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アメリカの「Black Lives Matter」は『あつ森』にも波及 香港に続き“抗議の場”として機能する

2020年06月07日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『あつまれ どうぶつの森』

 アメリカで白人警官が黒人を殺害したのを発端に、人種差別への大規模な反対運動が展開しているのに伴い、任天堂のコミュニケーションゲーム『あつまれ どうぶつの森』(Animal Crossing: New Horizons)の界隈でも、論争や抗議行動が起こっている。


(参考:『あつまれ どうぶつの森』で動物愛護団体がフータに抗議 「魚を開放せよ!」


・黒人差別反対運動を抑制したマーケットに抗議殺到
 『Polygon』は、cockspicuous氏が作成した、『あつまれ どうぶつの森』のアイテムを、ユーザー同士で売買およびトレードすることを目的としたコミュニティサイト「Nookazon」が、Discordで黒人差別反対運動「Black Lives Matter」への言及を禁じたことについて報道した(参考:https://www.polygon.com/2020/6/2/21277972/animal-crossing-new-horizons-black-lives-matter-acnh-nintendo-switch-politics)。


 「すべての警官はろくでなし」を意味するキーワード「ACAB」 (All Cops Are Bastards) が削除されると、良心を持つメンバーが次々とサイトから離脱。Nookazon側は被害対策として、「この政治情勢で、意見を沈黙させ共謀する意図は、ありませんでした。当チームは、現下の大きな出来事への対応の準備が整っていませんでした」と、Black Lives Matterを支援することを明確にする公式声明を発表した。


 さらにNookazonは、謝罪の意味を込め、現状について議論を行うDiscordチャンネルを設置。スタッフが500ドル(約5万円)をBlack Lives Matterに寄付した。


 しかし、それでも一部のファンは気が収まらず、最初からBlack Lives Matter支援の立場をとるNook.Marketといった、他のサイトに移るように促しているという。


 他方、50万人以上メンバーがいる『あつまれ どうぶつの森』のFacebookグループでも、Black Lives Matter支援の投稿が見受けられている。


・「ゲームに政治を持ち込むべきか」という議論も
 ファンの中には「ゲームに政治を持ち込むべきではない」と主張する者もあるが、プラットフォーム側がしっかりとメッセージを表明しているケースが多くみられる。


 それは『あつまれ どうぶつの森』の場合も例外でなく、開発元である任天堂の米国法人Nintendo of Americaは次の通りツイートしている。


「ニンテンドーは、ジョージ・フロイドさんの死を受け、アメリカが感じている痛みを共有し、黒人コミュニティーと共にあり、人に対する思いやり、公平性に対する根本的な信念、正義を尊重します。この様なあってはならない死につながる偏見、差別、圧力、暴力に反対します。弊社事業のあらゆる面で、平等、インクルージョン、ダイバーシティを推進していきます」


・今回の抗議が最初でも最後でもない?
 これまでも香港の民主化運動において、『あつまれ どうぶつの森』は、インターネット規制や個人の事情で政治的メッセージが発信できない人たちが、それらの声明を出す場所として機能したという例もある。


 『USgamer』は、『スプラトゥーン2』でも同様のアクションが起こっていると説明したうえで、「今回がゲームで行われた最初のバーチャル抗議ではなく、間違いなく最後の抗議でもない」という見解を伝えている(参考:https://www.usgamer.net/articles/animal-crossing-splatoon-2-virtual-black-lives-matter-protests)。


 『あつまれ どうぶつの森』は、新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威が吹き荒れる中、リリースされ、自宅に籠もり鬱積する人々のニーズに応え、社会とうまく共鳴した。


 現実社会とバーチャルな世界が、密接に繋がっているという『あつまれ どうぶつの森』の特徴が、今回の社会運動でも、再確認されたといえるのではないだろうか。


(Nagata Tombo)