トップへ

声優・大空直美がパン作り動画「お空ん家」に込めた想い「我々の仕事は声で無限に表現できる」【私たちのおうち時間#3】

2020年05月29日 18:02  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
●どんな演出でも声ひとつで空気感が作れる

新型コロナウイルス(COVID-19)の急速な感染拡大や症状の重さなどにより2020年4月7日、政府から「緊急事態宣言」が発出された。アニメ・ゲーム・声優業界ではこれを受け、アフレコやラジオ番組の収録ストップ、演劇やライブといった人が集まるイベントの開催延期・中止を多数のコンテンツが判断した。宣言が解除された今も、"いつも通り"からはまだまだ遠い状況が続く。

そんな状況下でも、リモートでの番組収録、YouTubeチャンネルの立ち上げや配信、Twitterでの近況報告やライブ配信など、“いま、自分ができること”を考え、行動に移している人たちがいる。その配信で「元気」「勇気」をもらっている人は少なくないだろう。筆者・M.TOKUもその一人だ。

マイナビニュースでは、そんな活動や込められた想いを多くの人に知ってもらうため、「私たちのおうち時間」企画を実施。それぞれの「おうち時間」企画を振り返ってもらったほか、自粛期間中の過ごし方、そして、こんな時だからこそ、自身が感じる“エンターテイメントのチカラ”について話を聞いた。

今回は、声優の大空直美に直撃。「お空ん家」と題し、パン作り動画を自身のナレーション付きでTwitterやInstagramにアップしている彼女にリモートでインタビューを行った(取材日は5月中旬)。
○●何もせずにはいられなくなって

――大空さんが自身のTwitter・Instagramで展開された「お空ん家」。この企画を実施しようと思ったのには、どのような背景があったのでしょうか?

私が出演する予定だったイベントが中止になったり延期になったりしていくなかで、Twitterなどで参加予定だった方から「しょうがないことだけど、寂しい」「行きたかった」という声が届いたんです。それを見たら、何もせずにはいられなくなって……! まずはイベントに来られなかった皆さんに、少し でも楽しい気持ちになって欲しいと思ったんです。それが、きっかけ でした。

――今回のパン作り動画は、基本的に顔出しなし、大空さん自身がナレーションをしながら紹介するというものでした。このアイデアは、ご自身で考えられたものでしたか?

そうですね。やはり、声優ならではのことができたらなと思いました。我々の仕事は声で無限に、なんぼでも表現ができると思っているんです。壮大な演出だったり、ほのぼのした雰囲気だったり……。どんな演出でも声ひとつで空気感が作れる。だから、顔出しはせず、ナレーションを入れるというスタイルにしました。あとは、恥ずかしながらズボラな性格なので、メイクはせず、なんなら部屋着で撮影できるようにしたかったというのも、理由のひとつですね(笑)。

――私も1話から拝見させていただきましたが、本当に声優さんならではだなと思う動画でした。

嬉しいです! それがテーマのひとつでもありましたので。

――動画編集もご自身で?

はい。大学で映像の勉強をしていたので、そのときのことを思い出しながら編集しました。

――ちなみに……なぜパン作りだったのでしょうか?

動画を見ていただいたなら分かると思うのですが、私、料理ができないんですよね(笑)。でも、今はご飯を買うためにおでかけするのも大変なので、それなら家にあるもので食べ物を生み出せたら、外出しなくてもいいと思って。あとは、「お家で過ごす時間が増えたけど、趣味もないし暇……」という、新しい趣味を求める声もいくつか聞こえてきていたので、「じゃあ、こんなのはどうですか」という形で提案できないかなと思ったんです。私のようにお料理ができない人でも、やれば楽しいということが伝わるかと思って! だから、パン作りに挑戦しました。

――なるほど! ただ、2話でいきなり訂正動画を上げられていたのには、思わず笑ってしまいました。

あの……はい(笑)。Twitterってやっぱりすごいですね、レスポンスがすぐに届くんです。パン作り自体は一日の出来事だったのですが、編集は動画をアップする前日、もしくは当日だったんですよ。だから、みなさんからのコメントを見て「あっ」と気づくことも多くて、補足を入れたり修正したり、テロップの言葉を変更したり……。本当に毎日、編集作業をしていました(笑)。

――あの訂正や「いつになったら生地をこね始めるのか」というランディング期間も含めて、非常に楽しく拝見しておりました(笑)。

皆さんからの「はよパン作れや!」っていうツッコミが嬉しかったです(笑)。私も「でしょうね!」と思いながら動画編集をやっていました。

☝️番組を作ってみました!不定期配信ツイッター番組お家ロケ企画『お空ん家』????第1話好評でしたら第2段もやってみようと思います☺︎????????????#お空ん家 pic.twitter.com/zmAigyawy9— 大空直美 (@osorasan703) 2020年4月14日

