『機動戦士ガンダム』シリーズは1979年の放送開始から実に多くの派生作品を生んできた、日本ロボットアニメの金字塔である。そんな人気作であるので、作品ごとの雰囲気は千差万別。明るい作品もあれば、常に暗い作品もある。
そして当然、作品の数だけ主人公もいる。ガンダムの主人公ってのは性格が本当にバリエーション豊かで、善人もいれば「こいつ悪役じゃないの?」って言いたくなる奴もいる。今回はその主人公たちに焦点を当ててみたい。(文:松本ミゾレ)
カミーユ・ビダンは「かなり面倒」枠に
先日、5ちゃんねるで「性格の良い主人公ランキング」というスレッドを見かけた。こちらのスレッドの指す主人公とはガンダムシリーズの主役たちのことであり、スレ主は性格の良さをAからGに分けて色々と選別している。
たとえばA(聖人)にはロランが選ばれている。牧歌的な雰囲気の『ターンエーガンダム』の主人公で、たしかに性格面も穏やかで、年齢の割にはしっかりしている。
ランクB(善人)には『機動戦士ガンダムAGE』のキオや『機動戦士ガンダムUC』のバナージが。ランクC(友好的)には『逆襲のシャア』のときのアムロや『機動戦士ガンダム0083』のコウ。ランクD(無難)には『機動戦士ガンダムSEED』のキラや『機動戦士Vガンダム』のウッソが入っている。
そして、ランクE(若干面倒)に初代のアムロや『機動戦士ガンダムZZ』のジュドーが。ランクF(かなり面倒)でとうとう『機動戦士Zガンダム』のぷっつん系主人公カミーユが登場。そしてランクG(無理)には『鉄血のオルフェンズ』の三日月や『新機動戦記ガンダムW』のヒイロの名前が挙がっていた。
「ランクと性格がリンクしていないのではないか?」という気持ちになるスレッドではあるんだけど、まあでも納得できる部分も多い。
周りにちゃんとした大人がいるかどうかで性格が決まってくる?
性格が良いとされているAからCぐらいの主人公たちの中には、周りにちゃんとした大人がいるってパターンが付帯していると感じられる。たとえばロランの場合は本人が良い子ってのもあるが、敵からも味方からもなんとなしに愛着を抱かれている(Vガンダムのウッソに向けられた執着とは違う、ちゃんとした愛着)。
『UC』のバナージも、複数の登場人物に父親的な役割をあてられている節があったが、それもこれも彼がどうにも放っておけない存在だったからかもしれない。特にギルボアは本来決定的に立場が違うのに、バナージに家族の在り方を提示して見せていたし。そこには愛情がちゃんと存在していた。
『0083』のコウの場合は結構特殊だけど、ケリィやガトーが"ちゃんとした大人"枠だった節もある。まあガトーの場合はテロリストなので、全然ちゃんとはしていないんだけど、コウの成長を促すという意味でね。
逆に『Z』のカミーユは災難だったと思う。両親はすれ違い気味だし、クワトロはなんか優柔不断だし、私怨で迫るジェリドなんてのもいるし、「こういう大人になりたいな」と思える見本のような人物が周囲にいない。
序盤はそれなりにクワトロを慕っていた形跡はあるんだけど、段々クワトロのメッキが百式よろしく剥げてきちゃって。後期オープニング映像では、前期と同じ構図なのにクワトロを見るカミーユの瞳が鬼のように冷たくなっちゃったもんなぁ。
良い性格になるには、周りの大人がしっかりと導かなければいけないということを、ガンダムシリーズは暗に示唆しているのかもしれない。