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企業配布の「ウェブ会議背景画像」、加工禁止なのに早速「コラ画像」…法的には?

2020年06月03日 10:21  弁護士ドットコム

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新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、在宅勤務が広がり、ウェブ会議をすることが増えました。


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会議ツールの中には、部屋の様子が写り込まないように「バーチャル背景」を設定できるものもありますが、これに合わせて、さまざまな企業が背景画像や壁紙を無料配布しています。



人気漫画が原作のTVアニメ『鬼滅の刃』は、公式サイトで「作中に入り込めるような壁紙をプレゼント」と12枚の背景画像を配布。「配布画像の加工、改変等は禁止致します」としています。



また、任天堂は、様々なゲームタイトルごとに壁紙を配布しています。



例えば、Nintendo Switch用ソフト『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の公式ツイッターでは、「参戦!!」画像など4枚を配布。ツイートでは「画像の加工や営利目的の利用、再配布はご遠慮ください」と記載がありますが、リプライで加工された画像が次々と寄せられています。







リプライ欄では「加工させる気満々やん」、「加工せずにどんな場面で使うんだよ」といったコメントがある一方で、「呆れる」「リプ欄がひどい」と早速加工する人たちを疑問視する声もみられました。



画像の加工が禁止と呼びかけがあった上で加工した場合、著作権法違反にならないのでしょうか。佐藤孝丞弁護士に聞きました。



●著作権の侵害となる可能性がある

ーーリプ欄には早速加工された画像が並んでいます。法的にはどう考えられますか



基本的には著作権法違反になると考えられます。これからその理由を説明していきます。



まず、今回のような背景画像は、著作権法上の著作物となることが多いです。そして、画像の著作権は、当初の著作者が誰であれ、契約等により最終的には背景画像の配信企業に帰属していることが多いと考えます。



投稿の態様にもよりますが、無料配信された背景画像であっても、それをSNSなどで投稿(改変したものを含みます)する行為は、著作権(複製権、翻案権、公衆送信権等)の侵害となる可能性があります。



ーー個人で楽しむ範囲でも、著作権の侵害となりますか



個人の楽しみを目的にするものであっても、SNSでの投稿を目的に含む複製は、例外的に無断複製が許される「私的使用のための複製(著作権法30条1項)」とは認められにくいです。



また、画像の著作者には著作者人格権があるので、改変行為が、著作者人格権のうち同一性保持権を侵害する可能性もあります。



著作権侵害行為には、民事上の損害賠償などの責任や刑事罰が存在します。



著作権者が許した範囲の投稿であれば、著作権侵害にはなりませんが、今回の『鬼滅の刃』や『スマブラ』の壁紙画像については、ウェブサイト上に、画像の加工を禁止する旨が明記されています。



したがって、私的使用を超えた画像の改変行為について、著作権者の許諾はない、つまり、著作権侵害となる可能性が高いといえます。



●現状、権利者に告訴などの大きな負担が生じる

ーー著作権侵害行為であっても、現状、黙認されている状態となっています。一体何故なのでしょうか



SNSへの投稿を通した著作権侵害が数多く存在します。その一つ一つに権利行使をするのは、労力などに鑑みて現実的ではなく、やむを得ず、権利者が黙認している現状が長年続いています。



一方で、著作権侵害となる投稿なども権利者にとって広告宣伝効果を生じるケースもあり、あえて黙認しているケースもあるとされます。このような複合的な状況が法整備にも難しいバランス調整の課題を生じているといえます。



刑事罰の面でみても、近年の著作権法改正で一部の著作権侵害行為が非親告罪化されました。しかし、対象は限定的であり、結局は、権利者に告訴などの大きな負担が生じるのが現状といえるでしょう。



●画像配布が「恩恵」であることの認識が必要

ーー今回のような画像加工は、著作権の侵害となる可能性があるということを知っておく必要がありますね



これまで述べてきたように、今回に即していえば、「著作物を複製・改変したものの投稿は、原則として著作権侵害になる。権利者の許諾があれば例外的に著作権侵害ではなくなる」というのが著作権法の考え方である、と整理できます。



ですから、無償配信の背景画像は、本来利用できないものを無償で利用させてもらう恩恵的なものという側面が少なからずあると考えます。



また、企業が最近になって背景画像をたくさん無償配信しているのは、広告宣伝的な目的もあるのかもしれませんが、どちらかというと、新型コロナウイルス感染症の影響で在宅ワークやウェブ会議が増えた人たちを思った対応という面が大きいと推察します。



したがって、今回のような背景画像の改変行為は、著作権法違反の可能性が高いことに加え、個人的には、画像を配信した権利者の思いへの想像力を欠くものと思えてなりません。



二次的創作の活性化などとのバランスが難しい問題ではありますが、配信された背景画像等を私的使用を超えてSNSなどにおいて投稿をすることには慎重であっていただきたいと思います。



(佐藤弁護士の見解は、所属する組織の見解を示すものではありません)




【取材協力弁護士】
佐藤 孝丞(さとう・こうすけ)弁護士
都内を中心に、企業法務一般、特に著作権・商標権・模倣品対応等の知的財産案件に注力。弁理士としても活動中。一方で、相続等の様々な案件を取り扱う。弁護士知財ネット会員。
事務所名:佐野総合法律事務所
事務所URL:https://sklaw.jp/