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メイク動画の新潮流「量産型・地雷系」はなぜ人気? 藤田ニコルから峯岸みなみまで、ヒット動画とともに考察

2020年06月08日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

動画サムネイルより

 「メイク動画」は女性YouTuberの定番ジャンル。なかでも最近、YouTubeの急上昇ランキングにもランクインし、注目されているのが「量産型メイク」と「地雷系メイク」だ。


(参考:小嶋陽菜が峯岸みなみにリモートでメイク指導 “美の伝道師”のテクニックでどこまで可愛くなる?


 簡単に説明すると、「量産型」とは「量産型女子(あるいは量産型オタク)」を指し、髪型はハーフアップのツインテール、フリルやリボンを多用し、過剰にガーリーなメイクやファッションのこと。「量産型」という名前のとおり、ジャニーズなどのメンズアイドルグループのライブに来ているような女性が、このような外見をしていることが多いため、(やや自虐的・ネタ的に)そう自称しているケースが多い。InstagramやTikTokで「量産型」を検索するとイメージがつかみやすいだろう。


 ちなみに2010年代前半くらいまでは、「量産型女子」といえば、まとめサイトなどで、流行のファッションを身にまとう女子大生を揶揄する言葉だったはずなのだが、いつの間にかアイドルオタクの指すものに変わっていたのも興味深い。


 そして「地雷系(地雷女)」も、古くからネット上で使われている言葉ではあるが、もともとはメイクや見た目の話ではなく、一見可愛いけれど交際してみたら、愛情の重さ故に苦労するタイプの女性を指す言葉だった。その後、「推し」や「担当」に重たい愛情を注ぐ(or注ぎたい)タイプの女性が、あえて「地雷」を自称することが増えてきたように感じる。


 ファッション自体は量産型の派生のようで、やはりフリルやリボンを多用し、人形のような血色の薄さ、そして「量産型」よりもダークなメイクが特長。近年の女性アイドルグループなどに見られる「病みかわいい」カルチャーと親和性が高いとされる。人気写真アプリ「SNOW」が、「地雷メイク」フィルターを実装したことも、認知度が高まった一因のようだ。


 このあたりの差異は、量産型・地雷系の女性たちから、高い支持を得ているファッションブランド「EAT ME」を手掛ける、タレントの益若つばさのメイク動画でも詳しく解説されている(益若も指摘しているが、量産型と地雷が混ざったようなメイクも多い)。


 「量産型」がYouTuberの間で大きく注目されるようになったのは、人気カップルYouTuber・えむれなによる「【量産型】ふくれなを彼氏の好みにイメチェンしてみた【ふくれな】【M君】」(2019年2月公開)だろうか。「量産型ファッション」が好みだというMが、恋人のふくれなと一緒にショッピングに勤しむ動画は、250万回近く再生されている。


 その後、彼らと親交の深いまあたそが「量産型」に挑戦した「【本気のイメチェン】遂に…ブスが”量産型ふわふわ女子”デビューで奇跡の大変身!!!【神回】」は約550万回再生を記録。こちらの動画は、再生数は高いもののネタ動画に寄っているので、現在のように女性YouTuberの間で爆発的に流行ることはなかった。


 そして、メイク動画が盛り上がったきっかけは、やはりふくれなによる「【整形級】推しを騙す。120%盛れる量産型メイク」(からで、約260万再生されたこの動画が公開された2月の後半以降、人気女性YouTuberのみならず、りゅうちぇるや藤田ニコル、峯岸みなみといったタレントまでがメイク動画を公開している。


 なぜ今、これらのメイクが流行っているのか。もちろん「盛れる」という理由が第一だろうが、もしかしたら、新型コロナウイルスにより在宅時間が長いゆえに、「どうせ外に出られないから、ちょっと変わったメイクを試してみたい」という視聴者の需要とマッチしているかもしれない(YouTuber自身も、量産型、地雷系女子当事者である場合は少なく、「やってみた」と銘打って行っているケースも多い)。そう考えると、2月から動画が急増したことにも説明がつくのではないだろうか。


 どちらの概念も当初は、主に異性からの蔑称として使われていたはずなのだが、いつの間にか「かわいい」とされるようになった経緯がある(Mのように「量産型ファッションが好き」という男性は、まだまだ少数派だとは感じるが)。そもそも「オタク」という言葉自体も当初は蔑称だったはず。まったく言葉というものは面白いものである。


 女性向けファッション雑誌にて、「推し」特集が組まれることもそう珍しくなくなり、身近な恋愛やデートのような「身近な異性に受ける」だけが「装い」の動機ではなくなった現在。この傾向が進んでいくと、もしかしたら「量産型」「地雷系」が、今後女性ファッションの市民権を獲得する日が来るのかもしれない。


(藤谷千明)