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『エール』山崎育三郎が見せる表情の変化 ”プリンス”でキザな久志が半泣き?

2020年06月22日 12:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『エール』(写真提供=NHK)

 昭和11年、裕一(窪田正孝)はご当地ソングや球団歌を数多く手がけ、安定した作曲家生活を送っていた。そんな中、コロンブスレコードが新人歌手を発掘するオーディションを行うことに。NHKの連続テレビ小説『エール』が第13週の初日を迎え、いまだ歌手デビューできていない久志(山崎育三郎)がオーディションを受けると決心する。


 廿日市(古田新太)から「低め安定」と嫌みを言われた裕一は、鉄男(中村蒼)の屋台で愚痴をこぼす。そこへやってきた久志もまた、音楽学校の後輩が歌手デビューしたことに不満をたれていた。しかし鉄男は厳しい言葉をかける。


「だったらおめえもプロになれよ。後輩に先越されてる場合か?」


 山崎が見せる表情の変化は面白い。鉄男と裕一に痛いところを突かれた久志は居心地悪そうに目線を逸らす。音楽学校卒業直後の久志は堂々としているが、3年前、2年前と今に近づくにつれて、久志の言動は徐々に自信なさげになっていき、1年前にいたっては「僕だよ……。ねえ、みんなのプリンスの……僕、佐藤久志だよ!?」と半泣きの久志が映し出される。


【写真】幼き久志


 “プリンス”らしいキザな振る舞いが印象的だった久志だが、山崎の表情が徐々に情けなくなっていくことで、彼にとって裕一と鉄男は自然体でいられる相手なのだと分かる。


 だからこそ3人は、言いたいことを言い合えるのだ。「僕を見つけられないなんて世の中間違ってんだよ」と強気な久志に、鉄男は「じ~っとしてたって何も変わんねえぞ」と突っ込み、裕一はオーディションの話を持ちかける。


 西洋音楽を歌いたい久志は流行歌を歌うことに消極的。だが、裕一と鉄男とともに“流し”として「船頭可愛いや」を歌ったとき、彼の歌声はその場にいる人の心を掴む。拍手喝采を浴び、ある親子からは「何でだかグッと来た。おかげで明日も頑張れるよ」と声をかけられた久志は感慨深い表情をしていた。裕一が話していた「大衆の心を掴む瞬間」。久志はそれを味わったのだろう。親子から受け取った一銭玉を大事そうに握りしめる姿は心に残る。


 久志はオーディションを受ける決心をする。「オーディション受けてあげるよ」「コロンブス(レコード)に僕の力を貸そう」と相変わらず素直ではないが、ここから彼がどのようにスターとして輝いていけるのか、期待が高まる。


(片山香帆)