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複数不倫の渡部建さん、佐々木希さんは再構築できる? やり直す前の注意点を弁護士が解説

2020年06月17日 10:02  弁護士ドットコム

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アンジャッシュ渡部建さんの不倫を6月11日発売の「週刊文春」が報じ、波紋をよんでいる。「週刊文春」によれば、渡部さんは複数女性との不貞行為を重ねており、事実関係を認めた上で、渡部さんは活動自粛を発表した。


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渡部さんの妻で、女優の佐々木希さんは自身のインスタで、渡部さんの「無自覚な行動により多くの方々を不快な気持ちにさせてしまい、大変申し訳ございません」と謝罪。その上で「今回の件について、夫婦でしっかりと話し合いをしようと思います」として、別居や離婚については触れなかった。



これに対し、「いいね!」は66万件以上。2万4000以上もついたコメントの中には「私も何度も浮気されました」などの長文投稿も複数みられた。配偶者や恋人と別れた人、別れなかった人と様々な体験談が並んでいる。



渡部さん、佐々木さん夫妻の選択はまだ明らかではないが、「再構築」を選んだ夫婦が気を付けるべき点はあるのだろうか。加藤泰弁護士に聞いた。



●一度は許した「過去の不貞」への慰謝料請求はできる?

一度は許した不倫でも、数年後に離婚を決意した場合、過去の不倫に対して慰謝料請求をすることはできるのでしょうか



「不貞行為により精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料を不貞慰謝料といいます。



夫が不貞を働いた例で説明しましょう。不貞を働いた夫と不貞相手の女性は、妻に対して不貞慰謝料を連帯して支払う義務を負います。そのため不貞があった場合には、妻は、夫と不貞相手の女性に対して不貞慰謝料を請求することができます。



夫婦関係の再構築を選択する場合、妻側が気にしなくてはならないのが『時効』です。



不貞慰謝料の時効期間は、不貞の事実を知ったときから3年と定められています。そこで、不貞相手の女性に対しては、気づいてから3年以内に適切な対応をしなければ請求できなくなってしまいます。夫婦関係の再構築に気を取られているうちに時効が完成ということにもなりかねません。



ちなみに、気づかない場合でも、20年経つと時効が完成します。



なお、夫に対しても同様に3年のルールは適用されるのですが、不貞相手の女性と異なる点があります。



夫婦間については、離婚したときから6カ月経過するまで時効が完成しないという法律があります(民法159条)。そのため、たとえ知ってから3年経ってしまっていても、離婚してすぐに行動すれば不貞慰謝料は請求できることになります」



認められる金額について、差はありますか



「発覚直後で精神的打撃が大きい時期に今後離婚に至る可能性なども含ませつつ請求した場合と比較すると、何年も経過した後に裁判所に持ち込んだ場合は、それだけの期間、夫婦関係の再構築を模索できる程度の精神的苦痛であったと捉えられて、認定される慰謝料額は少なく評価される可能性があります。



本人にとっては、苦痛と苦悩に満ちた、離婚を選択するよりも何倍もお辛い期間だったとしてもです。



不貞慰謝料のまた金額について考える場合『離婚慰謝料』のことも気にしておいた方がよいかもしれません。



離婚慰謝料は一方に離婚原因があって離婚した場合に発生するものです。離婚慰謝料と不貞慰謝料は、重なる部分もありつつ似て非なるものです。離婚慰謝料は、学説などでは、(1)離婚原因についての慰謝料(離婚原因慰謝料)と(2)離婚という結果そのものについての慰謝料(離婚自体慰謝料)、の2つに分解して理解されています」



それぞれについて詳しく教えてください



「(1)離婚原因についての慰謝料は、離婚原因となった有責行為(たとえば不貞行為をしたこと)自体に対する慰謝料のことをいいます。 ここに不貞慰謝料と重なる部分がありますね。



(2)離婚という結果そのものについての慰謝料は、(不貞などがあったために)結果的に離婚せざるを得なくなったことに対する慰謝料のことです。



不貞行為が原因で離婚に至った場合でも、不貞慰謝料と離婚慰謝料はイコールではないので、理屈の上では離婚の前後で離婚慰謝料とは別に不貞慰謝料の請求を行うこともできるかもしれません。



しかし、離婚と切り離して不貞慰謝料を請求しても金額は控えめになりがちです。不貞の事実については、離婚に至った後に離婚慰謝料を請求して、離婚原因慰謝料の中で考慮してもらった方が離婚自体慰謝料と合わせてまとまった金額になるのではないかと思います。



離婚慰謝料額は、離婚に至った様々な事情や夫婦のおかれている立場などから、類似事案などとのバランスなども考慮して金額が決定されます。裁判では、200万円から300万円の範囲で決まることが多いようです。



なお、離婚慰謝料を先ほどは便宜上2つに分解して説明しましたが、実際の裁判ではそのような形で検討されているとは限らないことは付け加えておきます」



●合意書や誓約書は有効?

