1993年4月から翌年3月にかけて放映された『機動戦士Vガンダム』。今なおファンの多いこの作品だが、僕も当然好きである。
ガンダム系はこれまでとあんまりデザイン変わった感じはしないけど、とにかく敵のメカ群が目を引く。大型の戦斗バイクやらタイヤ付きMSやら、果てはバイク戦艦。これまでのシリーズでは決して見られなかったデザインのマシンがこれでもかと押し寄せてくる。
さらには敵MSも個性的だ。ヘリのローターが付いていたり、ビームストリングスという見たことも聞いたこともない武器を装備した奴がいたり、目が「グワッ!」と開いたり。
まさしく奇天烈。ザンスカールのMSは素晴らしい……しかし、あんまり評価の声が聞かれないのも事実である。今回はなぜザンスカール系MSはあんまり表舞台に出てこないのか。その理由を考えてみたい。(文:松本ミゾレ)
「遮光器土偶みたいな目が受け付けんわ」という声
5ちゃんねるに「どうしてザンスカール系MSのスレはないの?」というスレッドがある。6年前に登場したスレだが、現在まで書き込みが続いている。
スレ主は「みんな個性的で面白いのに」と評価に不満な様子。きっと今も不安なことだろう。現在も、ザンスカール系MSはイマイチな扱いを受けているし。スレッドにはいくつかその理由についての考察が見受けられる。結構的を得ている声もあった。
「線がすくなすぎる&タイムボカンのメカに見える。ただ作画良ければ印象違ったような気もする」
「遮光器土偶みたいな目が受け付けんわ」
「ゾロもローターだけ手裏剣にしたり高速で地中に隠れて不意を狙ったり(恐らくはスーパーナパーム以来の)爆撃用オプションがあったり。マチスさんの戦法でV2すら危機に陥れたりと脚本レベルでは十分に面白かったんだよな。作画だなぁ……」
「もっとバンク減らして生き生きと動いてほしかった」
ざっとこんな具合。そもそもデザインラインが受け付けないという意見と、作画のせいだという意見が目立った。
僕としては、あの遮光器土偶みたいな顔こそが強く惹かれてしまうところだし、それがいきなりここぞという時にはがっつり開いて真っ赤な猫目になるってギャップも好きだ。
だけどまあ、バンクが多いとか作画がちょっと不満だと言われてしまうと「それはそうなんですよね」ってなる。
人気がないのはザンスカール系の後続MSがないから?
ザンスカールのMSって個人的には大好きで、それこそ僕が初めて購入したガンプラって、1/144のアビゴルだった。ああいう得体のしれないデザインのMSって、僕としてはザクやドムに見慣れてた分衝撃的だった。
まあザク、ドムの場合はガシャポンの塩ビ人形を山ほど持ってたから、もっと新鮮なデザインに飢えてたってのも要因として考えられるけど。でもね、アビゴルはかっこいいので皆さんにもお勧めしますよ。
そもそも僕は84年生まれで93年放映開始の『Vガン』自体は直撃世代。だからザンスカールのMSにも愛着があって当然かもしれないんだけども、それを差し引いても決してあのMS群って変なデザインばかりではない。ゲンガオゾにゾロアットにメッメドーザ。どれもこれもまるで怪獣みたいな姿をしていて、痺れたものである。
ただ、やっぱり人気が当時から今に至るまで今一つなのは、仕方ないとも思う。まずガンプラの出来が悪かった。
前述のように僕が初めて購入したガンプラはアビゴルだけど、ここには理由がある。ホントはコンティオが好きだったんだけど、あの当時リリースされてた『Vガン』のガンプラって、どうしたことか内部フレームが共通だったのだ。だから体格が立派な奴もそうでない奴も、組んでみると大体同じスタイルになる。
コンティオって割と立派な体格なのに、この内部フレームの共有のせいでひょろっとした体型になっていた。しかもショットクローの肉抜きも目立った。ガンプラの出来の悪さも不人気に影響したように感じる。僕はそのせいで元々大型MSで、最初からフレームが共有外であるアビゴルを選んだもん……。
それからやっぱり、のちのシリーズにザンスカール系列のMSが今のところ登場していない点も不遇に拍車をかけてると感じる。宇宙世紀もかなり後半で、これ以降は舞台設定が異なる世界でのガンダムが放映されたため、これで割を食ってるのではないだろうか。
たとえば『Vガン』の続編がもう2つ3つあれば、おのずとザンスカールの系譜みたいな機体も派生していたかもしれないし。ゲームだけでの再登場って、やっぱり爆発的な人気は出ないよね。
好きな人は好きで、嫌いな人ってそういないけどマイナーなMS。それがザンスカール軍のMSなんじゃないだろうか。