メルセデスF1のチーム代表であるトト・ウォルフは、第1戦オーストリアGPにおいて、チームメイトのルイス・ハミルトンとのバトル中にバルテリ・ボッタスが受けた無線での奇妙なメッセージについて、チームオーダーを表す“マルチ21”ではなかったと述べている。
ボッタスとハミルトンは日曜日のレースで上位を走行していたが、メルセデスのギヤボックスにトラブル発生の懸念が生じたため、ピットウォールはふたりのドライバーにレッドブルリンクの縁石を避けるよう促した。
しかしその後ボッタスに発せられたのは“緊急シャシー設定21”という謎の無線メッセージであり、それは一部の人々にとっては“マルチ21”の状況とも解釈できるコードだった。“マルチ21”は、2013年のマレーシアGPで当時レッドブルのマーク・ウエーバーとセバスチャン・ベッテルに対して発せられた、物議を醸した指示だ。
しかしウォルフは、それは事実ではないと否定した。
「考えすぎないでほしい! これはマルチ21とはなんの関係もない」
「我々はマシンにトラブルがない限り、そうした指示は出さない。それにシーズン序盤の数戦でバトルに干渉するようなことはしない。互いに彼らは完全に自由にレースをした」
「我々が常にやるように2台のマシンに指示したのは、彼らに同じように縁石から離れるようにということだ。そしてある段階では基本的に競う相手がいなかったため、我々はパワーユニットを保護するためにエンジンをローモードに切り替えたのだ」
「チームオーダーなどひとつもなかった。隠語や、ほのめかしや、直接的なものもだ」
しかしながらウォルフは、レース終盤にピットウォールではチームオーダーが検討されたことを認めた。それは、ハミルトンがレッドブル・ホンダのアレクサンダー・アルボンに接触してスチュワードから5秒ペナルティを科された後のことだった。
ボッタスとハミルトンのポジションを入れ替えることで、おそらくメルセデスは先頭で1位と2位を維持できただろう。しかしチームのストラテジストは最終的により良い方式を考えた。
「後になってすべての情報を見てみると、我々は3位になれていたかもしれなかった。話し合いをしたが、非常に混沌とした状態になり始めた」
「我々は何年も前にブダペストでチームオーダーを出したが、すんでのところでフェルスタッペンにオーバーテイクされるところだった」
「私が考えていたのは、5秒ペナルティが出されたとバルテリに状況を説明する必要があり、ルイスには最終ラップでバルテリにふたたび追い越させるよう頼むというものだった」
「だがもしバルテリが追いつけなかったら、彼を抜くことができない。そしてもし(シャルル)ルクレールと(ランド)ノリスが新タイヤで、彼(ボッタス)のギヤボックスがあの状況では、明らかにバルテリはレースで優勝するのではなく4位で終わっていただろう」
「そのような入れ替えをするのは複雑すぎるし、リスクも高すぎた」