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SKY-HIとCreepy Nutsに聞く、“おうちでメトロック”の手応えとコロナ禍の過ごし方

2020年05月31日 12:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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 テレビ&ビデオエンターテインメント「ABEMA」が、5月23日朝11時から「TOKYO・OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL」、通称“メトロック”を“おうち”で楽しめる特別番組『おうちがフェス会場!メトロックライブ映像大放出11時間生放送』を独占生放送。世界&日本Twitterトレンドでダブル1位になったほか、総視聴数500万超えを記録した。


 同番組は、新型コロナウィルスの影響でイベント中止が相次ぎ、5月23日より開催予定だった「TOKYO・OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2020」も開催を断念したなか、「METROCK」の「少しでも音楽を楽しめるような機会を作りたい」という思いに賛同し、実現した特別番組。サバンナ・高橋茂雄、グランジ・遠山大輔がMCを務め、11時間にわたって、Official髭男dism、King Gnu、あいみょん、UVERworldなど、いま話題のアーティストたちの『METROCK2019』でのライブ映像を無料生配信した“MEET UP LIVE STAGE”のほか、スペシャル企画として、THE ORAL CIGARETTESやBiSHらがアーティストリモート出演する生トークプログラム“SPECIAL TALK ROOM”、そしてCreepy Nutsや夜の本気ダンス、SKY-HIらが出演し、「ABEMA」でしか見られないコラボライブや特別企画を披露する“STAY HOME LIVE STAGE”など盛りだくさんの内容が放送された。


 今回は、そんなSTAY HOME LIVE STAGEに出演したSKY-HIとCreepy-Nutsを取材。出演直後の彼らに、番組の感想やメトロックへの想いなどを語ってもらった。(編集部)


(参考:EXILEなどのライブを手がける藤本実に聞く“コロナ以降の演出”「参加型のライブがスタンダードになる」


■Creepy Nutsインタビュー


ーーリモートでのパフォーマンスは普段のライブと違うものになるかと思いますが、どうでしたか?


DJ松永(以下、松永):テンションが難しいですね。


R-指定:どうテンションを上げていいのかわからないですからね。お客さんが目の前にいて初めて、テンションがMAXになるので。


松永:無観客ライブとも違いますよね。家でシャワーを浴びて髪を乾かして、服を着て家出て、公共交通機関に乗って……みたいな一連の儀式を経てスイッチが入るんだと、このタイミングで気づきました(笑)。


ーーR-指定さんは外出自粛期間中、ドラマを一気見しているとのことですが、とくにお気に入りのジャンルは?


R-指定:昔の思い出に残ってるドラマを観まくってたんですけど、「俺、こんなラブコメ好きやったんや」と自分で気づきました。これまでは、基本的にホラーやSF、バイオレンスが好きって顔で生きてきたんですけど、ラブコメの方が全然好きだったことがわかりました(笑)。


ーー松永さんは料理に凝るようになったということで、渾身の料理があれば教えてください。


松永:福岡の先輩からいきなり「お前、魚捌けるよな?」って連絡が来て、発泡スチロールに入った魚が届いたんですよ。でも、実際はやったことなかったので、出刃包丁も買って、初めて三枚おろしに挑戦したんです。そうしたら自分で引くほど上手くできて。いま自慢してもいいですか?


ーーぜひ!


(松永、自身でおろした刺身の写真を見せる)


R-指定:おい、それほんまにお前が捌いたやつか? Googleの画像検索から引っ張ってきてないよな?


