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AZKiマネージャー・ツラニミズに聞く“VTuber文化に必要なもの” 「目が外に向いているから、ブレずに進める」

2020年06月02日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 2018年11月15日より活動を開始し、8か月連続オリジナル楽曲リリースを始め、これまで4度のワンマンライブを開催するなど、これまで精力的に活動を行ってきた「イノナカミュージック」所属のVSinger・AZKi。彼女を語る上で、マネージャーであり、イノナカミュージック主宰であるツラニミズ氏を外すことはできない。


 これまでVTuberという狭いようで広いカルチャーの中で、突出した活動と誰も思いつかないような企画やライブでAZKiの軌跡を演出してきたツラニミズ氏に、マネージャーとしてこれまでの活動を振り返りながら、VTuberカルチャーに対する思いや、今後の活動に対して話を聞くことができた。(森山ド・ロ)


(参考:kz(livetune)が考える、VTuber文化ならではの魅力「僕らが10年かけたことを、わずか2年でやってる」


・「きっかけは、完全に渡辺淳之介さんオマージュ」
ーーVTuber業界に入ったきっかけはなんですか?


ツラニミズ:「新しいオタクの楽園が生まれそうだ」と思ったからです。VTuber業界やVR周りの技術には、インターネットが誕生してからカルチャーとして普及していく流れの再来を感じて、魅力的に見えたんです。インターネットが始まった時に1番インターネットをやっていたのって、間違いなくオタクだと思うんですよ。実生活で自分の周りには、自分の好きなものを共有できる人とか共感できる人がいないけど、インターネットを通して、場所とか時間関係なく、自分の好きなものを共有できる人がいることの素晴らしさが、インターネットの黎明期にはあったなと。


 それを1番はじめに見つけて盛り上げてきたのは当時のオタクで、2000年代後半からSNS(スマホ)の普及が進んでいって、一般の人たちもインターネットに近づくことになって、元々オタクの楽園だったのが、気づいたらオタクの楽園じゃなくなっていった結果、オタクは外に出てリアルのアイドルを応援する、みたいな流れがあったと思うんですよ。そんな中で、また新しくオタクが仮想世界やバーチャルアバターみたいな魅力を見つけて集まり始めた時に、「これってインターネットが盛り上がる時と同じ歴史の繰り返しが起きるんじゃないか」と思って、それがすごく面白そうだと感じたからこそ、この業界に興味が湧きました。


ーーなぜAZKiさんのマネージャーとして活動することになったんですか?


ツラニミズ:きっかけは、完全に渡辺淳之介さん(BiSHなどのマネジメントを手がける、株式会社WACKの代表取締役)オマージュですね。僕は元々アイドルがずっと好きで、特にプロデューサー的な立ち位置の人に興味があって、WACKの活動を見守るようになりました。特に感銘を受けたのは映画『劇場版 BiS誕生の詩』のパンフレットに掲載されていたインタビューで、渡辺さんは「プロデューサーはプロジェクトが良くないと離れられるけど、マネージャーって一蓮托生で、アーティストが売れなければ自分も死ぬみたいなヒリヒリ感がいいんですよね」と言っていて。それぐらいの背負い方をしないと、才能を持っている人の時間を預かる上で、背負う覚悟の重さが変わってくるんじゃないかと思ったんです。だからこそ、自分への縛りみたいなものなんですが、プロデューサーとしてプロジェクトに携わるんじゃなくて、AZKiという人そのものに携わりたいなと思ったので、マネージャーという立場を取っています。


ーー確かにVSingerはたくさんいますが、AZKiさんとツラニミズさんのような関係性を持つチームは少ない印象があります。もっとこういう形式が増えるべきだと思いますか?


