トップへ

ジャニーズWEST 中間淳太の推薦で脚光! 『medium 霊媒探偵城塚翡翠』が文芸書ランキングで再浮上

2020年06月12日 11:31  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

週間ベストセラー【単行本 文芸書ランキング】(6月2日トーハン調べ)
1位 『流浪の月』凪良ゆう 東京創元社
2位 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ 新潮社
3位 『カケラ』湊かなえ 集英社
4位 『クスノキの番人』東野圭吾 実業之日本社
5位 『逆ソクラテス』伊坂幸太郎 集英社
6位 『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹 文藝春秋
7位 『春菜ちゃん、がんばる? フェアリーテイル・クロニクル(2)』埴輪星人、ricci(イラスト) KADOKAWA
8位 『アーモンド』ソン・ウォンピョン 祥伝社
9位 『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼 講談社
10位 『ライオンのおやつ』小川糸 ポプラ社


 6月の文芸書ランキング1位は、先月に引き続き、本屋大賞を受賞した凪良ゆう氏の『流浪の月』。5月の文芸書ランキングがゴールデンウィーク明けの発表だった影響で、3週間しか経っていないこともあるだろうが、新しくランクインしたのは10位中4作。うち1作はこれまでもランキング常連だった相沢沙呼氏の『medium 霊媒探偵城塚翡翠』。


 相沢氏は、5月22日に公開予定だった映画『小説の神様 君としか描けない物語』の原作者。FANTASTICS from EXILE TRIBEの佐藤大樹&橋本環奈の主演作とあって注目を浴びていたため、映画を待ち遠しく思うファンが『medium』にも手を伸ばしたか……と思いきや。


 ジャニーズWESTの中間淳太がおすすめ本としてブログで紹介したのがきっかけ。5月21日には担当編集者が〈Amazon在庫が瞬殺していた〉〈ちょ…楽天さんまでもが一瞬でやられただと…⁉️ 中間淳太さんのファンと講談社の在庫戦争だというのか…〉とTwitterで嬉しい悲鳴をあげており、相沢氏も〈わ~、ありがとうございます!! サインをお送りしたい~~。〉〈ネットの在庫が次々と減っていく……! ありがたや!!!〉と喜びと感謝のツイート。


 ミステリファン、読書好きの間では、最後まで張り巡らされた伏線に興奮の声が上がり、年末年始はランキング常連だった『medium』。もう届くべきところには届ききったか……と思いきや、中間のブログをきっかけに、ふだんあまり小説を読まない、もしくはミステリにはあまり興味を示さなかった人たちの興味をかきたてた模様。ジャニーズで読書好きといえば、小説家でもあるNEWSの加藤シゲアキや、雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載していたA.B.C-Z戸塚祥太らが知られているが、中間も過去にテレビ番組で伊坂幸太郎氏『夜の国のクーパー』を薦めていたり、くだんのブログで道尾秀介氏『いけない』を紹介していたり、ミステリを中心にかなりの読書家であるようだ。


 3位にランクインした湊かなえ氏『カケラ』は美容整形がテーマのミステリ。大量のドーナツに囲まれて自死した少女は、モデルみたいな美少女だったといううわさもあれば、学校一のデブだったという声もある。美容整形外科医の橘久乃は、元同級生の娘らしい彼女の死の真相を探るべく、関係者に話を聞き続けるのだが……。その過程で浮かび上がっていくのは、男も女も関係なくみなが無意識にとらわれている、美醜によるジャッジだ。


 先だって、ジャーナリストの伊藤詩織氏がインターネット上の誹謗中傷について、名誉棄損の訴えを起こしたことがニュースになった際、彼女の肖像を“描いて応援”するムーブメントが起きた。その行為自体は伊藤氏を純粋に強く支持しようとするもので、悪意などまったくなかったが、これをきっかけに“美をアイコン化する危険性”についての議論が生まれた。


 また著名人の不倫に際し「あんなに美しい奥さんがいるのに……」と、やはり“美”について触れるコメントに違和感を覚える声も多くあがり、社会に浸透しているルッキズムを問題視する動きは近年、大きくなっている。


 『カケラ』では、太っている人は不健康だとか、痩せたいに違いないといった思いこみが描かれる。外見を貶すのはもちろんNGだけれど、痩せたら美人なのにとか、あなたは美しいからとか、褒めているようで相手の内面や経歴をないがしろにするような言動も、場合によっては他者を深く傷つける。これまで自分たちが当たり前だと思ってきたこと、よかれと思ってきたことが、実は大きなひずみを生む行為であるかもしれないと、考え直さなければならない時代が来ている。


 謎が謎を呼ぶ展開に夢中にさせられながら、ふとした瞬間に自分の心にも事件を招きかねない闇があることを同時に教えてくれるから、湊かなえ作品は支持され続けるのではないだろうか。


■立花もも◎1984年、愛知県生まれ。ライター。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行い、現在「リアルサウンドブック」にて『婚活迷子、お助けします。』連載中。


あわせて読みたい
凪良ゆうインタビュー
ブレイディみかこインタビュー
小川糸インタビュー


凪良ゆう『流浪の月』書評
東野圭吾『クスノキの番人』書評
伊坂幸太郎『逆ソクラテス』書評
村上春樹『猫を棄てる』書評1
村上春樹『猫を棄てる』書評2