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“客入りライブ”、様々な工夫で徐々に復活か ハロプロ、和楽器バンドら対策方法から考える現場の現在

2020年07月04日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ライブハウス イメージ写真

 新型コロナウイルスの影響で以前のようにライブを行うことができなくなってしまった。それでも音楽を届けようと奮闘しているアーティストや関係者もいる。特に無観客配信ライブは続々と行われるようになった。チケットぴあは『PIA LIVE STREAM』をイープラスは『Streaming+』という配信サービスを開始したりと、配信ライブをサポートする環境も整いつつある。横浜アリーナで行われたサザンオールスターズの無観客配信ライブは3,600円のチケットが約18万枚売れ、総視聴者数は推定50万人を超えたりと、ライブ配信は一般的になりつつある。配信ではあるが、ライブによって多くの人に力を与えてくれた(参考:日本経済新聞「サザンが初の無観客配信ライブ 約50万人が視聴」)。


参考:Base Ball Bear 小出祐介が考える、コロナ以降の音楽シーンの変化


 しかしあくまでも無観客配信ライブはコロナ禍で音楽を止めないための一時的な措置で、生のライブの代替にはならない。アーティストを目の前にして生で観るライブには他で代用できない感動がある。かつてのように3密の環境でライブはできないが、様々な制限がかかる中で工夫して観客を入れたライブを行うアーティストも増えてきた。


 大阪府でライブハウス営業が条件付きで自粛解除された6月1日には、セックスマシーン!!が大阪のライブハウス・ANIMAでライブを行った(参考:産経フォト ビニール幕で仕切り熱唱 大阪・アメ村のライブハウス再開)。最大収容人数の6分の1の客数で、観客は着席でステージと客席を2m以上離しアクリル板で遮蔽する等の対応をしている。東京では6月24日に渋谷WWWでアイドルユニットのあっとせぶんてぃーんが観客を動員しライブを行った。客席の間隔を1m開け、ホールの出入り口ドアを開放したままにする等の対応を取っている。こちらも最大収容人数の6分の1以下の客数でライブを行った(参考:BARKS 【ライブレポート】あっとせぶんてぃーん、4ヶ月ぶり観客動員ライブを渋谷WWWで開催)。


 ライブハウスやホールで通常通りにライブが行えないならばと、C&Kは「ドライブインライブ」を開催。野外に設置されたステージで行うライブを観客が車の中から鑑賞するユニークなライブだ。観客はヘッドライトをつけたり、ワイパーを動かして盛り上げた(参考:音楽ナタリー C&K、車の中から鑑賞する“ドライブインライブ”開催)。


 ホールやアリーナ、ドーム規模のライブも少しずつ再開の目処が立ってきた。ハロー!プロジェクトは7月11日・12日東京・中野サンプラザ、7月18日・19日大阪オリックス劇場、7月25日宮城・仙台サンプラザホールにてライブを行う予定だ。ソーシャルディスタンスを取った配席でチケット販売を行い、観客にはマスク着用を義務付けている。通常のライブとは違い観客には着席での声出し禁止を求めているので、それでも楽しめるようにとメンバーがそれぞれソロでカバー曲を歌い、普段の盛り上げるライブとは違い歌をしっかりと聴かせる内容でライブを行うという(参考:ハロー!プロジェクト公式サイト)。


 客席数を半分以下にしてライブ内容は通常通りに行う予定のアーティストもいる。和楽器バンドは8月15日と16日に横浜アリーナで客席数を50%に抑えてワンマンライブを行うと発表した。鬼頭明里は9月から10月にかけて行うライブツアーを収容可能人数を絞り行うと発表している。それに伴いチケット代は値上げした。和楽器バンドは2019年に行ったアリーナライブのチケット代金は8,900円だったが、今回は10,000円(いずれも税込)に変更している(参考:和楽器バンド、横浜アリーナ公演を会場収容人数50%以内の定員で開催 ソーシャルディスタンスを確保した上で実施)。鬼頭明里に関しては当初発表していた6,800円のチケット代金を、コロナ収束後は元の金額に戻すことを前提として12,000円(いずれも税別)に値上げを行った(参考:鬼頭明里公式サイト)。音楽ビジネスを崩壊させないためにも、しっかりと利益を出す方法を模索しているようだ。


 現時点で最も大規模な単独ライブ開催を予定しているのはLDHである。政府方針では順調ならば8月1日からコンサートの収容人数が上限はなく収容50%の条件だけになる。そのため安全第一を前提に8月以降にドーム規模でのライブを行うと発表した(スポーツ報知 EXILE HIRO、最短8月にドーム規模のライブを計画 LDH所属アーティスト出演)。


 音楽フェスで開催を目指しているのは『SUPERSONIC 2020』だ。海外からもアーティストを招き9月に千葉と大阪で行われる予定の音楽フェスだが、東京で5万人を予定していたキャパを3万人に減らし開催することを目指している。大阪は2万人以下にする予定らしい。会場のレイアウトはソーシャルディスタンスを保てるように変更したり、サーモグラフィーによる検温や消毒設備を設置する等の対策を取る予定だ。開催が実現すればコロナ禍になってからは世界初の数万人規模の音楽フェスになる(参考:ダイヤモンドオンライン サマソニ主催者を直撃!コロナ後世界初の数万人規模のフェスを開催する理由)。


 2月28日に緊急事態宣言が発表されてからライブ事情は大きく変わってしまった。4月以降は通常のライブは行われなくなり、以前のように安心して生でライブを楽しめる日がいつやってくるのかわからない。しかし少しずつではあるが前進もしている。工夫しつつもライブを開催しようとしているアーティストがたくさんいる。元に戻るまでは時間がかかるかもしれないが、音楽を愛するミュージシャンや関係者、ファンがいる限り音楽がなくなることはない。(むらたかもめ)