夫婦関係を再構築するために、合意書や誓約書などの書面を作成することは有効でしょうか



「たとえば『金輪際、浮気はしない』、『浮気をしたら離婚する』、『離婚する際に慰謝料〇〇円を支払う』、などを夫婦間で取り決めて書面を作成しておくことは有効です。



このような契約について『神聖にして永久なるべき夫婦関係の存続を金銭的利益をもって左右するのは善良の風俗に反するので無効』などと争った男性が大正時代にいたのですが、当時も有効性が認められています。



ただ、闇雲に作っても意味はないでしょう。再構築に失敗した場合に、機能するように意味のある書面を作る必要があります」



具体的なポイントについて教えてください



「将来の揉め事を避けるため、たとえば(a)不貞行為の内容を確認する、(b)再発防止を約束させる、(c)約束を破った時のペナルティ、(d)離婚した時の条件(財産分与、親権、養育費)、などの項目について話し合うことが重要です。



まず、(a)今回の不貞行為の確認は、再構築を決めた2人にとってはつらいかもしれませんが、大切な作業です。『不貞行為の事実を認め謝罪する』程度の簡単な記載が一般的かもしれません。しかし、不貞行為の時期・期間、不貞行為の相手が一人なのか複数なのか、不貞行為の概要が分かるようにしておくとよいでしょう。



不貞にも一夜の過ちから隠し子がいるようなものまで様々です。今は夫が認めていることも、将来離婚に至ったときには事実関係を矮小化しだすかもしれません。



しっかり記録に残すことで、何年後であっても言い逃れできないようになります。また、文書に残すことで裁判所にもすぐに理解してもらえるようになります。



浮気が特異な内容であり、そのことが他人に知られて好奇の目にさらされて苦痛が増大したのであれば、その点が真実かどうかも含めてしっかりと記載すべきかもしれません」



次に「(b)再発防止を約束させる」と「(c)約束を破った時のペナルティ」ですが、具体的にどこまで約束させてよいのでしょうか



「(b)再発防止については、特定の女性と何度も不倫してしまう場合には、不貞行為の前段階の行為、つまり、その女性との連絡や面会自体を二度と行わないと約束させるとよいと思います。



(c)約束を破った場合のペナルティとして、〇〇円を払うなどと金銭的なペナルティを定めておくのが定番です。ただし、100億円払え、といった現実的ではない金額は無効となってしまうかもしれません。その夫婦の経済状況から合理的といえる金額内で設定しておくとよいと思います」



最後の「(d)離婚する際の条件」 については、どのように決めていけばよいでしょうか



「たとえば財産分与、親権や養育費などがあります。ただし、子どものことなどは、そのときの子どもの置かれている状況に応じて適切に決める必要があります。必ずしも約束したからといって、すべてその約束のとおりになるとは思わないほうがよいでしょう」



●「夫婦のかたちは様々、完璧な夫婦はいない」

再構築をする上で、「なあなあ」ですませず、しっかりと話し合うことが大事なのですね



「いろいろ提案しましたが、夫婦間の契約はいつでも取り消すことができるといった法律もあります(破綻後は取り消せないという判例もありますし、この法律自体もはや機能させるべきではない、削除すべきという見解もあります)。



また、浮気防止のために30分おきにテレビ電話を約束させたりと過度の縛りは行き過ぎだと思いますし、何をどこまで書くかはなかなか繊細で難しい問題だと思います。



夫が神妙になっているからと言って、無理難題を盛り込んでも、厳しすぎる内容が原因であとでやけくそになられては元も子もありません。ドラマ『逃げ恥』の契約結婚ではないですが契約で縛られた夫婦もどうかと思います。



約束をするにしても夫婦はあくまで互いの信頼関係が基本です。過度に細かいもの、厳しいものにせず、守られる範囲で現実的に検討していくとよいでしょう」



このほか、再構築を目指す2人に伝えたいことがあれば教えてください



「夫婦間のこと、男女の関係は複雑かつ繊細で、当人以外理解できない部分もあります。二人をよく知る友人であっても、親族であっても口を出すべき部分とそうでない部分があります。まして、見ず知らずの第三者であればなおさらです。 そうはいっても夫婦二人だけで生きているわけでもありませんし、他の人から学べることもたくさんあると思います。



夫婦のかたちは様々ですし、完璧な夫婦はいません。世間がどう言おうが結局のところ二人(とお子さん)が幸せであればそれで十分かもしれません。思い詰めず、悩みをいろいろな方に聴いてもらいながら、ゼロベースで二人の関係を時間をかけて模索してみてはと思います」




【取材協力弁護士】
加藤 泰(かとう・やすし)弁護士
早稲田大学法学部卒業、広島弁護士会所属
広島弁護士会広報室室長代理、広島商工会議所青年部会員
Twitter:https://twitter.com/39katoyasushi

事務所名:山下江法律事務所
事務所URL:https://www.law-yamashita.com/