《混んでたら、今はやめて、後からゆっくり》
《おみやげは、あれこれ触らず目で選ぼう》など……。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため都道府県をまたぐ移動自粛が緩和された6月19日、観光庁から「新しい旅のエチケット」が発表された。
ゴールデンウイーク前には全国の知事がこぞって「越境して来ないでください」と訴え、観光どころか、冠婚葬祭に出席できない人も続出。
他県ナンバーの車を見つけるといやがらせをする“自粛警察”も問題となったが、そんな異常事態もなくなっていくだろう。
ツアー利用でおおよそ半額に
この夏は政府が旅行などを支援して観光地の需要喚起を促す事業「Go To キャンペーン」も控えている。自粛生活や巣ごもり生活でストレスを抱えていた人たちが一斉に、遠出をする機会となる。
「キャンペーンはそうした観光地へ広くお金が落ちる仕組みですから、観光業者だけではなく、利用する私たちもお得なので、ぜひ使ったほうがいいと思います」
と消費経済ジャーナリストの松崎のり子さん。
その内容については、
「1泊に最大2万円ぐらいの補助がついて、おおよそ半額になります。補助の70%が宿泊費と交通費、残りの30%が現地で食事するときなどのクーポンです。ただし、旅行代理店を通したツアーに補助されるものです」(松崎さん)
委託費をめぐる問題で、このキャンペーンの運用は遅れそうだが、活用したいもの。
とはいえ、コロナの感染者が増えている地域もあるなか、どこへ旅行に出かけ、どう予防に気をつければいいのだろうか──。
今年5月の「日本マーケティングリサーチ機構」の調査で、夏休み中にどこへ行きたいかという質問に、「自然の多い観光地」が約42%、「温泉地」が約31%と大きな割合を占めている。
近隣の穴場スポットや日帰りがおすすめ
女子旅用のブログなども手がけるトラベルライターのSHIORIさんは、アフターコロナの旅行は「日数よりも場所」だとアドバイスする。
「特に密になりそうな人気の観光スポットは避けて、近場の穴場的なところへ1泊や日帰りで行く小旅行がおすすめです。
東京にお住まいであれば、人けがなく、自然が多い茨城、栃木、群馬などがいいと思います。特に、キャンプなどのアウトドアや、ロッジなど1棟貸しの宿は、人と接する機会が少ないので最適ですね。
また、全国各地に疫病を鎮める神社などのパワースポットがあるので、自然を満喫しながら、そこへ参拝するというスタイルが女性を中心に多くなると思います」
SHIORIさんが、具体例を続ける。
「少し前に私は、茨城県の鹿島神宮に行きましたが、境内が広くて、池が神秘的で、非常に素敵なところでした。
そのあと、農業体験をして、とったさつまいもやレンコンを食べたのですが、それがとてもおいしくてね。お子さんにも食育の体験として貴重だと思います」
旅行に持参したほうがいい5アイテム
そんな場所での対策はどうすればいいのか──。日本医科大学の北村義浩特任教授(ウイルス学)が、新しい旅行様式の基本を解説する。
「まず、65歳以上の方や持病がある方は、まだ旅行は控えたほうがいいと思います。
どこへ出かけるときにもマスク、消毒液、体温計、ビニール手袋、スリッパを持参したほうがいいでしょう。
ドアのノブなど不特定多数の人が触るところには手袋や消毒液、トイレでは床に飛沫が付着しているので、スリッパで守ったほうがいい。体温計は現地で調達しようとしても、いまは品薄ですからね」
アウトドアや農業体験での注意点をKARADA内科クリニックの佐藤昭裕院長がこう説明する。
「バーベキューなどで箸や皿の共有は危険です。取り分け用のトングやマイ箸などを用意して使い分けましょう。大皿の料理を各自でつついたり、飲み物の回し飲みは避けるべきです」
神社などのパワースポットでも、やはり共用スペースがある。
「参拝前にお浄めをする手水や、参拝のときに鳴らす鈴は使ってもいいと思いますが、触ったあとの手洗い、消毒は念入りにしておきたいです」(佐藤院長)
手水では口をゆすぐこともあるが、控えたほうがいいだろう。
人気No.2の温泉では、湯船自体にあまりリスクはないようだが、やはり共用の更衣室に気をつけたい。
「更衣室のかごやドアのノブは誰もが触るところなので、触ったあとはきちんと手洗いをするか、消毒が必要です」(北村特任教授)
これからの季節は、花火や夏祭りが開催されるところもある。いかにも“3密”になる条件がそろっているが、佐藤院長は、
「外に出ず、他人とは接しない車中や屋内からが理想的です。出店での飲食は、なるべく避けたほうがいいですね」
飛行機・電車・バスでの感染ガード術
そして、いちばんの問題になるのが往復の交通機関だ。旅先が密ではなくても、移動中に感染するリスクはある。
北村特任教授はこう話す。
「マイカーでの移動がベストですが、遠方であれば、新幹線よりも窓が開くローカル列車のほうがいいでしょう。ただし、向かい合わせの席は飛沫を受けやすいので避けてください。
飛行機の窓は開きませんが、換気は問題ありません。しかし、いずれの乗り物も、ドアの取っ手や荷物入れやトイレは共用となるので、手洗いや消毒を心がけたいですね。
駅や空港、サービスエリアなど密になるところではマスクをつけて、なるべく話さないように注意したいです」
日帰り旅行はバスツアーも多いが、車内の密状態が心配される。
「車内の換気がどうなっているのか、定員に対してどのくらいの乗車率かを事前に問い合わせて調べたほうがいいでしょうね」(佐藤院長)
ある旅行業界関係者は、こんなエピソードも明かす。
「日帰りバスツアーの食事は、ビュッフェ形式が多いですが、マイトング持参のツアーもできました。
ほかにも、果物狩りでの種や皮の吐き捨て禁止など“新・旅行様式”を唱えているところも増えています」
そんな細心の注意を払いながら、コロナストレスを解消するため、観光地の経済を促進していくためにもつかの間の小旅行を楽しみたい!
KARADA内科クリニック 佐藤昭裕 院長
東京都品川区西五反田1-2-8 FUNDES五反田10階