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19歳の新鋭、Vaundyによる1stアルバム『strobo』がチャート好調 楽曲に滲み出るボーカリストとしての才覚

2020年06月07日 18:31  リアルサウンド

リアルサウンド

Vaundy『strobo』

参考:2020年06月08日付週間アルバムランキング(2020年05月25日~2020年05月31日)(https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2020-06-08/)


 6月8日付のオリコン週間アルバムランキングで首位となったのは、スマートフォン向け『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』に登場する7バンドによるカバー集『バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクション Vol.4』で、推定売上枚数は23,142枚。次いで、『FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE』のサウンドトラック『FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Original Soundtrack』が19,253枚で2位、レディー・ガガの『Chromatica』が7,783枚で3位と続く。ほか、初登場は5位Vaundy『strobo』(5,405枚)、6位くるり『thaw』(5,232枚)、8位Novelbright『WONDERLAND』(4,763枚)、9位Baekhyun(EXO)『Delight: 2nd Mini Album』(4,755枚)。やはりコロナ禍の影響か、売上は全体的に低調のままという印象だ(ちなみに、5月18日付のランキングに至っては首位ですら1万枚を切っていた)。


 さて今回ピックアップするのは5位のVaundy『strobo』。19歳の新鋭シンガーソングライターだ。2019年、配信シングル「東京フラッシュ」で話題を呼んで注目を一気に集め、この5月にはLauvのリミックスアルバムにも抜擢された。フィールドレコーディングのカットアップから幕を開ける本作は、弾き語り、インディポップ、ヒップホップ、R&Bなどなど、なかにはタテノリの邦ロックまであり、さまざまなジャンルの意匠を借りたバラエティ豊かな11曲からなる。


 まだ世に出たばかりながら、Vaundyのアレンジやサウンドはとてもよく仕上がっている。アルバムからいったん離れるが、本作リリースに先駆けて発表されたLauvのリミックス(「Modern Loneliness (Vaundy Remix)」)は個人的に気に入っていて、ピアノを中心に壮大さを増していくバラードを、点描的なギターリフに導かれるモダンなローファイポップに鮮やかに作り替えていて素晴らしい。終盤でさらっと倍速になって、音像ではなくちょっとしたアレンジの工夫で大団円のクライマックスを演出しているあたり、とても惹き込まれる。


 Vaundyでもうひとつポイントなのは歌声だ。アルバム『strobo』で聴けるボーカルもシルキーな部分からハスキーな部分まで起伏に富み、ボーカリストとしての才覚も感じられる。歌唱力でねじふせるパワータイプではないかもしれないけれど、たしかな表現力を持っている。


 そんな歌声を活かした『strobo』は、前述した「Modern Loneliness (Vaundy Remix)」に比べるとより幅広い聴き手に届きうる作品になっており、「僕は今日も」のストリングスアレンジに象徴的なようにJ-POPとして存分に楽しむことができる。サビや間奏のごちゃっとしたサウンドは少し気になる点ではあるが、2010年代以降のネオシティポップマナーを感じる「東京フラッシュ」や物憂げなR&B調の「不可幸力」など、ソングライティングの妙は冴え渡っているし、「東京フラッシュ」のバースでビートの抜き差しとボーカルの効果的な絡み合いをしっかり聴かせるのもさすがだ。


 先んじてリリースされた藤井風の1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』は、クセの塊のようなソングライティングを、Tokyo RecordingsのYaffleによるプロデュースで現代的なサウンドに仕上げるバランス感覚が光っていた。『strobe』はエグいほどのクセとは無縁だが、それがたしかなポピュラリティにつながっていて、Vaundyの大きな強みになっている。強いて言うとすれば、Lauvのリミックスのような芯を食ったアレンジとサウンドをもっと聴いてみたいということだろうか。高いポテンシャルを秘めたシンガーソングライターだからこそ、『strobo』にそれがあったらもっと素晴らしかったのではないか。(imdkm)