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オンラインライブは“有料配信”がスタンダードな時代へーーABEMA新機能「PayPerView」実装に思うこと

2020年06月21日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

「PayPerView」

 新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、ライブハウスやホールなどにおける、観客を入れての公演が難しくなっている現在。ライブのほとんどは新しい生活様式にあわせてオンラインへ移行しつつある。


(参考:テクノロジーはエンタメを救う鍵となるか? 新型コロナ危機で注目集まる「有料配信ライブ」の可能性


 リアルでの自粛が続く中、政府は無観客ライブを推奨しており、一部地域ではライブ実施事業者への補助金が開始されるなど、オンラインライブの流れが加速。各社が新たな配信サービスを立ち上げたり、既存のサービスに新機能を追加するなどし、この危機をなんとか乗り越えようとしている。


 2月末よりライブの開催自粛が発表され続けて以降、各アーティストが中止・自粛した公演を無料配信し、自宅にいるファンたちに勇気を与え続けてきたが、国内のライブ・エンターテインメント業界は年間市場規模の8割弱、約6900億円を失っていることがぴあ総研の調査でもわかっているように(参考:https://www.asahi.com/articles/ASN6466JKN62PTFC012.html)、全てが無料配信のままでは、アーティストやそれに関わるスタッフの生活を含め、業界全体が持続不可能な状態になってしまう。


 そんななか、配信サービスとしてはTwitchが(権利的な部分の懸念はあるものの)投げ銭形式での配信を実施したり、ZAIKOが有料配信チケットを投げ銭システム付きで販売したりと、オンラインライブの“価値”を再考すべく、新たなサービス・機能が活用されはじめた。直近の例でいえば、テレビ&ビデオエンターテインメントのABEMAが、有料オンラインライブ「PayPerView(ペイパービュー)」機能をリリースしたことも記憶に新しい。


 「PayPerView」について改めて解説すると、ABEMAで配信される有料オンラインライブを1コンテンツごとに購入し、アーティストのライブ、イベント、スポーツ興行、ファッションショー、舞台などのコンテンツを視聴できる機能。同機能はサイバーエージェントグループの株式会社CyberHuman Productionsと連携し、現在国内で3台しかない、リアルタイムに人物と3DCG空間を合成して撮影ができる「バーチャル撮影システム」を活用することで、多様なCGや3D空間、ARを用いたライブ会場とはまた違った臨場感のある視聴体験ができる。


 そのほか、ライブ中に出演者へスタンプを送ることができる「応援機能」をはじめ、「コメント機能」やキャンペーンを通じた演者との双方向なコミュニケーションの実現、オンラインライブにあわせたグッズの販売、さまざまなアングルからオンラインライブを視聴できる「マルチアングルライブ」機能(今夏リリース予定)、ライブ中に視聴者が投票という形でリアルタイムに参加ができる投票機能(今夏リリース予定)など、”リアルの代替品”ではない、オンラインならではの体験を提供することで、有料配信としての価値を見出そうとしている。


 ちなみに、現在決定している対象ライブは、無観客配信ライブ『サザンオールスターズ 特別ライブ 2020 「Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~」』、大規模オンライン音楽フェス『LIVE HUMAN 2020』、ライブ・エンターテインメント 有料配信ライブ『LDH「LIVE×ONLINE」』、フル3DCGによるオンラインライブツアー『Da-iCE×ABEMA ONLINE LIVE TOUR 2020 -THE Da-iCE-』、オンライン無観客ライブ『ABEMA presents 鈴木このみ 6th Live Tour ~Unveil ”ZERO”~』と、大物アーティストの単独ライブや人気グループのツアー、豪華ラインナップによるフェスなど多岐にわたっている。


 これらの配信はスマホアプリ、タブレットアプリ、PC、テレビで視聴可能で、ABEMAのアプリ内、もしくはABEMA公式WEBサイトにて、ABEMAコインを購入し、視聴権を購入すれば自動で視聴予約がされる。また、番組をみながらオンタイムでコメントをすることができる「コメント機能」を使い、他のユーザーのコメントを見ながら視聴することで、大勢でリビングのテレビを見ているような気分になったり、ライブのコール&レスポンスを繰り広げることも可能だ。そのうえ、視聴開始が遅れた場合でも、「追っかけ再生」機能を利用して最初から視聴することが可能なほか、配信開始後もコンテンツの購入ができ、配信終了後も一定期間「タイムシフト」機能で繰り返し視聴することができる。


 そして、ABEMAで「PayPerView」を使って配信するのは、何もライブだけではない。本朗読劇『Online♥Reading「百合と薔薇」Vol.01』や、フルバーチャルファッションショー&ライブイベント『Tokyo Virtual Runway Live by GirlsAward』など、他ジャンルのエンタテインメントにも幅広く対応していることにも注目だ。


 音楽のみならずエンタテインメントという大きな枠組みにおいて、こういったサービスがしっかりと結果を残すことで、今回のコロナ禍を乗り越えた先にある“ニューノーマル”がただの”元通り”ではなく、数歩先に歩みを進めた状態になっていることを願いたい。


(向原康太)