ツラニミズ:いや、ぶっちゃけ効率悪いと思いますよ(笑)。結局、いろんな人が言っているように、VTuberやVSingerって、リアルなアーティストよりもコストがかかるんですよね。そのぶんビジネスとしては、スピート感を出していかなくてはいけないし、なんだったら1組をずっとやり続けるよりも、複数プロジェクトをやったほうが絶対に生産性が上がります。なので、ビジネスの観点から見れば効率は良くないですし、だからこそ増えることはいいこと、とは言い切れないんですよ。


ーーとはいえ、今のマーケット的には「質より量」でやっているところもあるのかなと。


ツラニミズ:過去のアイドル戦国時代の歴史を遡った時に、今でも最前線で活動しているアイドルグループに紐づいている要素は“複数のグループを運営していること”なんです。48グループ、坂道、ハロプロ、WACKは、1グループだけじゃなくて、複数のグループを運用して抱えていますよね。結局、複数のチャネルを持つことによって、1個のチャネルで引っかかった人がクロスでファンを共有化できて、違うところに流していくことができるから効率がいい。ただし、量を増やせばいいということではなくて、共通の思想やクリエイティブコントロールができていることを踏まえたうえでチャネルが増えることが重要な気がしていて。質を伴った量が増えることが大事なのかなと思います。


ーー質のある量を作ることによって、自分たちの経済圏を持てるし、新しいことをしようと思っても、理解のある人たちが最初から支えてくれる環境ができるからこそ、冒険もしやすいのかもしれません。


ツラニミズ:そうですね。ファンの土壌があるからこそ発射角が高くできる、ということにも紐づいてくると思います。


ーーそもそも、AZKiのマネージャーとして活動するにあたって、最初に描いていたアーティスト像はどんなものだったんですか?


ツラニミズ:これは本人とも1番はじめに話したことで、ちょっとメタ的な話になってくるんですけど、当時のVTuberって、結構設定が分厚かったんですよ。だからこそ、その決めごとをあえて作らないようにしよう、と。アーティスト像が固まるのって圧倒的に分厚いコンテキストをぶつけて理解してもらうパターンと、ファンが作るパターンの両軸があると思っていて、1回目か2回目の打ち合わせをした後、すぐにAZKiから「せっかくやるんだったらオリジナル曲を作りたい」って連絡があって、なるほどなーと思いました。デビュー直後に12曲作ったあの期間って、1番最初は想定していなくて。なんだったらちょっと時間を見て、ゆっくりオリジナル曲とかを考えていこうと思っていたんですけど、本人からそういう話が来たので「ライブを2時間オリジナル曲でやれるとこまで、一気に詰めていったほうがいいな」と思ったんです。


 あと、ちょうどそのタイミングでキズナアイさんのライブが発表されたこともあって、今後はVTuberのリアルイベントが増えてきて、VSingerとしてのライブも多くなっていくと考えたときに、アーティスト像を作り上げるうえで1番重要なコンテンツとして、人の楽曲(カバー)よりも、自分たちの楽曲があることはめちゃくちゃ重要だよね、とも話しました。


ーー確かにあの時期くらいから、VTuberのリアルイベントが増え始めてきた印象がありますね


ツラニミズ:ライブをいっぱいやってても、持ち曲が少ないと、それらを全部歌って終わりになっちゃうんですよね。それって現場を重ねるにあたってのバリューに繋がらないじゃないですか。僕は、ライブに行って「この曲今日は聞けなかったな」「この曲久しぶりに聞いたらやっぱよかったな」みたいな会話がファンの間で生まれることがめちゃくちゃ重要だと思っていて、そこを作るためには、曲の量を増やさないといけないと。


 そもそもの話をすると「1人ひとりに音楽を届けて、ちゃんとその人たちの心に残る存在になり続けよう」という話をしたうえで「ライブごとに表情が変えれるような空気感を作るために、いっぱい曲を作ろうか」とも話した記憶があります。


・「この業界って、向き合っているのは誰かというのを感じにくい」
ーーそこから現在に至るまで、ツラニミズさんがAZKiさんをマネジメントするにあたって、一番大事にしていることはなんでしょう?


ツラニミズ:最終的にAZKiと僕が「Vのカルチャーってどうあるべきなんだっけ」「開拓者(AZKiファンの総称)とこういうことしたいよね」「開拓者って何すれば喜ぶかな」みたいに、目が外に向いていることだと思うんですよ。そこがなんとかうまくやれてる秘訣だと思っていて。なにか良くないことが起こった時に、内に敵を作ろうとしたりとか、内の人じゃないとわからないみたいな話をしがちじゃないですか。でも、僕らはそれをせずに、外に向けた話ばかりしているからこそ、ブレずに進むことができているのかもしれません。


ーーその価値観の合致って、はじめからそうだったんですか。もしくは、どこかで同じ方向を目指し始めたんですか?


