NASCARは6月21日、アラバマ州タラテガのタラテガ・スーパースピードウェイで行われている“ガイコ500”会期中、黒人ドライバーのダレル・ウォレスJr.(シボレー・カマロZL1)のガレージで縛り首に使われる縄が見つかったと発表。「ただちに捜査を開始しており、犯人をこのスポーツから排除する」と強い憤りを示した。
“ババ・ウォレス”の愛称でも親しまれているウォレスJr.はNASCARカップシリーズ唯一の黒人ドライバー。リチャード・ペティ・モータースポーツでカーナンバー43のシボレーをドライブしている。
アメリカでは、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害された事件を受けて反人種差別運動が活発化しており、一部は暴徒化するなど社会問題に発展している。
NASCARは、フロイドさんの件を受けてあらためて人種差別反対の立場を示しており、6月10日には一部で奴隷制正当化のシンボルとみなされるアメリカ連合国国旗の使用禁止を通達するなど対策を講じてきた。
そんななか、カップシリーズにフル参戦する唯一の黒人ドライバーであるウォレスJr.のガレージに、“引き結び”と呼ばれる縛り首などで使われる結び方がされた縄が置かれるという事件が発生した。この引き結びがされた縄は差別行為のひとつとして、黒人が住む家の前などに置かれることがあるという。
また現在NASCARは新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で観客を受け入れない無観客状態での開催が続いている。そのため21日のタラテガ戦でチームのガレージに立ち入ることができたのはカップシリーズ参戦チームのスタッフとドライバー、レースオフィシャル、コースオフィシャル、医療部隊など安全面に関わるスタッフなど、レース運営関係者のみとなることも、シリーズ関係者に衝撃を与えた。
この件を受けて、NASCARは現地21日午後に声明を発表。「この行動に強い怒りと憤りを覚えており、今回の事態をどれだけ真剣に受け止めているかを的確に表す言葉がみつからない」と怒りを露わにした。
「21日の午後遅く、カーナンバー43(ウォレスJr.)のガレージから縛り首用の縄が発見された。この行動に強い怒りと憤りを覚えており、今回の事態をどれだけ真剣に受け止めているかを的確に表す言葉がみつからない」
「我々はただちに調査を開始している。事件の犯人を特定し、この件に関わった者をNASCARから排除するまで、可能なことはすべて実行する」
「以前に発表したとおり、NASCARが人種差別を受け入れることは決してない。今回の件により、我々はあらゆる人々を受け入れるスポーツであるとの認識をより一層強くした」
被害にあったウォレスJr.は自身のTwitterに「今日行われた人種差別的で卑劣な行動は、私に信じられないほどの悲しみを与え、また社会全体として人種差別根絶への道のりがどれだけ遠く、かつ長期に渡るものなのかを痛感させられた」と胸中を明かしている。
「この数週間、NASCARにかかわる企業やドライバー、チームスタッフからは人種差別反対運動に強いサポートがあり、彼らの支援に驚かされてきた」
「私は彼らと協力して、このスポーツに真の変化をもたらし、あらゆる人々を受け入れるコミュニティに進化させていく」