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カネコアヤノ、オンラインライブで届ける熱量とメッセージ スペースシャワーによる「LIVEWIRE」幕開けへの期待

2020年06月29日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

「LIVEWIRE」

 スペースシャワーによる有料課金型ライブ配信プラットフォーム「LIVEWIRE」がスタートする。


(関連:KID FRESINOとカネコアヤノの個性が交わる「Cats & Dogs」 移りゆく街の日常を描写するふたつの視線


 今も新型コロナウイルス感染症の拡大により、アーティスト、スタッフ、ライブハウスといった音楽シーンが危機的状況に立たされている。「LIVEWIRE」は、この事態を打開すべく設立された。音楽の未来を創る新たな選択肢、興行、収入源、コンテンツの形として新しい時代を切り開くサービスプラットフォームの開発に取り組んでいく。


 一言で例えるならば「LIVEWIRE」は、オンライン上のライブスペースだ。スペースシャワーがキュレーションしたアーティストのライブ配信に、物販販売システムを併設、今後はアジア圏のユーザーをターゲットにした海外展開も予定している。


 オープニングシリーズとなる第1弾に発表されたのはカネコアヤノ、Suchmos、銀杏BOYZ、くるり、中村佳穂、PUNPEE。7月5日にその幕開けを飾るのがカネコだ。


 カネコは2019年9月にリリースしたアルバム『燦々』の全国ツアーとして、2020年1月から3月の間に全国11カ所でライブを行う予定だったが石川と沖縄公演が延期に。キャリア最大規模となる大阪市中央公会堂、中野サンプラザで開催予定だった『ワンマンショー2020春』、さらに出演予定だった数々のイベントも延期を余儀なくされた。


 2月26日、政府からのイベントの中止、延期の要請発表を受けて、翌日の石川公演の延期が決定。カネコは「悔しいので明日19時からインスタライブします」とTwitterに綴り、ライブ配信を通して来られなかったファンに歌声を届けた。3月15日にはYouTube Liveを通して、バンド編成のパフォーマンスを生配信している。


 「明日からも音楽を止めない、辞めない 信じてる」ーーそうTwitterに宣言したのは、『ワンマンショー』の延期が決まった翌日の4月9日。ラジオ番組『SONAR MUSIC』(J-WAVE)の火曜ナビゲーターを務めるカネコは、番組の意思に賛同し、弾き語りという形で音楽を止めることをしなかった。


 カネコアヤノの魅力は、歌の中に生活の匂いがすることだ。例えば、『燦々』の1曲目「花ひらくまで」のラストは〈咲くのに時間がかかってる/チューリップ眺めて/温かいお茶をすするのです〉と和やかな描写で締めくくられる。KID FRESINOとの共作「Cats & Dogs feat. カネコアヤノ」でカネコが歌うパートは、〈洗濯物が揺れる様を見たいよ/今日は絶対に頑張らない/パジャマのままでいさせてよね〉と怠惰な1日の始まりを想像させるリリックだ。


 彼女のシンプルかつストレートな歌詞から浮かび上がってくるのは、日々の生活の中にあるささやかな幸せ。このコロナ禍により、なんでもない毎日が特別な暮らしの中にあったのだと誰もが痛感したことだろう。少しずつ元の日常を取り戻しつつ今、人間は悲しいほどにその実感を忘れていくが、カネコの音楽はこの先の未来に進んでいく勇気を与えてくれる。


 実際、自粛期間に筆者が救われた曲がある。2018年4月リリースのアルバム『祝祭』の1曲目に収録された「Home Alone」。〈確信的な朝を何度もむかえにゆくために/これからも ずっとどうにかしなくちゃ/君をおどろかせていたい/確信的だ 今日は必ずいいことあるはずだ/追いかけたバスが待っていてくれた/かっこいいまま ここでさよなら〉。カネコの歌詞に散りばめられているのは日常に潜む不安、そこから一歩踏み出す勇気。〈確信的だ 今日は必ずいいことあるはずだ〉。そう自分に言い聞かせることで、人は今日に、明日に期待して生きていける。


 「ライブハウスの空気、いつ吸えるのかな。元気だけど度々不安に襲われる毎日です。オンラインでライブを何度かしました。伝わっている事実が嬉しいからこそ、早くみんなの体温がある場所で歌いたいと願います」ーーカネコは撮(録)り下ろしライブ映像作品&音源作品の特設ページにこう綴っている。期待に満ちた空気感、鼓膜を震わすスピーカーからの音。ライブハウスには何ものにも代え難い体験が存在するが、オンラインライブにおいてもアーティストの伝えたいメッセージ、熱量は十分に届く。


 先日、6月25日にサザンオールスターズが有料配信ライブを大々的に開催。今後、さらにオンラインライブの形は身近に、当たり前になっていくことだろう。そこでより求められるのが、高い音質と熱気を伝える映像体験だ。「LIVEWIRE」は、スペースシャワーが30年間の映像制作で培ってきた経験とノウハウを活用し、ライブ収録から配信までワンストップオペレーションを実現する。


 スペースシャワーとカネコと言えば、J-WAVEとタッグを組んだ公開収録企画「DRIP TOKYO」出演時の様子、テレビ放送とYouTubeを融合させた音楽映像プロジェクト「DAX」にアップされている『森、道、市場 2019』でのライブ映像をそれぞれYouTubeで観ることができる。どちらも高画質で、カメラワークも良く、高水準のライブ映像を届けてくれるという絶対的な信頼がスペースシャワーにはあり、「LIVEWIRE」も同等、もしくはそれ以上のクオリティのライブ配信が実現するだろう。


 7月5日の記念すべき「LIVEWIRE」こけら落とし公演は、伊豆スタジオからバンドセットにて生配信となる。伊豆スタジオは、カネコが初期からレコーディングで利用している縁の地。「第二の実家のような場所 私が音楽を鳴らしていくためにはこの先もずっとここに居てくれなきゃ困る 音楽の右も左も教えてくれたのは愛してやまない伊豆スタジオです」とカネコはコメントしている。サポートはギター林 宏敏(ex. 踊ってばかりの国)、ベース本村 拓磨(Gateballers/ゆうらん船)、ドラムBob(HAPPY)という不動のバンドメンバー。彼らも迎え、前売りチケットの事前購入者に向けた事前番組を7月2日に配信し、そこではライブへの意気込み、伊豆スタジオへの思い、さらにTwitterで募集した質問に答える時間も設けるとのことだ。


 この先も音楽は鳴り止まない。「LIVEWIRE」が切り開いていく音楽の未来の新たな形を、まずはカネコが力強く大胆な歌声で届けてくれる。(渡辺彰浩)