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育児アドバイザーに聞く、みんなの子育て相談室 第31回 コロナ後、幼稚園や保育園に行きたがらない子どもをどうすればいい?

2020年06月10日 16:22  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

早く元の生活に戻したいという思いはありますが、どのようなことに注意をしながらアフターコロナを過ごせばいいのか、日本中が模索中だと思います。子ども達においては、コロナでしばらくお休みだった園も少しずつ再開して、嬉しそうに出かけるお子さんがいる一方で、そうではない子もいます。

先日、「娘がコロナで幼稚園が怖い! と言って登園をとても嫌がっているのですが、親としてなんといえばいいのか」というお声も聞きました。"子どもを認める大切さ"について取り上げてきた本連載ですが、今回は「アフターコロナ後、幼稚園に行きたくない子どもをどのように認めればいいですか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。
○この状況下で子どもの気持ちを認めるには?

「コロナで幼稚園が怖い! 行きたくない」というお子さんに対し、あなたなら何と答えますか? まだ5歳とはいえ、このコロナのことを子どもなりに理解して怖がっているなんて、お母さんがしっかりこの自粛期間中に伝えられたのだなと思います。

まずは親として、「そうだよね、怖いね。コロナをちゃんと怖いと思えることは大切なことだから偉いね」と、怖がる気持ちを受け止め、認めましょう。

親はつい、「大丈夫だよ。幼稚園楽しいよ。行ったほうがいいよ」と結論を言って諭したくなりますが、お子さんの心の中を一緒に体感していくことが大切です。

親が行く行かないの判断をするのではなく、子どもが自分で結論を出したと思えるように導くコミュニケーションを心がけましょう。

ここで大事なのは、"怖がる気持ちを認めること"です。間違えないでいただきたいのは、全てを真に受けて「登園しなくていいよ」と言うことが、認めることではありません。

そのために次に親に出来ることは、幼稚園が怖いと思い込んでしまっているお子さんに、本当に怖い正体は何なのか突きとめてあげることです。大人にとっては簡単にイメージできることも、子どもにはまだ難しいので、下記の例を参考に、怖がる気持ちに共感しながら一緒に考えてあげましょう。

(母)「怖いよね。ママもパパもあなたに感染して欲しくないと思っているよ。何が1番怖い?」
(子)「だって、コロナになったら死んじゃうかもしれないんでしょ」
(母)「うん、でも全員じゃないよ。治った人もたくさんいるし、お薬も少しずつ開発されてきているし。まずは、感染しないことと人に移さないことが大事だよね」
(子)「うん」
(母)「そのために出来ることは何?」
(子)「手洗い、うがい、マスク、かな……?」
(母)「そうだね! 触った手で口や目を触らないことで、感染を防げるよね。できる?」
(子)「うん! できる」
(母)「幼稚園の先生も消毒したりして、うつらないように準備をしてくれているよ」
(子)「幼稚園は怖くない?」
(母)「うん! 怖いのは?」
(子)「手洗いうがいマスクをしないこと!」

このように話をすれば、子どもは、幼稚園という場所が怖いわけではないということを理解するのではないでしょうか。そして、子ども本人が幼稚園に行ってどうすればいいのかを、具体的に想像できるように言葉を重ねることが大切です。

もちろん1回ですぐにわかるお子さんは少ないと思います。しかし園が本格的に始まるまでに、怖い気持ちをしっかり受け止めてお子さんの気持ちを整理して行くことで、だんだん理解できるようになります。

幼稚園そのものが怖いというわけではないことが理解できたら、楽しいことも一緒に想像してみましょう。例えばこんな具合に。

(母)「幼稚園に行けば先生に会えるしお友達と遊べるね。何して遊ぼうか?」
(子)「紙芝居読んでもらえるかな? 園長先生に会えるかな?」
(母)「楽しみだね」
(子)「うん、幼稚園に行く!」

園で経験できる楽しいことをお子さんが想像できるように話すことで、幼稚園に行きたい気持ちを思い出せるといいですね。

それでも行きたがらない場合は、コロナではなく別の要因が考えられるので、同じようにコミュニケーションをとりながら一緒に考えるようにしましょう。
○子どもが判断できるよう一緒に考よう

子どもが自分で決めることが大事ですが、決めるまでの道筋を一緒に丁寧に対話することは大切です。そうすれば、子どもの考え方が整理されていくからです。

ときどき、「自分で考えて結論出しなさい! ママは何も言わないから」と、子どもに考えさせているというお母さんがいますが、これはあまり意味がありません。

なぜなら、こう言われて子どもが考えることは「ママが怒らないのはどっちかな? ママが褒めてくれるのはどっちかな?」であって、本当に自分が取るべき判断力は育まれていないからです。

どうせ園に行くことになるなら、こんな面倒なことをせず、最初から行かせればいいのではと思われるかもしれません。しかし、行かせることが大事というよりも、今後、お子さんが不安に陥った時に、どう考えてどう乗り越えていくのかを自分で判断して行動できるようになることが大切です。そのために、今から親子で一緒に練習していきましょう。

○執筆者プロフィール :天野 ひかり

・親子コミュニケーションアドバイザー

・NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。
NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師などを実施。
自身が立ち上げたNPO法人でも、子どもの自己肯定感を育てる親子のコミュニケーションを学ぶ教室「ことばでおやこみゅ教室」を主宰する。
■HP: h I k a r i a m a n o
■著書
・Amazon子育てランキング1位のロングセラー
「子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ」サンクチュアリ出版
・最新刊
「賢い子を育てる夫婦の会話」あさ出版 ほか。(天野ひかり)