2020年06月14日 09:51 弁護士ドットコム
「給料の買い取りサービス」などとうたって、法外な高金利で金を貸し付ける「給料ファクタリング」をめぐり、金融庁が注意を呼びかける中、各地の利用者たちが業者を相手取り、支払った金の返還をもとめる訴訟を相次いで起こしている。
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給料ファクタリングとは、会社員などの給料日前に、業者が「債権」として給料を買い取って、給料日に「手数料」として利息を上乗せさせた金額を回収するというものだ。
業者はインターネット上で、「給料債権の買い取りサービス」「ブラックでも即日融資に代わる資金調達が可能」などと宣伝・広告して、申込みを募っている。
そのターゲットは、ブラックリストに登録されているため、消費者金融から金を借りられない人たちなどで、生活破綻に追い込まれるケースが増えているという。
こうした状況を受けて、金融庁は3月、給料ファクタリングは「貸金業」に該当するという法解釈を発表。貸金業登録を受けていない給料ファクタリング業者を利用しないよう呼びかけた。
給料ファクタリングの業者を相手取った訴訟は、今年に入って、全国で4件も起こされている(東京2件、大阪1件、埼玉1件)。そのうちの1つは次のようなものだ。
「七福神」の名称で営業する給料ファクタリングの利用者9人が5月13日、業者を相手取り、計436万円の返還を求めて東京地裁に提訴した。
訴状によると、ある利用者は、業者から10万円の給料を8万円に割り引いて買い取られたあと、約1月後の給料日に10万円を支払っていた(年利304%)。
業者が得る利益(利息)を年利換算すると、上記のように年300%前後が多く、中には、なんと年1042%にのぼるものがあったという。
出資法の上限金利(109.5%)を大幅に超えることから、原告側は、契約は公序良俗に反して無効で、すでに支払った全額は元本も含めて返還されるべきだと主張している。
金融庁のホームページには、家族や勤務先にしつこい電話や大声での恫喝があったという被害事例まであがっている。もはや、実態は「新手のヤミ金」といえる。
日本弁護士連合会(荒中会長)も5月、異例の会長声明を発表した。
この中で、(1)貸金業の登録を受けていない給料ファクタリング業者は貸金業法に違反する、(2)給料ファクタリング業者の手数料は利息とみなされるため、年利109.5%を超えると出資法に違反すると指摘。
さらに、給料ファクタリング業者を「違法なヤミ金融業者と断ずるほかない」と批判したうえで、その撲滅に向けて努力すると宣言している。さらに、金融庁や警察庁などに対して、業者の取締りを徹底するよう求めている。