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BTS、『BANG BANG CON The Live』から伝わるARMYへのメッセージ グループのおもてなしと前向きさ感じる公演に

2020年06月16日 18:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『BANG BANG CON The Live』(C)Big Hit Entertainment

 6月13日のデビュー記念日翌日、6月14日にBTS初のオンライン配信コンサート『BANG BANG CON The Live』が開催された。Android対応のみだったが、実際のペンライトを連動できるシステムもあった。画面上にもペンライトが配置され、押すと点滅してハートを送るシステムや、コメントがリアルタイムで流れるのはNAVERのV LIVEと同様だ。また、日本語・中国語・英語での同時通訳字幕も不完全ではあるが実装されていた。


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 ポップアップストア「HOUSE OF BTS」を模したようなパステルカラーのセットから始まった1曲目は「DOPE」。原曲の導入部分である“いらっしゃい、防弾少年団は初めてだよね?”をもじった“いらっしゃい、BANG BANG CONは初めてだよね?”からライブの幕は上がった。


 BTSの楽曲の中でもアガるナンバーのひとつでもある「DOPE」の後は、同じく楽しくてお祭り感のある「Boyz with Fun(フンタン少年団)」。盛り上がれる2曲に続いては、メンバーがそれぞれFace Timeでセルフカメラを撮りながら歌う、軽やかなソフトバラード曲「いいね!」。今回はほぼ固定カメラではあったが、6種のマルチビューで視点の切り替えが可能だった。続く「Just One Day」は椅子に座ったままの振り付けと合わせて緩やかで気取らない雰囲気が、前日までのアニバーサリーイベント『BTS FESTA』ともリンクするようで、曲の終わりはRMの「Happy Birthday BTS」という言葉と共に7周年を祝った。


 パフォーマンスの間には、リビングのようなセットで「BTSと楽しむホームパーティー」がコンセプトだった『FESTA』の流れに繋がるように、ライブ中ではあるがリラックスした姿を見せていた。


 続く初お披露目のユニット別ステージでは、まずモノトーンのステージでJIN・J-HOPE・JUNGKOOKの3人による『MAP OF THE SOUL :PERSONA』収録の「Jamais Vu」を叙情的かつエモーショナルに聴かせた。そのままステージが回転して現れたのは、オールドスクール風スリーピーススーツに身を包んだSUGAとRM。 70年代のディスコティックなモザイクライトウォールをバックに、ダンスも含めどこかユーモラスな雰囲気で「Respect」をパフォーマンスした。続いては95年生まれの同級生コンビ、VとJIMINによる「Friends」。ソウルのバス停を模したセットで、さらに2人が一緒に通っていた、今はない高校の制服を再現し、歌詞にある“君の小指”や“餃子事件”の再現を織り交ぜたパフォーマンスでユニットコーナーラストを締めた。


 今年全世界で40回以上の新しいコンサートツアーを行う予定だったBTSだが、先の見通しが難しい現状も踏まえて、先のツアーで公開予定だったラップラインとボーカルラインのユニット曲「UGH!」「00:00(Zero O’Clock)」は少しだけお披露目するに留めて、将来的にライブで披露する日への希望を残した。『MAP OF THE SOUL :7』のプレリリースとして先行公開された重くエモーショナルな「BLACK SWAN」のパフォーマンスのあとは、雰囲気をガラリと変えて「Boy With Luv」「Go Go」「Anpanman」と明るくポジティブな曲でクライマックスをかけぬけた。最後の曲は「Spring Day(春の日)」。BTSの楽曲の中で最もロングランを記録しており、ファン以外の大衆層にとって最も馴染みがあるであろうこの曲は、会えない日々を冬に例え、再開への渇望を春の日の訪れになぞらえている。自分たちにとってまたファンと直接会える日が春の日なのだというメッセージを読み取れるような選曲は、今回のコンサートを締めくくるのには相応しかった。


 前回『BANG BANG CON』のタイトルで過去のライブを無料配信した時の全世界での視聴者合計数は220万人を超えていたが、今回の有料生配信版も全世界で75万人が同時に視聴した。オンラインならではのエンターテインメント感や、画面越しや音声でも直接的にファンと交流するような演出はなかったが、画面上でのコメント投稿やリアルタイムで表される数字や地図上の点滅で視聴者の動向が目視できるシステムによる間接的なコミュニケーションは、ウェブ上で最もファンドムを拡大してきたグループとしては「らしい」といえるかもしれない。温かく親しみのある選曲や、普段着のような飾らない雰囲気の今回のライブは、7周年をファンと祝う『FESTA』イベントの延長上と考えれば、BTSなりのおもてなしに溢れるものだったと言えるだろう。J-HOPEがV LIVE配信で見せていたメンバー別の手作りブレスレットを渡して身につける場面もあり、彼らの配信を毎日逐一チェックしているであろう“ARMY”であれば、思わず嬉しくなるコンテンツ同士の繋がりもあった。パフォーマンスの合間にはメンバーによるASMRや、BTS自身が広告を担当している商品のCFなども流された。ファンにとっては広告すらもコンテンツになりうるということだろう。


 7月には4枚目の日本オリジナルアルバムのリリースと、それに伴うオンラインイベントがすでに予告されているが、まだまだ世界的に新型ウイルス流行の先行きは不透明だ。特に、BTSにとっては今回の流行中心地となってしまっている欧米圏での活動に力を入れ始めていた時期だけに、兵役の問題も考慮すれば明るい材料ばかりというわけではない。それでも新たなコンテンツのあり方のひとつを提示していくことで、“ニューノーマル(新しい日常)”に寄り添った活動を出来る限りポジティブなものへと導こうとする前向きさを感じた公演だった。(DJ泡沫)