外食産業が苦境に立たされている。新型コロナウイルスの影響が最初に強く出たのは個人経営の店だった。廃業に追い込まれる店が続出し、政府も対策に乗り出してるが、今度は大手チェーンでも閉店ラッシュが始まった。
ファミレスチェーン、ジョイフルは6月8日、全国の不採算店舗約200店を順次閉店すると発表した。同社は新型コロナウイルスの影響を受け、一部店舗で短縮営業や休業を実施。外出自粛の影響も重なり、4月以降の業績が悪化していた。
「外食産業を取り巻く環境が大きく変化することが見込まれます」
広報担当者は「現在、採算を精査していますので、閉店する具体的な店舗、時期などはまだ確定していません」としているが、情勢はかなり厳しい。
同社は、西日本を中心に700店舗以上を展開。3月の売上は前年同月比16.1%減にとどまったが、4月が同55.3%減、5月が同52.7%と2か月連続で5割以上の落ち込みが続いていた。
リリースでは「消費者の行動や外食に対する価値観など、外食産業を取り巻く環境が大きく変化することが見込まれます」とコメント。さらに、今後の経営方針としては
「財務基盤の強化を図る観点から収益力を改善し手元流動性を高めていくため、収益改善が見込めない店舗の退店を柱とする経営合理策を実施することにいたしました」
と方向性を示している。主な原因としては、やはり新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響があったようだ。緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大される直前の4月14日以降、同社は一部店舗で休業措置を実施。休業は、一時最大で全国324店舗にものぼった。
同社担当者は「こうした影響からお客様の客足が遠のいている」と明かした上で、今後の具体的な対策については
「新型コロナの影響も続いており、まだ合理的な見積もりが立っていない状況なので未定です」
と答えるにとどめた。
「外食産業は国民の生活に欠かせない生活インフラを支える業種」と業界団体
ファミレス業界ではこのほか、ロイヤルホールディングスが「ロイヤルホスト」など70店舗を閉店する方針。居酒屋チェーンのワタミや、回転ずしチェーン「かっぱ寿司」を展開するコロワイドも同日までに不採算店舗の閉店を発表していた。
外食産業を推進する日本フードサービス協会は、新型コロナの影響を受けて苦境に立たされている外食業界の傾向について、
「政府、自治体の要請に基づいて休業している店も多かったが、全国的な傾向として家賃などの固定費が重くのしかかっています」
と現状を語る。東京都は4月、飲食店が要請に応じて休業した場合に支給する「感染拡大防止協力金」を発表。だが、対象は中小の事業者にとどまり、同協会員の多くを占める年商10億円以上の企業チェーンなどは対象外だった。
また、政府が成立を目指している第2次補正予算には「家賃支援給付金」が盛り込まれているが、こちらも対象は個人事業主、小規模事業者、中小企業、中堅企業などに限定され、大手チェーンは含まれていない。同協会は
「今後も引き続き、給付金の対象を大企業まで広げてもらえるよう政府に働きかけていきます」
と述べた上で「外食産業は国民の生活に欠かせない生活インフラを支える業種の一つです。政府にもこうした見方を持ってほしい」とコメントした。