2020年07月01日 18:42 弁護士ドットコム
衣料用柔軟剤などの香りで体調不良となり、通学や仕事に支障が出てしまうーー。そんな被害の実態が民間団体の調査で浮き彫りになった。香害の被害実態を調査する市民団体「香害をなくす連絡会」が2019年12月下旬から今年3月末まで、アンケートを実施した(回収総数9332件)。
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アンケート集計結果からは、退職や休学せざるを得ない人がいること、具合が悪くなる原因の筆頭として、柔軟剤、香り付き合成洗剤をあげる人が多いことがわかった。
アンケートを実施した「香害をなくす連絡会」の杉浦陽子さんは、「9332件もの回答数に、被害者がこんなに多いのかと改めて驚きました。香害による体調不良は、ある特定の人だけに起こるのではなく、誰しも発症する可能性があるもの」として、被害の実態を多くの人に知って欲しいと話した。
同連絡会はこれまで、関係省庁や複数のメーカーに対し、香害対策に関する要請を行ってきた。杉浦さんも「草の根の活動により、現場は大きく変わりつつある」と手応えを語る。例えば、独自に作成した化学物質過敏症の説明、香料自粛を求めるポスターを公共機関などで掲載する自治体が全国にあるという。
ただし、学校など全国で動きを広げるためには、厚労省の通知などが必要だ。そこで「国が重い腰を上げてくれないなら、何に苦しみ、望んでいるのか明らかにしたいということから、独自のアンケートを行った」(杉浦さん)と実施の背景を語る。
アンケートには「においで体調不良になったことがある」と約8割(7136件)が回答した。なお、アンケートは実施団体の会員やその知人からの回答が多く「無作為抽出ではないため、必然的に香害への関心が高く、被害者の割合も高い」(杉浦さん)という。
香害の症状としては「頭痛」(4812件)が圧倒的に多く、他に「吐き気」(4557件)、「めまい」(1778件)があがった。
香害を引き起こす原因となる場所は「乗り物の中」(5227件)が最多で、4位には「隣家から洗濯物のにおい」(3356件)があがった。
また、「仕事を休んだり、職を失ったことがある」「学校に行けなくなったことがある」と回答した人は1277件にのぼり、18.6%(香害被害が「ある」と回答した7136人のうち、無回答278人をのぞく6858件中)もの人が社会生活に深刻な影響をもたらしたことがわかる。
自由回答には、香害に悩む人たちの声が並んだ。学校に通学できない子どもや、公共交通機関が使えないため出勤が困難になっている人、職場で対応を求めたところ自主退職を余儀なくされた人も複数いた。
「(子どもが)通っていた幼稚園に、全く入れなくなりました。丸二年、登園しないまま、卒園します」(10歳未満)
「クラス全員で体操着に着がえる時に教室中、様々な香りが混ざり、そのにおいが充満して気持ち悪くなり、頭痛がひどく、帰宅後寝込んだ」(10代女性)
「ニオイの強い人が新しく職場に入ってきたので控えて欲しいと願い出たが断られ、こちらが退職した」(40代女性)
「そもそも公共交通機関を利用することが非常に困難になってしまった」(40代男性)
「派遣先で警備員から呼び止められた。理由は総務から防毒マスクを着用している不審者がいると連絡があったそうで、まるで職務質問のようなことをされた」(50代女性)
「同僚に(香りを控えるよう)お願いすると『あなたの弱い体質に合わせて洗濯柔軟剤を変える筋合いはない』と言われました。受動喫煙と同じ状況だと思います。有害性が広く知れ渡り、問題解決の糸口になって欲しいです」(30代女性)