○●BGMひとつでも印象は変わる

――続いて「お空ん家」企画をやってみて、難しかった点や学んだことを教えてください。

まず、パン作りに関する反省なんですけど……。ほとんど料理をやったことがない初心者ということをもっと自覚すべきでした。レシピを見ながら作っていったのですが、初心者すぎて、ひとつひとつの言葉が暗号のように思えて。読み解きながら推理して作っちゃったので、色々と大変な事が起きてしまいました(笑)。今の世の中なら、パンの作り方を紹介する分かりやすい動画だってあるだろうに。見切り発車はよくないと思いました。

――その見切り発車があったからこそ、味のある動画になったと思います(笑)。

そう言っていただけると助かります(笑)。あとは、動画編集をやってみて、色々な発見がありました。ひとつのシーンを演出するだけでも、BGMひとつで印象は変わるし、入れたいと思う声も変わるんですよね。現場では、ディレクターの方や音響監督さんが「そっちじゃなくてこういう方向でください」というディレクションをされることがあります。そういう時、これまでは「あ、これではダメなのか」と思うこともありました。でも、今回動画編集をしたことで、「ダメ」じゃなくて「こういうパターンも聞きたい」っていう場合もあったんじゃないかなって思えて。生意気かもしれないですが、制作される方々の気持ちにちょっと気づけたかもしれません。すごく勉強になりました。

――変な話ですが、こういう機会があったからこそ、気づけた。

そうですね。「みんなに楽しい気持ちになって欲しい」と思って始めたことが、いつの間にか自分のチカラになりました。始めてみて本当によかったです。

――パン作り動画は完結しましたが、次に同じような企画をやるなら、どんなことをしたいですか?

私、1話のときに「おうち時間が豊かになるような趣味を提案する」というようなことを言っていて……。だから、おうちでできる趣味を増やしたいなと思っています。だいぶ前にレンジで陶芸ができるというキットを購入したので、それをやろうかな。あとは、大空家の中には不思議スポットがたくさんあるので、そこを紹介するなんて動画も楽しそうです!

――不思議スポット……?

不思議というか、変というか……。例えば、母が趣味でアボカドの種を水につけ始めて、芽が出るかどうかを実験しているんです。そういう大空家の謎を探検しながら紹介するっていうのもやってみたいです。

――それは面白そうです! ある程度日常が戻ってきてからも、そういう企画をやろうという気持ちはございますか?

私は編集作業が遅いので、不定期配信ならやっていけそうだなと思います。特番という気持ちで1クールに1回とか(笑)。でも企画を考えるとワクワクしている気持ちもあるので、できる限りはやりたいです。

●心に元気がないと健康って言えるのかな
○●エンタメに触れて、心を元気に

――自粛期間中は家で過ごす時間が増えたかと思います。パン作りや動画編集などもされていますが、その他、家ではどのように過ごされていますか?

8割くらい動画編集の作業をしていました。パソコンじゃなくてスマホで全部編集しているのですが、ゴロゴロしながら編集作業をやっていましたね。それ以外だと、マンガや本を読んだりアニメや映画を観たり……とにかくエンタメに触れて、心を元気にしていました。

――エンタメに触れて心を元気にするという表現、素敵です。ちなみにどのような作品をご覧になっていましたか。

『犬夜叉』を一気見しました。

――最近、殺生丸と犬夜叉の娘たちをメインキャラクターとした新しい物語が始まることが発表されましたね。

激アツですよね! 『犬夜叉』は子供の頃に読んでいた作品なのですが、大人になってから読むと、また違った面白さがあると感じました。あとは、『5秒童話』ってマンガが先の読めないストーリー展開で、引き込まれましたね。あとは『Dr.STONE』! バラエティ番組で紹介されていたので気になって読んでみたら、ハマっちゃいました! あとは、ドラマなんかも観ていて……。『JIN-仁-』とか! 一度観たことのある作品を見返すことも多かったです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は傑作ですね。

――ロマンを感じますよね! 私も大好きです。

ですね! 私、「うん、完璧だ」って言いながら寝ましたもん(笑)。

――なるほど(笑)。その他、この自粛期間中に何かしたことはございますか?

仲の良い友達とオンラインボードゲームをやっています。先輩に「ボードゲームアリーナ」というオンラインで色々なゲームができるサービスがあると聞いたので利用してみたら、12時間くらいぶっ続けでやっていました(笑)。お友達とオンラインでボードゲームって想像できなかったのですが、すごく楽しかったのでオススメです!