ツラニミズ:はじめからですね。そして、それが唯一お互いに合わせようとしてる部分なんだと思います。


ーー1番重要な部分が噛み合ってるってすごいですね。どんなに上手くいってても、そこが食い違うと一気にダメになる気がします。


ツラニミズ:たしかに。結局この業界って、向き合っているのは誰かというのを感じにくいじゃないですか。でも、ライブすることによって、それをしっかり強く感じられるし、そういうことを当たり前にやっていると、1つひとつの数字が、数字じゃなくてちゃんと人として見えてくる部分があって、やっぱりそこが大事だと思うんですよ。そういうことを、オリジナル楽曲に紐付けて考え始めることが多くて。それが瀬名さん(瀬名航さん)の曲きっかけであることがほとんどなんですよ。「リアルメランコリー」ができた時も、「今後、アンチや僻み、パフォーマンスに対してどうみたいな声って絶対出てくるけど、何を言われてもブレない軸となる考えはしっかり持ってないとやっていけないよね」という話をしたり、「いのち」のタイミングで、「VTuberの終わり方ってどうあるべきなのか」という話もしました。


ーー曲を通して瀬名さんにカウンセリングしてもらっていて、ツラニミズさんの考え方を翻訳してAZKiさんに伝えている部分もあると。


ツラニミズ:それはあるかもしれません(笑)。いま瀬名さんに作ってもらってる曲も、「夢とか音楽を届けることはもちろん重要だけど、本音としてはお金がないと死んじゃうわけで、どっちも大事にしていかなければいけないし、そうしているからこそ、いま貰えてるお金のありがたみがわかるし、そこに対してのバリューはいま最適なんだっけ」みたいな話を最近するようになっています。お互いが曲ができるまでの過程の中で、曲をきっかけに今のあり方を考える、みたいなケースが多いのかもしれません。


ーー以前、AZKiさんに対して「歌唱力やパフォーマンスの面で他とは比べられない才能を持っている」と語っていましたが、その辺を具体的に教えていただけますか?


ツラニミズ:「感情で殴る」というパフォーマンスで言えば、かなり上に行ける気がしてて。逆に言うと、声量で叩き潰すみたいな歌い方ってあまり得意じゃないんですけど、感情に訴えかけるような歌い方はすごく得意だし、1番すごいのは同じ曲が同じ曲に聞こえないパフォーマンス力だと思います。ライブの度に聞こえ方が違うのはすごくいいし、僕はだいたいワンマンライブの時はオペレーションしながら泣いてるんですけど、毎回泣く曲が違うんですよね。これって大森靖子さんのライブを観ている時と同じなんですよ(笑)。


ーー何が共通しているんでしょう?


ツラニミズ:その時の自分のコンディションや、本人が届けたい思いが交わった時によって、ライブごとに刺さる曲が違うみたいなことがあって。それって開拓者もそう感じていると思うんですが、いつかのライブの時に「Fake.Fake.Fake」でに号泣してる開拓者がいて、「どういう状況!?」って思ったりしたけど、よく考えればすごく理解できるんですよね。今日は「Fake.Fake.Fake」なのか、次は「from A to Z」か、やっぱり今日は「いのち」なんだ、みたいなのって、開拓者の中でもバラバラなんですよ。そういうパフォーマンスができる人って、自分がライブ行く中でも数少ないなと思うし、彼女の1番の魅力でもあると思うんですよね。


ーー受け手がそれぞれの曲やライブによって刺さり方が違うって「オンリーワンだ」と感じさせる能力がめちゃくちゃ高いってことですよね。個人的にはライブごとのセットリストの組み方も重要なのかなとも思ったんですが、どういうことを意識して組んでいるんですか?


