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【国内トップドライバーオフインタビュー松田次生】おうち時間はやはり“あの趣味”に没頭。スーパーGT参戦20周年に懸ける思い

2020年06月15日 17:01  AUTOSPORT web

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ロニー・クインタレッリのアタックを見守る松田次生(MOTUL AUTECH GT-R)
新型コロナ禍での開催延期から、ようやくスーパーGTのレース再開がアナウンスされ、国内レースが7月18日からいよいよ動き始める。約2カ月間におよぶ“おうち時間”を国内のトップドライバーたちはどのように過ごしていたのか。普段の生活の様子やトレーニング事情、そして来月に控えた開幕戦に向けての意気込みについてリモート取材を行った。

 第7回は、スーパーGT GT500クラスで20回の最多優勝記録を持ち、ニッサン陣営のエースカーで6年目を迎える松田次生だ。

※ ※ ※

Q:3月後半から2カ月以上におよぶおうち時間をどのように過ごしていましたか?
松田次生(以下:松田):東京は(新型コロナウイルスの)感染者が多かったので、緊急事態宣言が出る前に実家がある三重県へ移動しました。トレーニングをしたり、クルマをいじったり、昔のF1総集編の映像を見たり、ディアゴスティーニのGT-Rを作ったりと好きなことをしながらゆっくり過ごせました。あと鉄道模型は久しぶりにじっくり遊びましたね(笑)。

Q:Q:休み中のトレーニングはどのように行っていましたか?
松田:家では体幹のトレーニングをメインにしていました。あとは40分~1時間弱くらいのランニングですね。トレーナーから「これとこれをやってください」というメニューが出ていたので、それ中心にしながら7月のレースに向けて徐々に調子を上げています。

Q:通常のシーズンとはトレーニングの仕方も変わったと思います。
松田:通常のスケジュールでは長時間のレースに耐えられるように、オフの間にハードなメニューをこなしていました。ただ、早く仕上げてしまいすぎるとシーズンを通しての体のピークが衰えてしまうので、今回は延期になったことで維持する方向のメニューに切り替わりましたね。これからの6~7月でまたハード系の内容にメニューを変えていく予定です。

Q:レースキャリアのなかで、ここまで長期間レーシングカーに乗らなかったことはありますか?
松田:人生で初めてですね。普段ならシーズンオフにもテストがあるので、一年を通していろいろなマシンに乗ることができていました。そういう意味では不安な部分もあります。ただ心配しすぎても逆にメンタルがやられてしまうので、なるべく心配しないようにはしています。その分、自粛が解除になったら自分のクルマで走りに行ったり、カートをしたりして慣らしていこうと思います。

Q:5月24日に行われた『e-ニュルブルクリンクレース』では優勝おめでとうございます。これまでグランツーリスモSPORTをプレイしたことはありましたか?
松田:ありがとうございます(笑)。昔、プレイステーション2まではプレイしていました。ですが、それ以降は機会を逃していました。今回、久しぶりにプレイしましたがすごく面白かったですね。以前に比べて圧倒的にリアルになっていました。それとステアリングやペダル類も以前はもっとゲーム色が強かった印象がありますが、いまはとても繊細になっていると感じました。

Q:グランツーリスモSPORT以外のシミュレーター経験もあるのでしょうか?
松田:シミュレーターショップなどに行ってプレイしたことはあります。rFactorなどは実車に近いと感じますね。でもグランツーリスモSPORTも実車に近づいていると思うのでいい勉強になると思います。

■2020年はJGTC(全日本GT選手権)/スーパーGT参戦20周年のメモリアルになる松田次生

Q:3月のスーパーGT岡山テストの感触はどうでしたか?
松田:感触は悪くないですが、まだ速くしていかないといけない部分もあるかなという感じです。ただ他車との差もないし、ライバルが本気を出しているのかどうかは正直分からないのでなんとも言えません。

Q:ライバルたちをどのように分析していますか?
松田:スープラはトータルで決まっている雰囲気を岡山以前のテストから感じています。NSXは思っていたよりもストレートが速く岡山でも好タイムを出していましたね。フロントエンジンに変更になったばかりなのに、思っていたよりも走れていることに少し驚いています。

Q:GT-Rのニューマシンは昨年と比較してどう変わりましたか?
松田:変更箇所はレギュレーションで変更になった部分くらいで、内装ではタッチパネルが増えました。あとは空力が減らされているので、空力面が昨年とは全然違うアプローチになっています。でも、共通パーツが増えたおかげか意外と変な違和感はなかったです。ボッシュに変わった共通ECU(電子制御装置)に関してはマッチングで少し苦労した部分もあったので、まだやらくてはいけない部分がありそうです。

Q:岡山テストはかなり気温が低い状況でしたが、タイヤの感触はどうでしたか?
松田:タイヤとセットアップの合わせ込みが難しかった部分はありました。ただ、寒い時期のミシュランタイヤはいつも苦労していて、これまでの合同テストでも良いタイムは出ていなかった。でも岡山では他車と同じくらいのタイムが出ていたので、そこはプラス要素だと感じています。

Q:今年はテストでのデータが少ないなかでタイヤをどうするか決めないといけないという面では大変そうですね。
松田:そうですね。ミシュランタイヤはフランスで作っているのでそもそも早めに決めなければいけない。ただ、普段だったらメーカーテストやタイヤテストがあったので、いろいろと試したことを元に決めることができました。でも今回はそれができない。開幕戦の気温も「何度くらいになると“思う”」という感じで想定しなければならないのでそこは不安要素です。

Q:2020年はどんなシーズンにしたいですか?
松田:シーズンが普段に比べてより短い期間で行われるので、素早くクルマを合わせて決めていかないと大きな差になると思います。とにかく気が抜けないシーズンになりそうですね。

Q:目指すは2015年ぶりのチャンピオン獲得でしょうか?
松田:そうですね。もちろんチャンピオンを獲りたいです。僕自身、今年がJGTC(全日本GT選手権)/スーパーGT参戦20周年なので、その20周年をなんとかチャンピオンで飾りたい。あとは最多優勝記録を21勝に上げられるよう、早めに1勝したいです。

Q:松田選手の活躍をファンのみなさんも待っています。
松田:今のところ開幕4戦に関しては無観客での開催になりますが、僕たちはレースに出るからには良いレースを見せたいと思っています。いまは世の中が少し暗い状況になっているので、少しでも僕たちが良い走りをして、みなさんが楽しんでもらえるようなレースができれば良いなと思っています。

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 JGTC(全日本GT選手権)/スーパーGTで20勝という最多優勝記録を持つ松田次生。すぐ後ろには現役でトヨタ/GRのエースでもある立川祐路が迫って来ており、なんとしても今年は記録を伸ばしておきたいところだ。
 チームメイトには4度のタイトル獲得経験者でもあるロニー・クインタレッリがおり、コンビも6年目を迎えるとあって、お互いの信頼関係は高い。今年はGT-R、そしてニスモが得意とする富士が4戦開催されるだけに松田次生にとっても大きなチャンスになる。果たして20周年という節目の年にチャンピオンという最高のプレゼントを手にすることができるのだろうか。