2020年05月30日 09:31 弁護士ドットコム
ようやく緊急事態宣言が解除された。ある種の解放感が広がりつつあるが、一方で、学生たちを取り巻く環境は激変したままだ。たとえば、早稲田大では、緊急事態宣言の解除後も、前期の授業はすべてオンラインでおこなう予定だ。ある学生は「キャンパスライフが失われている」とこぼす。
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緊急事態宣言の解除を受けて、早稲田大は、6月1日から、キャンパスの立ち入り禁止を段階的に解除していくと発表した。
ただし、すぐにすべての大学機能は再開せず、図書館・研究室などの利用は、対象者を区切りながら、徐々に解除していくとしている。
キャンパスライフが失われている――。早稲田大4年の奥村英治さん(仮名)は目下、就活中だ。昨年12月の「引退」まで軽音サークルに所属しており、その活動拠点は「学生会館」(いわゆるサークル棟)だった。
新型コロナの影響を受けて、この建物も立ち入り禁止状態となっている。
「毎日夜遅くまで、みんなで集まってセッションをしていました。家には寝に帰るくらい。ところが、新型コロナのせいで、僕たちの『居場所』が奪われました」
早稲田大は、課外活動について「安全を確保しながら段階的に規制を緩和する」としているが、サークル棟は「3密」になりやすいため、時間がかかりそうだ。
ほとんど単位をそろえた奥村さんだが、週1回はオンライン授業を受けている。オンライン授業には一長一短があるという。
「ライブ授業と録画配信の授業がおこなわれているんですが、録画配信のほうは、自分の好きな時間に何度でも視聴できるメリットがあります。新しい環境にいるということを前向きにとらえて、楽しんでいる人も少なくありません」
それではどんなデメリットがあるのだろうか。
「リアルだったら、わからないことはその場で聞けばいいのですが、オンラインはコミュニケーションが難しい。僕は、面白いと思った授業の先生には、ガツガツ質問にいくタイプなので、そういうふうに、人とのつながりも広げられません。
周りの友だちからは、接続トラブルもよく聞いています。また、高齢の教授だと、オンラインに馴染めないせいか、やけに緊張して何を言っているのかわからなかったり、ツールが使いこなくて授業がまるまる飛んだ、という話も聞きました」
こうした状況で、一部の学生たちから学費の減額をもとめる声もあがった。
しかし、早稲田大の田中愛治総長は5月5日、異例の声明を発表した。すべての学生を対象とした学費の一律減額を認めないというものだった。
ただし、学生あるいは保護者が経済的に困窮している場合に対応するため、「緊急支援金制度」(10万円)、「早大緊急奨学金」(40万円)をもうけた。
幸いにも、奥村さんの実家は、両親が健在で、すぐに授業料が払えないというわけではない。それでも、やはり大学の価値が「学費に見合っていない」と感じている。
「大学の価値は、授業内容を情報としてインストールすることだけではありません。
友人だったり、自分の価値観がどんどん変わっていく出会いだったり、サークル活動など思い出を作る場です。
お金に換算しづらいのですが、こうした価値が削ぎ落とされてしまっています」