2020年05月31日 09:31 弁護士ドットコム
恋愛リアリティー番組『テラスハウス』の出演者だった女子プロレスラー木村花さんが5月23日に死去したことを受け、ネットの誹謗中傷などに対して、法的措置も辞さないことを示唆する有名人が増えている。
【関連記事:「流産しろ」川崎希さん、ネット中傷に「発信者情報開示請求」 追い詰められる投稿主】
こうした中、自身の書き込みに不安を覚えた「中傷経験者」からの弁護士への相談件数も急増しているようだ。
弁護士ドットコムにも23日以降、「この内容は名誉毀損になるか」「書き込みから時間がたっているが、特定される可能性はあるか」といった投稿が10件以上寄せられている。
ある男性は、地域密着型の掲示板に知人を誹謗中傷する書き込みをしてしまったという。
一方、言論が制限されることも危惧しているという。
たとえば、弁護士ドットコムに寄せられた投稿にこんなものがあった。
ある女性は、『テラスハウス』で木村さんのアンチが増えるきっかけとして指摘されている「コスチューム事件」について、以下のような投稿をしたそうだ(実際の投稿では、A・Bに実名が入っていたとみられる)。
「Aさんも悪いところがあるけど、Aさんが逆の立場だったら怒らないと思います。私はAさんの優しいところに魅力を感じます!
でもBさんが大切な物だったので気持ちも分かりますが。。」
女性の書き込みが、本当にこの通りだったのなら、意見や感想にすぎず、なんの問題もないはずだ。
しかし、女性は「訴えられないか不安になってきました」「意見なのか、これも中傷になるのか悩みました」と記している。
報道やSNS世論によって、萎縮効果が起きていることを感じさせる。
このほか、言われた側はたまったものではないだろうが、
「スポーツ選手に下手くそと書き込んだ」
「食事をしたおそば屋さんの味が悪く、店員の態度も不快だったので、口コミサイトで星1つの評価をした」
といった投稿もあった。
「あまりにも誹謗中傷の範囲を広げてしまうと、自由な意見交換の場としてのネットがなくなってしまう。
批判・批評の範囲におさまるものもあるだろうし、ネガティブな意見がないと口コミサイトとしての価値はない。そこが萎縮してしまうとネットの機能が失われてしまう」(藤吉弁護士)
他方で、正当な批評・批判だったとしても、量が圧倒的に多かったり、本人に直接向けられたものだったりすれば、当事者にとって大きなストレスやプレッシャーになることが容易に想像できる。
こうした複雑さを考えると、法律やシステムでの対応にも限界がありそうだ。当たり前の話だが、ユーザーの意識が重要になってくる。
「少なくとも、厳しい意見をいう以上は名前を出しても言えるのか、というのは書く上での判断材料にしてほしい」と藤吉弁護士は語る。
【取材協力弁護士】
藤吉 修崇(ふじよし・のぶたか)弁護士
インターネット上の誹謗中傷問題を多く扱う弁護士。弁護士になる前に、芸能関係の仕事に携わっていたことや自身も誹謗中傷を受けたことがあることから、この問題に取り組むようになった。ユーチューブちゃんねるは登録者2万人を超えている。YouTubeちゃんねる「二番煎じと言われても」
https://youtube.owacon.moe/channel/UCG649yuz_0PadkYGKnJ1Tcw
事務所名:弁護士法人ATB
事務所URL:https://hibouchushou.net/