松永:いやいや、本当に俺がやったから! そしてこれが出刃包丁と捌く前のイサキです(また写真を見せる)。YouTubeでやり方を調べて、三枚におろして炙って……Twitterも検索履歴が「DJ松永 手先」「松永 器用」などで溢れています。気持ちいいね。


ーーラジオでもお話してましたが、きまぐれクックさんの動画などを観ていたとか。


松永:そうですね。めちゃくちゃ参考になりました。


ーーありがとうございます。今回のメトロックについて、中止の報を受けてまず思ったことを教えてください。


R-指定:大阪会場は僕の地元である堺市で、昨年出させてもらったときはすごく盛り上がっていて、そこを楽しみにしていただけに残念でした。とはいえ今回の事態は仕方ないことなので、次回以降また出演できることを楽しみにしています。


ーーお二人にとって、まず思い浮かぶメトロックの思い出とは?


R-指定:地元ということもあって、めちゃくちゃ地元の友だちが観にきてたのが印象的でした。自分たちのワンマンとか対バンライブならわかるんですけど、フェスで客席に知り合いがめっちゃおる、というのは不思議な感じでしたね。「高校のバスケ部の先輩おるやん」とか「地元の同級生の友だち見にきてるやん」みたいな。改めて地元でフェスがあるとこんな感じなんや、と楽しくなりました。


松永:弘中アナにインタビューしていただいた気がします。「芸能人だ!」って思いましたね。


ーーメトロックに限らず、来年の夏フェスが無事に開催されるとしたら、やってみたいことはありますか?


松永:新曲をいっぱい持っていきたいというのはありますね。俺らは持ち曲がそこまであるわけじゃないから、フェスで初見のお客さんに楽しんでもらえる曲でセットリストを組むと、代わり映えのないものになりがちで。だからもう1年間でいい曲をたくさん作って、次に見てもらえる時までに弾を込めておきたいです。


R-指定:スタメン総入れ替えとかできたら楽しいやろうなと思います。


ーーあと、「STAY HOME LIVE STAGE」内での松永さんのパフォーマンス、特に夜の本気ダンスとの「Movin’」のパートで、ターンテーブルに付かず椅子に座ったまま、というのがすごく面白かったです。あれはどういう風に考えて演出をしていったのでしょうか。


松永:あの曲はほんとに最後のスクラッチ以外やることがないので、その間ずっとターンテーブルに佇んでいるのもなんだかなと思って。そうなると必然的に見せ方を考えないといけなくなって、結果的に椅子に座ってくつろぐという形になりました(笑)。


ーー鏡を使った演出も面白かったです。あれは松永さんの発案ですか?


松永:あれはね……ガチガチにプロに入ってもらいました(笑)。演出は丸ごと考えてもらって、撮影も画角から全部指定で。


R-指定:やっぱり! お前が考えてるわけないと思ったわ(笑)。


ーー今回は「Movin’」のほかに、Creepy Nutsの曲として「グレートジャーニー」を披露していました。これは〈出どころなら堺市072〉というラインがあるからこそ、大阪の堺が会場になってるメトロックの思い出の曲としてチョイスした、というのもあるんですか?


R-指定:そうですね。あとは、ライブで全国行脚してるときの曲でもあるので、映像のなかだけでもライブしまくってる時期の気分になってほしいな、という思いを込めたのもあります。


ーー家にいる時間が長くて、いろんなクリエイティブに触れることも多いと思います。『ライムスター宇多丸の水曜 The NIGHT』では「この時期だからこそ湘南乃風を聴きたい」とお話もされていましたね。


R-指定:いま元気ない人が何を聴くべきかって、やっぱ湘南乃風ですよ。そんで、自粛が終わったらみんなで湘南の埠頭に繰り出して、迷惑かけない程度に楽しもうぜと。


ーーほかにお二人が夢中になったクリエイティブはありますか?


