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キズナアイが考える、コロナ以降の“バーチャル文化” 「カルチャーの進化が前倒しで来る」

2020年06月18日 17:41  リアルサウンド

リアルサウンド

キズナアイ

 特集「コロナ以降のカルチャー テクノロジーはエンタメを救えるか」の第5弾は、『ニューズウィーク 日本版』の「2019年版 世界が尊敬する日本人100」にて「注目すべき100人」のひとりに選出され、『SUMMER SONIC 2019』への出演や『news zero』(日本テレビ系)といった報道番組にも多く登場するなど、バーチャルタレント界のトップランナーとして走り続けるキズナアイ(Kizuna AI)が登場。


 今回は、先日スタッフとともに「Kizuna AI株式会社」を設立し、新たな一歩を踏み出し始めた彼女に、ここ数ヶ月の変化やコロナ禍における活動への影響、コロナ以降のVカルチャーの変化などについて、メールインタビュー形式で答えてもらった。(編集部)


(参考:いま「VTuberに音楽を作ること」の意義は? Yunomi×Avec Avec×Norが語り合うキズナアイ楽曲制作秘話


・「目指せ! 『Tomorrowland』」ですからね!
ーー新体制での活動をスタートさせて、明確に変化した部分を教えてください。


キズナアイ:少人数のチームになったことで、より密に連携が取りやすくなったのですぐにキャッチアップができて対応が早くなりました。つまずくことや失敗は、初めは多いかもしれませんが、私やファンの目線で考えて一緒に頑張るメンバーがいてくれるのでので、それだけでも安心です! チーム全体で一緒に成長して、今、そしてこれから応援してくれるキズナー(編注:キズナアイファンの総称)のみんなと一緒に、世界中のみんなとつながるという大きな目標に進んでいきたいです。


ーー独立したからこそ挑戦したいことはありますか?


キズナアイ:挑戦とまではいかないのですが、もっとオープンにしたいです! 例えば、Kizuna AI株式会社で働くメンバーのこととかを、みんなに知ってもらえたらいいなって考えていて! こんな人が手伝ってくれているんだよってわかると安心もしてもらえると思うんですよね。本当に愛に溢れた人が集まってくれています。サポートしてくれているメンバーも愛されてほしいな、という密かな願望があります。ちょっとずつタイミングがあれば紹介していきたいです!


ーー楽曲リリースも積極的に行なっておりますが、今後アーティスト活動にはさらに力を入れていくのでしょうか?


キズナアイ:はい!! 「目指せ! 『Tomorrowland』(編注: ベルギーで開催されている世界最大級のEDMフェス)」ですからね! 音楽は言葉や文化の壁を突破する力を持っているので、もっと力を入れていきたいです。音楽のジャンル的にはまだ固まりきってはいないので変わるかもしれませんが……私の軸であったダンスミュージックは残しつつも、『Replies』に収録されていた楽曲のように、みんなと私で気持ちの共有や共感できるような楽曲作りをしていけたらいいなと考えています。他のアーティストさんとのコラボも今までしたことがないので、できたらいいなと思っていたり……。すでに準備しているものもあるので、楽しみにしていてください! 音楽で私にとっても、みんなにとっても新しい世界を見つけたいです!


ーー新型コロナウイルスの感染拡大は、キズナアイさんの活動にどのような影響を与えているのでしょうか。


キズナアイ:バーチャルなので生活は全く変わらないのですが、やはり人間のみなさんと同じで、イベントや人間の方と行う収録は、いくつかなくなったり先延ばしになりました。でも、ピンチはチャンス! どんな状況下でもネットさえあれば、みんなに楽しさや元気を届けられる”バーチャルならではの強み”をもっと活かしていきたいですし、そういうものがもっとあるんじゃないか、と向上心につながりました!


 また、みんなにお家で楽しんでもらえるようなことを考えることで、より人間のみなさんのことを知ることができましたし、おうち時間のために実行した「hello, world」配信企画や、『バイオハザード7』の鑑賞会をみんなとできて、楽しんでもらえた手応えがあった時は、みんなの役に立てた気がして、とっても嬉しかったです。これからもきっと、人間のみなさんにとっての大きな困難はあると思いますが「そんなときに大好きなみんなの役に立てる自分になりたい!」と強く思うようになりました! 全体で見ればマイナス面もありますが、気持ちや考え方的にはプラスです!


