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すとぷり、6人の“声”の個性が生み出す絶妙な一体感 ソロ曲と「マブシガリヤ」から解説

2020年06月14日 11:51  リアルサウンド

リアルサウンド

すとぷり「マブシガリヤ」

 近年、動画配信サイトを中心にリアルな現場に至るまで大きな盛り上がりを見せている6人組エンタメユニット、すとぷり。


 2019年発売の1stフルアルバム『すとろべりーらぶっ!』はオリコン週間アルバムランキング1位を記録、同年のライブ総動員数は15万人を突破、今年発売した2ndフルアルバム『すとろべりーねくすとっ!』は現在22万枚以上を売り上げるなど、その勢いはとどまることを知らない。


 彼らは、従来の一般的な音楽アーティストとは違って、ネット上での活動によって着実に支持を得てきた。楽曲はもちろんのこと、ツイキャスでの生配信やYouTubeへの動画投稿といった、主に“声”を使った活動によって人気を獲得している。そのため彼らの楽曲や活動を見たとき一番に感じるのが、メンバー6人の際立つボーカルの個性だ。そこで注目したいのが、彼らの持つ“歌声”の魅力である。


(関連:すとぷり ななもり。×るぅとが語る、葛藤や悩みを越えて向かうネクストステージ「良い意味で変わり続ける、挑戦し続けたい」


 たとえば、赤色担当の莉犬は強さを感じれるときもあれば、同時に美しさも感じることができる中性的な声質を持っている。1月にソロ名義で公開された“歌ってみた”曲「コールボーイ」は、まさに莉犬の力強い一面が作品全体に表われている一曲だが、一方でオリジナル曲「タイムカプセル」では繊細で透き通るような歌声を披露している。こうした両面性を持った特徴的な歌声が、グループ全員で歌ってるときでも埋もれない存在感に繋がっている印象だ。


 また、グループ随一のアダルトな魅力を持つのがオレンジ担当のジェル。低めで柔らかく抱擁力のある彼の歌声は、ソロ名義での楽曲「ポーカーダンス」で顕著に表われている。曲に大人なムードや男性の哀愁といった独特の情感を醸し出すのに、ジェルの声質は重要な要素だ。


 最年長のさとみは、グループの頼りになるお兄さん的存在。そんな彼は王道の“イケボ”の持ち主だ。声に癖がなくストレートで、真っ直ぐなポップソングにぴたりとハマる。すとぷりとしても、曲で素直にファンへ向けて気持ちを伝えたいときなどに、彼の声の存在は欠かせないはずだ。


 さとみがお兄さん的であれば、最年少のるぅとは“弟的”。爽やか、かつ可愛い声で、キラキラ感のある楽曲を歌うとうまくマッチする。他にも地声と綺麗な歌声のギャップが魅力のころん、リーダーでありながら常に優しさを感じさせる声質を持ったななもり。といったように、すとぷりはメンバー全員がまったく違うタイプの声を持っている。


 6人もいれば誰かしら似たようなタイプがいそうなものだが、すとぷりは全員の声が非常に個性的。そして何と言っても、この6人の声が集まったときの絶妙な一体感が彼らの楽曲の核になっている。先日配信リリースされたばかりの「マブシガリヤ」を聴いてみよう。


 アカペラグループのような綺麗なハモりを見せるゴスペル風のイントロ。高い声から低い声のメンバーまで、バランスよく所属しているすとぷりならではの瞬間だ。歌に厚みが感じられる。


 次にやってくるのがA~Bメロ。60年代のモータウン系のポップスをJ-POPに落とし込んだようなサウンドのこの部分では、削ぎ落とされた音の隙間に各メンバーがひとりずつソロで歌い分けていく。まずはリーダーのななもり。が優しく先陣を切り、続いてジェルが持ち前の大人な雰囲気を漂わせることで曲の世界にリスナーを引き込む。そこで〈敵〉というワードの含まれる少し強めのフレーズを、特有の存在感のある莉犬が歌うことで聴き手の耳をキャッチ。それをころんが繋ぎ、さらに、さとみ→るぅととグループの兄弟的メンバーが歌い継いでいく。6人それぞれの歌声が浮き立つ作りだ。


 そして全員が一体となるサビ。イントロと違ってサビではユニゾンなのもポイントで、それによってパンチ力が増している。6人が一緒になって歌うことで、“メンバー全員で”聴き手の背中を押しているような一体感が生まれているだろう。


 多くのアイドルグループも同じようにソロのマイクリレーからユニゾン歌唱へと移っていく展開を見せるが、すとぷりは声の個性が強いため、この展開の強みがより一層活きているように思う。結果、彼らの声の魅力が存分に味わえる楽曲になっている。


 破竹の勢いで成長しているすとぷり。彼らの魅力は、6人の際立つ“声”の個性と、そのバランス、そしてそれを活かした楽曲にあるのだ。(荻原梓)