経営者や管理職向けの組織コンサル事業を展開する識学の株価が急伸している。7月6日の終値は、前日比300円増の1306円。同日午後には、6月度の月次売上高が前年同月比40.0%増の1億7192万4000円にのぼると発表しており、市場の好感を得たとみられる。同社はリリースで
「新型コロナウイルス感染症の感染拡大による企業におけるリモートワーク等の多様な働き方が進む中で、組織の生産性向上を図ることに対する市場ニーズは高く、当社サービスの需要は継続的に高まっております」
とコメント。3~4月の受注数はほぼ横ばいだったものの、5月から増加した。6月はより大きな増加幅だったという。キャリコネニュースは、同社にコロナ禍でニーズ急増中のサービス内容について聞いた。
組織プロセスの「誤解」「錯覚」を取り除く独自理論
同社が提唱する「識学」は、組織内の意識を向上させて、マネジメントを改善していく独自の理論で、経営者向けセミナー、マンツーマントレーニングを通じて提供している。「人が物事を認識して行動に移すプロセスに誤解や錯覚があると、行動を誤る」という考え方をベースに、これらを取り除いて行動を正すことを目的にしている。
例えば、一般的な会社員の場合は「サービスを提供し、客から対価をもらう。会社員への給料は、この働きに対して支払われる」というのが、会社員とその報酬の考え方だ。
ところが、多くのケースでは「給料をもらったからサービスを提供する。その結果として、客から対価をもらう」と無意識のうちに順序を誤解してしまいがちだという。こうした誤解は、部下のモチベーション低下を招くといい、特にテレワーク環境などの上司がいない環境では"頑張れない部下"を生んでしまうというのだ。
さらに酷いケースでは、上司の指示通りに部下が動かなくなることもあるという。「識学」では、一つ一つの事象に対する物事の捉え方を体系化しており、組織が正しいロジックを認識することで、最短で一定の成果が出せるようになる、とされている。
部下のモチベーション維持は上司の仕事ではない?
では、なぜ新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、同社の「識学」が注目を集めているのだろうか。背景には、やはりテレワークの浸透があるようだ。同社広報は
「今までは上司が部下の行動を間近で見ていて『元気がなさそうだ』とか認識することができていました」
と説明する。ところが、必然的に互いに顔の見えない時間が長くなるテレワーク中では、相手の様子を確認することができない。実際に、著しく生産性が低下した企業からの相談が相次いでいるという。
同社広報は「部下のモチベーション維持は、上司の仕事と考えている人はまだいっぱいいます」とした上で、
「新型コロナの影響を受け、それでは組織を動かし続けるのが難しいケースが増えてきました」
と話す。「識学」は、業界業種を問わずに使える理念で、これまでも比較的人数の少ない企業から大企業までで、一定の成果を出しているという。「今後も顧客が困っていることを解決することで、期待に応えていきたいです」とコメントした。