2020年06月08日 10:11 弁護士ドットコム
「免許を取った」「20歳になった」などのお祝いとして、子どもに車を買い与える親たちがいる。しかし中には、買ってもらったばかりの車を売って現金を手にするドラ息子や放蕩娘もいるのが現実だ。
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弁護士ドットコムにも「親が買い与えた車を、18歳の息子が勝手に友人に売ってしまった」という相談が寄せられている。
車は親名義となっており、親は「トラブルに巻き込まれるのではないか」「税金や保険料の支払いがくるのではないか」などと不安を抱えているという。
名義が親のままだと、どのようなトラブルが予想されるのだろうか。田村ゆかり弁護士に聞いた。
――税金は親が支払わなければならないのだろうか。
「今回のケースは、もともと親が自動車検査証(車検証)上の所有者である車を息子が勝手に友人に売ってしまったという事案です。
親から友人に所有者を変更するための手続きを行っていないため、所有者は親のままです。自動車税は4月1日時点で所有者として車検証に記載されている方に納税義務があります。そのため、親が支払義務を負います」
――息子の友人が交通事故を起こした場合はどうなるのだろうか。
「息子の友人が交通事故を起こすおそれは十分にあります(警察庁の統計によると、2019年の交通事故件数は38万1237件でした)。
自動車損害賠償保障法(自賠法)3条は『自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる』と定めています。
車の所有者がこの責任を免れるのはかなり困難です。車が盗まれて事故が起こった場合でさえ、態様によっては責任を免れないのです。
交通事故で相手が怪我をして後遺障害が残ったり、死亡したりした場合、損害賠償額は数千万円から数億円に上ることも珍しくありません。
任意保険に加入していたとしても、たとえば息子の友人が無免許運転や酒気帯び運転をしていた場合などは保険会社の免責事由に該当し、支払いがされないこともあります」
――今回のケースのように、未成年の子どもが親名義の車を勝手に友人などに売却した場合、親はどのように対処すべきだろうか。
「これまで述べたとおり、親が所有者である車を息子の友人が運転している状況を放置しておくと、親は交通事故時の損害賠償義務、自動車税の納付義務などの重い責任を負うことになりかねません。
今回のケースでは、息子は18歳の未成年です。そこで、息子が勝手におこなった車の売買契約を取り消し(民法5条2項)、車を取り戻すべきです。
なお、現在の民法では20歳で成人しますが(民法4条)、成年年齢を18歳に引き上げる法律が2022年4月1日に施行されます。
2022年4月1日時点で18歳以上20歳未満の方はその日に成年に達することになります。そのため、それ以後に18歳の息子が勝手に車を売ってしまった場合は、親は売買契約を取り消すことができません。注意が必要です」
【取材協力弁護士】
田村 ゆかり(たむら・ゆかり)弁護士
経営革新等支援機関。沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。
事務所名:でいご法律事務所
事務所URL:http://www.deigo-law.com/