ツラニミズ:セトリの組み方は、一旦僕の方で考えて、AZKiに「どう思う?」って投げて、それで最終決定するって流れなんですけど、ライブという1本の流れの中で、ちゃんと意味を持たせたい時にはより慎重に組むようにしています。フロアコントロールって、DJイベントに近いんですよ。自分の時間で一旦上げて下げてもう一回上げるとか、前後のDJがこうだからこうみたいな組み方に近くて、対バン形式やワンマンライブの時に届けたいメッセージを、ある程度頭とお尻に持っていくとか。1番意識しているのは、どれだけ自分が好きなアーティストでも2時間のライブでダレると思うので、そうさせないような組み方を意識的にやってます。


 そういう意味では、昨年の12月の『AZ輪廻』(4thワンマンライブ)の時に、意識的にやったのは「フレーフレーLOVE」のカバーをした時ですね。あれは、そらさん(ときのそら)の曲を1曲カバーしたいと2人で話していた時に、歌うだけじゃなくて一音目が流れた瞬間にドカーンってなる状態を作るために、どの曲がいいんだろうって話した結果、選んだ曲でした。あの曲ってあのイントロの衝撃があるから曲が成り立っている、という構成だと思うんですよ。


ーー開拓者からすると、楽曲の数が多いとカバー曲をやると思わないんですよ。だからこそあのカバーは刺さったし、曲の数が多いことのメリットを感じました。今まで開催してきたライブで、一番印象深かったものはどれですか?


ツラニミズ:一番印象深かったのは2ndワンマンライブですね。これまでのライブや生放送では、こんなこと話そうねっていう大筋を伝えて、ある程度台本に沿って話していました。このライブでは、それを打ち破って、彼女が自分の言葉でめちゃくちゃ喋りだしたんですよ。もちろん、そうなって欲しいとは思ってたんですけど、予想の倍くらいのスピードで実現した、重要なライブでした。


ーー2ndで早々に実現したのはすごいですね。あと、VTuberだからこそ感じる、マネジメントにおける大変な部分とは?


ツラニミズ:100kmマラソンできない、かくれんぼができない、リリース日に渋谷でビラを配れない、ゲリラ路上ライブができない……。


ーーほぼWACKじゃないですか(笑)。ビラ配りやかくれんぼは、誰かがモニターを持てばできそうですが。


ツラニミズ:でも、そこに人だかりできるイメージはないですよね(笑)。でも、本当にマラソンしたすぎて、中止になった5thライブのPRに関しても、スタッフが50km走って、それをAZKiと開拓者が迎えて、スタッフが「Creating world」を歌って終わるっていう話はしていました。しとにかくそういうパワープレイができないわけだ、じゃあどうしようと思って生まれたのが「耐久AZKi」だったり、「音楽を止めるな」みたいな24時間企画なんです。


ーー表現のフォーマットが違うからこそ、リスペクトはあっても模倣にならないところが絶妙です。ちなみに、ツラニミズさんが今後実現したいことは?


ツラニミズ:ツアーをやりたいんですよね。3rdライブのことを思い出した時に、エンタスラストっていう思いがAZKiにも開拓者にもあったからすごくいいライブになったのかなと思ったんですよ。それってある種ツアーファイナルに近いなと思って、ツアーをやりたいという気持ちがより強くなったんです。ツアーの過程の中でみんなが成長したり考えたりして、それをファイナルで答え合わせできればいいなと思っていて。エモいライブってどうやって作るんだろうってずっと考えた時期があったんですけど、結局は思いが乗ってる量だと思うんですよ。ステージに立ってる人と、ステージを見てる人両方の思いがぶつかるからこそ生まれるものであって、単発のライブだと作りにくいんですよね。だから全国を周って、馴染みのあるご当地の人をゲストに呼んで、良いツアーファイナルをやりたいなと。


ーーそれは3rdが終わったタイミングで思ったんですか?


