6月4日に行われた、ポルシェGTチームのIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でのワークス活動終了という発表は今シーズン、フォード陣営を失った北米スポーツカーシリーズに衝撃を与えた。また、WEC世界耐久選手権のGTEクラスもフォードに加えてBMWが姿を消しているだけなく、新しいプロトタイプ・プラットフォームの誕生によって同クラスの存続を危惧する声が挙がっており他人事とは言えない。
そうした状況のなか、Sportscar365の編集長ジョン・ダギーズはWECのLM-GTE ProとGTE-Am、IMSAのGTLMクラスでFIA-GT3カーが中心的存在になるべきだと主張している。
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GTクラスを統合すると、どういったものになるのだろうか?
コンセプトは非常にシンプルだ。既存のFIA-GT3プラットフォームを活用してPro-AM、GTデイトナ(IMSA GTD)クラスとし、WEC世界耐久選手権とELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズにおけるGTE-AMクラスの代替とするのだ。
それらよりもわずかにパワーが与えられたGT3マシンは、バランス・オブ・パフォーマンス(BoP)で性能が調整され、おそらくはコンフィデンシャルタイヤを履くことになる。これらはGT3“プラス”カテゴリーとしてIMSAウェザーテックチャンピオンシップのGTLMクラスと、WECのGTE-Proクラスに取って代わるものになるだろう。
この案はGT3マニュファクチャラーにとって、オールプロのラインアップと、ファクトリーサポートを受けるカスタマーマシンの両方のエントリーを可能にする道を開くだけでなく、そうしたマニュファクチャラーがWECそのなかでももっとも重要なル・マン24時間への切符を手に入れることを可能にするのだ。
アウディ、ランボルギーニ、アキュラ、レクサス、マクラーレン、メルセデスAMG、ベントレーはそうしたOEMのなかでもGT3マシンのみを擁している一方、コルベットを除くすべてのGTEマニュファクチャラーはGT3スペックのマシンも製造している。
また、コルベットの状況だが、彼らはGT3カテゴリーのために新車を製造する必要はない。Sportscar365では2020年にデビューしたコルベットの新型GTE『C8.R』が簡単にGT3に変換できることを理解している。つまり、彼らは必要であれば仕様を変更するだけでGT3カーを用意することができるのだ。
コルベットとBMWの将来を想像してみてほしい。BMWの次世代レースカーであるM4 GT3が2022年に登場するまでに、M6 GT3がIMSAのオールプロGT3クラスで、ファクトリーの支援を受けたアキュラ、レクサス、ランボルギーニといったライバルメーカーたちのクルマと対抗するとしたら?
それは間違いなく、今日このクラスで見られる戦いよりもはるかに優れたショーを提供することができるだろう。また、プロドライバーとペアを組む真のジェントルマンドライバーたちにとっては現在のGTDカテゴリーのスペースを作ることになり、Pro-AmクラスをよりPro-Amレース足らしめることにも役立つだろう。
■ACOの承認が世界的成功に向けた鍵に
それでもまだ数多くの問題が残っている。はっきり言えば、ル・マン24時間を主催するACOフランス西部自動車クラブがGTEと類似する規則を採用するかどうかだ。
だが、もし彼らが承認すればIMSAのGTLMと、WECのLM-GTEは2022年まで同一のクラス構成で運営できる可能性があるばかりか、マニュファクチャラーの関与をさらに鼓舞することになるだろうし、新型コロナウイルスの流行前のレベルに支出を減らすことさえできるだろう。
GT3マシンはACOが運営するチャンピオンシップにおいて馴染みのないものではない。このカテゴリーはAsLMSアジアン・ル・マン・シリーズ、ミシュラン・ル・マン・カップに採用されており、最近まではELMSでも受け入れられていた。
重要なことは、スポーツカーレースの将来を守るために、今、変化が必要とされているということだ。
前例のない時代には、前例のない手段を必要としており、カテゴリーの統一はこのスポーツにおいて増大するジレンマに対し、唯一すぐに出せる答えであると思われる。