角に近くなった。この方が整流効果が大きいと、判断したようだ。


 コクピット前方、ノーズ両側のウイングレットにも、細かな形状変更が施された(赤矢印参照)。フロントウイングが跳ね上げた気流をここで再び押し下げ、サイドポンツーン下部へときれいに流すことが狙いだ。

■リヤウイング翼端板



 マシン後部も、進化を続けている。リヤウイング翼端板の切り欠きが明らかに長くなり、前方に延びた(青矢印参照)。その結果、前方からの気流をより早く受け止め、リヤウイングのインプレートに流し込めるようになった。

 この切り欠きによって翼端板外側に生じる小さな渦(ボーテックス)はさらに強力な気流となって、メインストリームの加速を促す。その結果、車体下部の気流と車体両脇からリヤウイングへと流れる気流に大きな速度差が生じ、ダウンフォースが増大する。ただしこれは利点ばかりでなく、空気抵抗も増大することになる。

 メルセデスはリヤウイングの支柱も、冬のバルセロナテスト2週目で試されたモノサポート(一本支柱)を採用した。さらにディフューザー側面もより丸みを帯びた形状に変更したようだが、鮮明な写真は今のところ入手できていない。これに関しては、近日中に続報する予定だ。