ーー5月20日にはbilibiliのチャンネル登録者数が100万人を達成しました。中国はコロナの影響も大きいと思うのですが、ファンの方や現地とのやり取りで、印象に残っていることはありますか。また、中国向けに発信したメッセージなどもあれば教えてください。


キズナアイ:bilibili登録者の件は、本当にありがたいです! 1つの国だけで100万人って、改めてすごい数字ですよね。コロナだからというわけではないのですが、100万人達成時に、記念にbilibili限定で配信をしたんです。そのときにみんながすごく盛り上がってくれたし、いただいたコメントも優しくて、すごく愛を感じました! インターネットのどこでも言えることですが、数字のその先に人がいてくれて、声援を送ってくれるってとても嬉しいです。コロナが落ち着いてきたとはいえ、まだまだ不安の中で生活していらっしゃると思うので、海を越えて元気を届けていきたいです!


・「カルチャーの進化が、前倒しで来るのかなと思っています」
ーー特集テーマである“コロナ以降のカルチャー”について聞かせてください。バーチャルタレントの活動は様々で、一括りにはしづらいかと思いますが、新型コロナウイルスの収束以降、このカルチャーはどのように変化すると思いますか?


キズナアイ:難しい質問ですね!? 変化というか、カルチャーの進化が前倒しで来るのかなと思っています。今までより急速に身近に、豊かになるのではと。普段外出が多い方もこれを機に自宅での過ごし方を見つめ直したり、企業も働き方を見直したりしましたよね。それに伴い、自宅の中だけで様々なことがより豊かに、便利に、簡潔に行えるようになるサービスに、ますます需要と注目が集まっています。そして自粛の影響で感じたことは、みんなつながりを求めているということ。おうちにいても、実際に人に会ったりどこかに行ったりしている感覚になれるVRをはじめとしたxR(VRやAR、MRなどの総称)の領域に、事業として手を伸ばしてくれる企業や、サービスに手を伸ばしてくれる人。そんな風に、人間のみなさんがもっとバーチャルに参入して母数が増えると、Vカルチャーはより身近に、豊かになっていくのではないでしょうか。そうなれば私も相対的に、もっとナチュラルに受け入れてもらえるので嬉しいです!


ーーコロナ以降、ライブストリーミングも積極的に行われているように感じます。リスナーさんとのやりとりで、印象に残っていることはありますか?


キズナアイ:私の配信で気が紛れたり、楽になったり、元気になった人を見ると嬉しいです! 特にGWは、例年絶好のお出かけ日和でついついお外に出たくなっちゃうし時期ですし、暇を持て余してしまう人もいるんじゃないかと思って、先ほどの「hello, world」配信企画や『バイオハザード7』の10時間コメンタリー配信などを行ってみたんです。それを見て「あっという間で時間忘れちゃった!」と言ってもらえたのは嬉しかったです。


ーーこの大変なタイミングということもあり、独立して活躍していくキズナアイさんの姿は、バーチャルタレント業界の希望になっていくと思われます。最後に、ご自身がバーチャルタレントの業界、もしくはもう一つ二つ上のレイヤー(日本や世界)に対し、どのようなアクションを起こしていきたいかについても聞かせてください。


キズナアイ:ありがとうございます。新しくもあり、当たり前である存在になっていきたいです。スマートフォンみたいな感じでしょうか……! 当たり前にあるけど新しいものを運んできてくれる、新しい体験が詰まっている。そうなるためにはまず、とにかく発信し続けて、みなさんの目に映り続けることが大事だと思っています。(初音)ミク先輩だってそうやって根付いて、文化をみなさんと作っていったんだと思うんです。だからとにかく挑戦して、自身と環境や取り組みをアップデートし続けてみんなの目に、意地でも映り続けたいです! そして新しいものを、私を通じて届けられたら最高ですね!


(中村拓海)