R-指定:いままで男として通ってきてなかったのが恥ずかしいし、般若さんになんて説明すればいいのかわからないくらい、知ってたのに見てない作品がありまして……『とんぼ』ってドラマなんですけど(笑)。般若さんの歌詞の中にもいっぱい出てきたし、気になってはいたんですけど、ようやく見ることができましたし、みんなが長渕剛さんに憧れる理由がわかりました。今のコンプラとか今のモラルでは全アウトなシーンがたくさんあるんですけど、それが今だからこそグッときたところもあります。あとはアニメの『犬夜叉』。曲が全部エイベックス縛りで、オープニングもエンディングもエイベックスなので、「あ、オープニングがhitomiでエンディングがDo As infinityや」と思ったら「次はエンディングが浜崎あゆみでオープニングが相川七瀬で、次のエンディングはBoAか!」みたいに、曲でブチアガれるんですよね。


松永:僕はRさんみたいに何かを見てるわけじゃないんですけど、引き続きラジオは聴いてますね。自分たちも番組をやっている(『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)』)んですけど、この期間って、まあ喋ることがないんですよ。でも、オードリーさんのラジオ(『オードリーのオールナイトニッポン』)は、ほぼフリートークなのに相変わらず毎週ずっと面白くて異常ですね。自分でもラジオをやり始めてから更に実感しますが、オードリーは凄すぎて、もう怖いです。


ーー最後に、ファンの方々に一言お願いします。


R-指定:この期間を経て、また生でライブができるときは、お互いに溜まったものを解放しましょうと言いたいですね。


■SKY-HIインタビュー


ーー本日のメトロックはどうでしたか?


SKY-HI:なんだかんだ色々と配信で出演することはあったので、今回も違和感なくパフォーマンスすることができました。クロストークだけは「いま入りたい!」みたいな間があっても気になって入れなかったりするんですけど、一緒にトークするアーティストがCreepy Nutsで助かりました。R-指定と最初に会ったのは10年くらい前だと考えると、感慨深いものがありますね。


SKY-HI:メトロックは「バチバチに取りに行くぞ」という感じで、気合入れたリハもしていたし「勝ち目しかない」という状態まで仕上げていて。ドラム・ギター・DJという編成やセットリストも作っていたので、中止が決まったときの失望っぷりったら、目も当てられないレベルでした。毎回ライブの時は、アカペラのところに楽器が合わさったり、ドラムとギターの掛け合いの上にラップを乗せたりとか、音源にないものを作っていくんですけど、今回もメトロック用の新ネタも2つ用意していたので、中止になったいまとなっては「一生蔵にいれておこう」という気持ちです。


ーーそう言わず、来年以降のフェスやメトロックに活かしてほしいです。


SKY-HI:そうですね。研鑽して損なことはないので、磨き続けていってお出ししたいな思います。とにかく今は来年以降を見据えないとしょうがないし、年内の動きについて早めに切り替えて動いていたおかげで、ライブだったりコンテンツの発表は立て続けにできると思います。共演のスタッフの方から「むしろコロナ禍のほうが活発に動いてるね」と言われて、複雑な気持ちではありますが(笑)。


ーーちなみに、SKY-HIさんにとってのメトロックとは?


SKY-HI:「ずっと出たかったけど出られなかった場所」ですね。毎年ツアーや他のライブとかぶることが多くて、なかなか難しかったんですよ。でも、去年のタイミングでは早いタイミングでお声がけいただいていたので、ツアースケジュールを組む際にも「ここは空けておこう」とすることができて、気合を入れて望もうと思っていたところなんです。


ーートークゾーンでは、先日初めてZoomで人狼をプレイしたという話がありました。オンラインでの遊びや飲み会のお供になるものはありますか?


SKY-HI:サントリーのハイボールですかね(笑)。人狼は初めてだったんですけど、自分のバンドやダンサーのみんな(SUPER FLYERS)とお酒を飲んでいることが多いですかね。


ーークロストークや他のインタビューでも、「一時的にコロナ鬱になったが、アウトプットをしているうちに持ち直してきた」という話がありました。日高さんにとって、音楽制作は元からセルフケア的な部分があるのでしょうか。


