目下かなり評判のいい今年の大河ドラマ『麒麟がくる』だが、このたびの新型コロナウイルスの影響で撮影スケジュールは大幅に遅延しているという。6月7日放送回をもってしばらく放送休止すると、番組公式サイトで発表された。
個人的には毎週かなり楽しみにしているドラマなので残念だが、状況が状況だけに仕方がない。ただ、7日放送分では、いよいよ桶狭間の戦いが描かれる。前回の5月31日放送回でも、いつもとは違う音楽とともに気合いの入った予告編が放送終了後に流れ、嫌でも次回が楽しみになってしまう作りになっていた。
桶狭間の顛末に心を惹かれつつ、ここまでの話の流れを反芻し、しばしの放送休止をしのぐ覚悟を抱いている同作ファンも多いに違いない。そうした大河ファンのために、NHK側もある番組編成を打ち出した。3週にわたり、戦国大河ドラマの特別番組を放送することにしたのだ。(文:松本ミゾレ)
21日に『国盗り物語』、28日に『利家とまつ』を特集
6月14日から、NHK総合では毎週日曜20時の大河枠(BSプレミアムの場合は18時)で特集番組『「麒麟がくる」までお待ちください 戦国大河ドラマ名場面スペシャル』を放送する。このラインナップが非常によい。
14日には『独眼竜政宗』。21日に『国盗り物語』。そして、28日には『利家とまつ』が大河の時間に復活する。先陣を切るのが大河ドラマ史上最高視聴率を生み、国民的なブームを生んだ『独眼竜政宗』ってのも良い。渡辺謙の出世作だ。
この放送の趣旨は、人気のあった大河ドラマの名場面集となっている。毎年、放送終了後に2週にわたる総集編を放送しているNHKの大河ドラマ枠。ノウハウはもともと高いレベルで培われてるため、名場面集の作りも決してチグハグなものではないはずだ。
さらに、上記3作に登場したキャストも出演するという。この辺りも誰が出るのか分からないが、今から楽しみだ。
大河作品の積み重ねこそが非常時対応につながった
僕はいち大河ドラマファンとして、そして『麒麟』ファンとしても、放送の一時休止は残念に感じている。それでなくても、今年はオリンピックが予定されていたことなどから、放送も全44話(予定)と少し短いので悔しい思いをしていた。
ただ、休止の理由が新型コロナウイルスであれば、これはもう文句は言えない。仕方がない措置だったのだ。
不幸中の幸いとも言うべきか、国内では今のところ、散発的なクラスターの発生はあるものの、全体的には感染者数が減ってきている。このままの調子でいけば、収録再開も近いことだろう。
それに、現行の『麒麟がくる』がやむなく休止となったときに、過去に放送されてきた大河ドラマが支流となって文字通り大河枠を支えるというのは何ともロマンを感じる。大河ドラマは作品ごとに別々の時間軸を舞台にしているが、俯瞰で見ればそれ自体が一つの大きな日本の歴史をエンタメ化したものでもあるからだ。
これまでの大河作品の積み重ねが、このような非常時にも対処が可能になるほどのリカバリーにつながったわけだから素晴らしいことだ。ついでに言えば、この名場面集の放送を見て、該当作品の新たなファンも誕生するかもしれない。
7月以降の放送がどうなるかについては具体的なアナウンスがないものの、作中でも「世が平らかになれば麒麟がくる」という台詞が登場する。平穏が戻れば、日曜の夜には自ずと"麒麟がくる"ことになるはずだ。