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小室哲哉、引退後初のラジオ出演で創作意欲を明かす 「このままのんびりしている場合じゃないかな」

2020年06月12日 13:41  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド編集部

 秋元康がプロデュースを務めるラジオ番組『TOKYO SPEAKEASY』(TOKYO FM)6月11日放送回に小室哲哉がゲスト出演。対談相手である古市憲寿を前に、引退後の活動や心境などを語った。


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 2018年の引退後、小室が公共の場に登場するのは約2年4カ月ぶり。今回の出演経緯について小室は、同番組のプロデュースを務める秋元本人より「小室ちゃん、出ようよ」と打診を受けたことを明かした。今回の出演はあくまで友人でもある秋元からのお願いからによるもので、これが正式な「復帰」ではないことを口にしていた。


 2018年の引退から2年以上、今まで何をしていたかを訊かれた小室は、「2018年は何をやってたか覚えてないぐらい、記憶が飛んじゃってるぐらい何もなくて……ピアノとかも一度も触ってなかったし。ちょっと耳の病気になったのもあって、音楽に触れることもなく……」と、引退直後は音楽自体から離れていたことを明かした。その後、知り合いの紹介から建築に音をつけることに興味を持ち始めたという小室は、2019年秋頃から少しずつピアノにも触れ始めたという。


 新型コロナウイルス感染拡大の直前には、エイベックスの松浦勝人会長より「レコーディングとかしているから遊びにきませんか?」との連絡を受け、スタジオに顔を出したという小室。「何か弾いてみてくださいよ」と声をかけられたこともあり、久しぶりにシンセサイザーを演奏したことも明かした。さらに、ほぼ同時期には、秋元康よりLINEで「曲書きませんか?」と連絡があり、楽曲制作に取り組んでいたことも判明。探り探りで3曲ほど仕上げた小室だが、結果、その3曲にはOKが出なかったという。「(小室さんも)ダメ出しとかされるんですね」と古市が言うと、「35年ぐらいやってるけど、一発でOKなんて一度もないよ」と意外な一言も飛び出した。


 今回の楽曲制作の依頼を受け、また創作意欲が湧いてきたかどうかについては、「創作意欲ともまた違って、時代がこの春で一気に進んだような気がして。願わくばオリンピックやパラリンピックが無事成功して、ちょっと日本が落ち着いてから考えようかなと思っていたけど、それがなんか全部早回しみたいになって……そこで僕の気持ちもガラッと変わったのかもしれない。このままのんびりしている場合じゃないかな、って」と、昨今の情勢を受け、自身の心境も変化を吐露。さらに小室は、この時代だからこそクリエイターとしてなにか残したいとも思うようになったそうで、「オフラインじゃなくて、オンラインの中で生きる曲を1曲だけでも残したい」と答え、音楽制作の楽しみを再び見出していたようであった。


 番組中盤、最近の曲で気に入ったものがあるか訊かれた小室は、「King Gnuはすごい好きですね。結構シンセの音が出てるじゃないですか。そのへんは懐かしいなって」と少し恥ずかしそうに答える場面も。その流れで、復帰について古市から改めて話しかけられると、「さっきの話じゃないけど、オンラインの中でのヒット曲が僕にはないと思っているから。そういうものが1曲でもあっていいのかな」と、明確に答えずとも前向きな言葉を残した。


 対談の途中には、H Jungle with t「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント」(1995年)や華原朋美「I’m Proud」(1996年)といった、小室が手がけたミリオンヒットの制作秘話について語られる場面も。自身や知り合いの経験を参考にしたこと、プロデューサーとしての視点などからそれぞれ制作にまつわるエピソードが飛び出し、90年代当時の時代感などを懐かしんでいた。


 globeが25周年、TM NETWORKがデビューから36年目に突入するにあたり、2020年になにか具体的なアクションはあるかと尋ねる古市に、やはり新型コロナウイルスなどの問題もあり「全体的になにもできないよね」と答える小室。「(コロナによる)この状況があってもなくても、大きく変革する時期なんだと思う」と続け、もしなんらかのアクションができるとすれば、オンラインを通じた新しい時代の形でやれたらと、今後への期待を感じさせる発言も飛び出した。


 対談の最後には、古市が「秋元さんから連絡がきてて『もう復帰しましょうよ』と言われてるみたいですけど」と小室に伝えると、「(曲の)ダメ出しが終わらない限り、復帰できないよ(笑)」と返答。およそ50分近い放送を通して、引退後から現在まで、これまで語られなかった小室哲哉の心境が垣間見れた対談であった。(
向原康太)