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紀里谷和明監督が“新しい創作”に挑む 『新世界』サポーター募集プロジェクトがスタート

2020年06月10日 14:21  リアルサウンド

リアルサウンド

紀里谷和明監督作品『新世界』

 映画『CASSHERN』『GOEMON』『ラスト・ナイツ』の紀里谷和明監督が新作『新世界』を手がけるにあたり、パイロット映像制作の応援サポーターを募集するプロジェクトがクラウドファンディングサイト「Makuake」でスタートした。


参考:『ラスト・ナイツ』初日舞台挨拶に紀里谷和明と伊原剛志が登壇 紀里谷「命がけで作った作品」


 本作は、紀里谷監督が発起人となり、クリエイティブの復興を掲げ、作品の創作過程や発表方法、マネタイズのビジネスまでをアートと捉え、新たな映像表現に挑戦するプロジェクト。制約条件の中で真のクリエイティブを追求する映像制作を目指し、Zoom会議など制作過程を公開配信していくことで、多くの人に映像制作に参加してもらう。映像制作は全てリモートで行うことを想定している。


 制作には、紀里谷が20年近くパートナーを組み、宇多田ヒカルの「traveling」MVや『CASSHERN』『GOEMON』、最近では蜷川実花監督作『Diner ダイナー』などの作品も手がけるCGプロダクション、エヌ・デザインが参加する。


 リターンには、オンライン決起集会参加権やエンドロールクレジット掲載など、映像制作に参加できる権利が多数用意されている。


■紀里谷和明監督メッセージ
映画と呼ばれるものは、莫大な制作費がかかります。その為、その資金を拠出する映画会社は「ヒットしそう」な作品を制作したがります。映画はビジネスなので、その気持ちはよくわかりますし、否定するつもりはありません。
しかし、ここがいつもぶつかる問題なのですが、ビジネスの世界が求めるヒットする安心感と、私が作りたい、と思うものの間には大きな溝があるのです。それは私だけでなく多くのクリエイターが抱えるジレンマではないでしょうか? 事実「マーケットのニーズにそぐわない」という理由で却下された脚本がいくつも存在し、『新世界』もその一つです。
それに加えて、「ヒットしそうと思われるものが、確実にヒットするのか?」という疑問もあります。実際には予想通りの結果を生み出している作品は少数です。逆に「ヒットしない」と思われていた作品が、出来上がってみたら長きにわたってオーディエンスに愛されるという事実もあります。
要は「作ってみない限り、その作品がヒットするのかしないのかなど、誰にもわからない」のです。
では、なぜ、ビジネスサイドが考える不確実なロジックに従って、クリエイターは創作しなければならないのでしょうか? 多くのクリエイターは、そのロジックに苦しめられ、自らの創造性を犠牲にしています。そもそも芸術とは可能性の提案であり、これまでなかったものを作るのが、その本分であると私は信じています。よって最初は理解されなくて当然なのです。しかし、それではあまりにもリスクが高すぎる、というのがお金を出す側の言い分です。
繰り返しますが、誰が悪いわけでもないのです。要は、仕組みに問題があり、それに変わる新しい仕組みが必要だと思うのです。
この問題の解決策をこの数年考えてきました。そして一つの考えに到達しました。ここではその構想の全貌をあかすことはできませんが、政策から発表までの全てを根本から考え直すものです。もしこの試みが成功すると、もっと自由な創作の環境が出来上がると確信しています。
今回はその第一ステップとして、クラウドファンディングによるみなさんの協力をお願いします。クラウドファンディングによる制作資金の調達には限界があります。よって、今回制作できる作品は90秒ほどのトレーラーだと思ってください。
たった90秒? と思われるかもしれません。しかし、それはとても大きな一歩です。その先に広がる大きな物語と重要な試みの大切なステップなのです。
折しも今回のコロナウイルスの発生で、映画どころか世界を取り巻く環境は困難なものとなっています。しかし、その困難をチャンスとして生かすことができると私は信じています。全ての業界において、新しいシステムの確立が求められています。
その新しい世界に対しての一つのビジョンとしてこの『新世界』を皆さんにお届けしたいと願っております。
みんなで新世界を作りましょう。


(リアルサウンド編集部)