ツラニミズ:その時も軽い話はしたけど、本気でやりたいと思ったのは今年に入ってからですね。


ーー全国ツアーのような大きな目標って、活動当初に掲げることが多いと思うんですが、やっていく上で出てきたんですね。


ツラニミズ:なんとなく最終的にこうなりたいみたいに描いている部分はお互いあるんですけど、この文化自体の変化がすごく激しいから、始めに決めているものからアジャストしていかないと、古いものになるなと思っていて。そうなった時に既存のカルチャーでは当たり前だけど、V界隈では新しいことっていっぱいあるじゃないですか。新しいことのカテゴリーのフォルダーに入っていることって、半年単位で変わっていってるんですよ。なので、活動していく上で目標を見つけていったり、突然湧き出したりすることって、大事なことだと思ってます。


・「数十年ぶりになにか新しいものが生まれるんじゃないか」
ーーVTuberをプロデュースしてみたい、マネージャーとして一蓮托生でなにかを作り上げていきたい人って、昔と比べて今だと結構いると思っているんですが、そういう人たちに向けてなにかアドバイスだったり、伝えたいことなどありますか?


ツラニミズ:とりあえず私生活はなくなります。労働時間が長いとかそういう話ではなくて、勤務時間以外の時も常に仕事のことを考えてるし、そういう意味では「好き」だけでできることでもないと思っています。あと、個人的に「自分が携わっているコンテンツの価値を自分で決めちゃう人」は向いてないのかなとは思います。物事を測る時に、最終判断はあくまでファンという考え方を持たないと難しいかも。


ーー5thライブも新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったりと、バーチャルの業界ではあるものの、小さくない打撃を受けている状況だと思います。それを踏まえて、収束後のVカルチャーや、もう少し広い視点でこうなるかもしれないと予想していることはありますか?


ツラニミズ:色んな側面があると思っています。ポジティブな話をすれば、ビジネスの在り方やコンテンツの在り方、カルチャーの在り方を見直す時期でもあるなと。そもそも今までの体制ってこれでよかったんだっけ、正しかったんだっけ、これってリモートでもよかったんじゃないかと改めて考えるきっかけでもあるし、ここから新しいものが生まれてくるんでしょうね。コロナ後に何ができるのか、何を残せて何が残らなそうなのかというのは、最近すごく考えます。


ーーツラニミズさんの考える「残るもの」と「残らないもの」とは?


ツラニミズ:ライブや現場は残ると思うんですけど、それをやる箱の在り方は変わってくるはず。個人的には、少し不謹慎かもしれないんですけど、音楽の歴史における「サマー・オブ・ラブ」のようなことが起こるかなと。あれって広義的には世界的なフラストレーションに対して、カウンターカルチャーとして生まれたものでもあるわけじゃないですか。その延長線上で考えると、クラブに行けない、ライブに行けない、でも音楽を続けるって、この数十年で1回も起こってこなかった無理難題を課されているからこそ、そこから生まれる新たな音楽の形やジャンルが、この機会に生まれてくるんだろうなって気がしていて。ポジティブに考えれば、そういう意味で可能性が広がる部分はあると思います。


ーー確かに新たなジャンルが生まれるという意味では、コロナは1つの大きなきっかけになりそうですね。


ツラニミズ:元々カウンターカルチャー的な要素が強い一面があった音楽が、カウンターするものがなくなってきて、カウンターカルチャーじゃなくなってきてるじゃないですか。だからコロナに対しては、完全にカウンターカルチャーとしてクリエイティブ制作ができる気がして。数十年ぶりになにか新しいものが生まれるんじゃないかという予感があるからこそ、この辛い時期を頑張れているところはあります。


ーーもちろん精神的に辛い部分はあると思うんですけど、そこから何かを生み出そうとする時に立場がはっきりさせやすいと。


ツラニミズ:こういう動きって、日本にいるからあんまり感じないだけで、たぶん世界の色んなとこにいると、どこどこで紛争が起きていて、それに対してのカウンターみたいなことをしてる人ってたくさんいると思うんですよ。それは暴力的な行為じゃなくて、アートの領域に落とし込んで訴える創作活動をしている人がいる。ただ、日本人はそれを自分ごととして捉えている人は少ないと思っていて。でも今回のコロナは自分ごとなので、今までよりももっと刺さるし、もっと考えさせられるし、そういう意味ではすごいことが起こりそうだなと思います。


(森山ド・ロ)