2020年06月27日 09:11 弁護士ドットコム
不倫相手と一緒になることを夢見ていたのに、裏切られたーー。このような経験をした人たちもいる。中には、そのために離婚をしたのに、不倫相手と結ばれなかったという人もいるようだ。
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弁護士ドットコムにも「ダブル不倫をしていた相手と結婚を考えていたのに、一方的に別れを告げられた」という男性が相談を寄せている。
相談者自身も既婚者だったが、子持ちの既婚女性と不倫関係を続けていた。しかし、不倫相手と一緒になることを決意し、妻とは離婚。不倫相手も夫と離婚すると話していたことから、その日を待ち望んでいた。
ところが、不倫相手に「子どもの成長を近くで見たい。やっぱり不倫はよくないし、夫とは離婚しない」と言われたという。
不倫相手と一緒になれることを期待していただけに、相談者は納得できない様子だ。「相手に慰謝料を請求したい」と考えているという。
このような場合、慰謝料を請求することはできるのだろうか。離婚問題に詳しい澤藤亮介弁護士は次のように説明する。
「相談者の男性の心境としては、『自分は約束を守って離婚したのに相手方の女性がそれを守らなかったのは理不尽』だとして慰謝料を請求したいところかと思われます。
しかし、慰謝料が認められるためには、原則として相手方の行為に不法行為(民法709条)が成立する必要があります。その成立が認められなければ、慰謝料請求は認められません」
相談者と不倫相手の関係は、W不倫の交際相手同士ということになる。夫と離婚し、相談者と一緒になることを約束したにも関わらず、後になって離婚しなかったという不倫相手の行為は、はたして「不法行為」といえるのだろうか。
澤藤弁護士は「不法行為の成立要件である『違法性ある加害行為』がそもそも認められがたく、不法行為はまず成立しないと言えるでしょう」と語る。
「仮に、2人に婚約関係が成立していたと言えれば、婚約不当破棄に基づく慰謝料(『不法行為』のほか、婚約(結婚予約)という契約についての『債務不履行』とも考えられます)の余地があります。
しかし、2人とも既婚者であることをお互いに認識していたという事情の存在や、女性側も結局離婚しておらず、女性側の婚姻関係が実質的に破綻していたとは考えにくいことから、法的保護に値する婚約が成立していたと判断されることはほとんどないでしょう。
なお、既婚者であるにもかかわらず、独身と誤信させて性交渉を含む交際をした場合は、貞操権または人格権侵害に基づく慰謝料請求が認められる可能性があります。しかし、今回のケースではそのような事情もないかと思われますので、このような慰謝料請求も難しいと思われます」
今回のケースのように、相手と一緒になるために離婚に踏み切ってしまう場合もある。澤藤弁護士は、次のようにアドバイスする。
「法的に明確な保護を受ける夫婦間における慰謝料請求と比べて、婚姻関係にない交際相手同士間において慰謝料請求が認められる場合は、婚約破棄や内縁関係破棄など限定的であるといえます。
今回のケースのように、W不倫の事案で双方が不倫交際であることを認識しつつ交際し、その上で何らかの約束をし、それを反故にしたという事案において、裁判所がその関係性に法的保護を認めることはさらに限定的であるといえるでしょう。
そのため、相手方が離婚して一緒になるとの約束を果たされなかったとしても、事後的に慰謝料で法的な救済を受ける可能性はかなり低いと考えた上で、ご自身の離婚については慎重に検討された方がよろしいでしょう」
【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。離婚、男女問題などを中心に取り扱う。自身がiPhoneなどのデバイスが好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:東京キーウェスト法律事務所
事務所URL:https://www.keywest-law.com