――Twitterで藤井ゆきよさんのお誕生日をお祝いされているのも拝見しました。

そうなんです! オンラインバースデーを企画してやってみました。その日の仕事の帰り道にバースデーケーキを買って準備をしたんです。画面の向こうのゆきよさんと、参加している後輩たちみんなで24時になった瞬間に電気を消して、「ハッピーバースデー」を歌って、「ローソクを吹き消してください」と言って、画面に息を吹きかけてもらう。そしたら、私が火を消して、「(息が)届きましたー!!」っていう感じで、お祝いしました。

――素敵な企画です!

ゆきよさんもすごく喜んでくれました! オンラインでもローソクの火を消すことってできるんですね!。

――工夫次第で色々なことができる。

この期間に色々な人がいろんな楽しいことを企画されていて、すごいなーって思っています!
○●「エンタメ」は人の心に寄り添えるチカラがある

――企画という点でいえば、大空さんと同じように、自粛期間中に動画をアップされたり、朗読をされたり、オンラインでお芝居をされたりしている同業者の方がいらっしゃいました。その中でも大空さんは印象に残っている企画はありますか?

私がやっているラジオの相方でもある小澤亜李ちゃんが、料理の動画をブログにアップしていたのですが、それがとにかくオシャレ! 彼女は私とは違って料理ができるし、編集のセンスも半端ない。ふわふわのスフレパンケーキが朝日に照らされて、モデルさんの動画みたいにオシャレだった。そのうえ、彼女の素敵なナレーションも入って、癒やされるし元気にもなる。それに、料理ができる人ってアイテム数がとにかく多いんだということにも気づきました。動画を観ていたら、小さな泡だて器が出てきたり、粉をふるいにかけるうえでまた茶こしみたいにできるものが出てきて……。次元が違うと思いましたが、面白かったです。

あとは、同じ事務所の先輩である金子有希さんのYouTubeチャンネル! すごくアットホームな感じで、まるで一対一でお話しているみたいな感覚になれるんですよね。「あのねー」みたいな感じで語り掛けてくれるのが、すごく嬉しい。声優の現場で使っているヘッドフォンの紹介など、ためになることもいっぱいお話されているので、アップされるのを楽しみにしています。

――実は今回の企画で鈴木みのりさんにもお話をうかがい同様の質問をしたのですが……そのときに大空さんの名前が挙がりました。

なんと! みのりちゃんーーー!! みのりちゃんが観てくれていたなんて嬉しい! 今回の企画は同業者、特に女性声優さんが「観ているよ」って言ってくれるんです。それもすごく嬉しくて、編集作業もより頑張れました!

――ここまで自粛期間でやられていることなどを中心にうかがってきましたが、この先、ある程度日常が戻ってきたらどのようなことをやりたいですか?

うーん……とにかくいっぱい仕事がしたいです。もう仕事が好きで好きで仕方ないんですよ。あとは中止になったり延期になったりしたイベントの代わりになるもので、皆さんにもお会いしたいですね。プライベートな面でいえば、先輩とピザを一緒に作る約束をしています! 私のパン作り動画を見てくださって、「ピザが作れるから一緒にやろう」と言ってくださったんですよ。今回の企画で学んだことを生かして、ピザを作って、そしてピザパーティーをやりたいですね。

――自粛期間中にそういう企画をやったからこそ生まれた繋がりですね!

本当に色々なことに繋がっています。先輩もそうだし、亜李ちゃんも動画を見て「料理を教えたい!」って言ってくれました。発信することで繋がるということを実感しました。

――先ほど大空さんから「エンタメに触れて、心を元気にした」というお言葉がありました。私も同じ体験をしております。そんな「エンターテインメント(エンタメ)」に対して、大空さんはどのような想いを持っていらっしゃるか、教えていただけますか?

この自粛期間中に色々な作品に触れて、改めて「エンタメのチカラ」ってすごいなと感じています。人間って、体と心でできていると私は思うんですよ。体がすこぶる元気でも、心に元気がないと健康って言えるのかなって思うこともあります。私は、辛い時であっても夢中になれる作品に飛び込むと、ワクワクしたりエネルギーをもらったりしてきました。だから、「エンタメ」には人の心に寄り添って、支える力があるんじゃないかな。そう信じています。

私はそんな「エンタメ」の世界が好きで、この業界に入ってきました。「エンタメ」に携わるひとりとして、少しでもみんなの心の助けになって、楽しんでもらいたい。そういう仕事や活動をしていきたいと思っています。(M.TOKU )