SKY-HI:唯一のメンタルケアと言っても過言ではないかもしれません。作っている間は余計なことが削ぎ落とされて没入する感覚になれるので。普通にしていると、考えることが一つや二つじゃなくなっちゃうんで、ポジティブに考えようとしすぎたり、後ろ向きなことが目についたり。それは精神的に安定した状態じゃないし、言ってしまえば、世の中全体が安定していないじゃないですか。


ーーたしかに。


SKY-HI:SNSも殺伐としてるというか荒んでるというか、今までの感覚ならなんでもなさそうなことがいろんなところで炎上しているのを見ていたり、顔の見えないところで石をぶつけ合うのがずっと目に入っちゃうから、どこへいっても……いや、どこもいけないからこそ、情報を入れることが前向きになることに直結しないので、排出する方向で前向きになるようにしています。走ってめちゃくちゃ疲れると何も考えられなくなる、みたいな状態に近いところはあるかもしれません。そういう意味で、物を作り上げて世の中に出す作業というのは、メンタルケアであり自尊心の担保につながるのかもしれないし、自分にとっても(自分は)何の人、どこの人であるかを考える時間になりました。


ーーSUPER FLYERSのみなさんとは定期的に飲んでいる、という話でしたが、彼らのようなミュージシャン・ダンサーたちはコロナ禍において大丈夫なのか、FLYERS(SKY-HIファンの総称)も気になっていると思います。


SKY-HI:レコーディングやクリエイションに直接関わっているタイプのミュージシャンや、家族のいる方は精神的には健康そうでしたけど、逆に独り身でプレイヤーとしての仕事が多い人は、最初にZoomで話したときも、目が死んでるとかじゃなくて、生者と死者で言えば概念的には死者に寄っているのではという雰囲気でしたね。もう腐臭さえするのではというくらいの表情でした。うーん……さすがに言い過ぎですかね(笑)。


ーーなるほど。どうしたらネガティブなことを払拭できるか、クリエイション以外に方法があれば教えてください。


SKY-HI:ネガティブになったときに「ネガティブなことを考えないようにしよう」と思うのって、かなり難しいじゃないですか。寝なきゃいけないのに寝れない、という感覚に近いというか。だから、時間や日にちを決めるなりして、一回ネガティブに入っちゃうのもありだと思います。僕も(この新型コロナの流行の影響で)一回沈んだときに、2日間なにもしない時間を過ごした結果、反動として曲を作り始めて、それが抜け出すきっかけにもなったので。自分では「気楽にネガティブ、思慮深くポジティブ」と言ってるんですが、そういう時間を作るのが大切だと思います。あとはこの期間中に目標を作るとかね。それがくだらないことでも意外と集中できて、モチベーションが上がったりするんですよ。自分の出身校の過去問を解く、とかでもいいかもしれないし。


ーー最後に、ファンの皆さんに一言お願いします。


SKY-HI:程度の差こそあれ、大変な時代だと思うんですよ。食うや食わずな人もいれば「ちょっと仕事遅れちゃってるよ」とか「遊びに行けないなー」レベルの人もいると思うんですが、いずれの人にとっても大変なのは間違いない。全世界の人が同じ状況にあるいま、踏ん張って乗り越えようみたいなのは刺さらないなと思っていて。曲でも言いましたけど、この事態が終わったからといって「戻る」わけじゃないですからね。「はい、いまから2019年の感じに戻してください」と言ってもそうもいかないし、永遠に何かの爪痕が残ったまま新しい時代が始まってしまうので、そのなかでも何をしていくかが重要だと思うんです。


 だからこそ、「こうやって生きていこう」と思う人は、それに向かって頑張ることを応援するし、決めてない人も新しい時代が始まるから、とりあえず波に乗っていれば、自分に合うものが見つかると思う。俺はそのなかでも、一生家にいても音楽を作り続けて生きていけるような気がしたので、それなりにみなさんがお家にいても楽しんでもらえるようなものを年内でも届けられる気がするので、気楽にネガティブ、思慮深くポジティブに、一緒に生きていきましょう。


(中村拓海)