トップへ

『ストーリー・オブ・マイライフ』は公開日決定、『るろ剣』は延期 一喜一憂のコロナ後の映画興行

2020年05月28日 20:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

 5月25日、最後まで残っていた東京、神奈川、千葉、埼玉、北海道での緊急事態宣言も解除され、該当地域の映画館もようやく再開の準備に入った。都、県、道によって対応は異なるが、映画館がもっとも集中する東京都では各業種の活動再開までのステップごとのロードマップを作成。映画館は次の段階となるステップ2に仕分けされている。各ステップは基本2週間単位、場合によっては1週間単位で「状況を評価」「段階的に実施」とのこと。東京都のロードマップに関する次の会見は5月29日金曜日が予定されている。つまり、東京がステップ2に入るのはどんなに早くてもその翌日の5月30日土曜日ということになる。


参考:5週ぶりランキング発表も夜明けはまだ先 命運を担うのは、米国も日本もワーナーに?


 ポイントは2つ。各自治体から業種別の営業再開のガイドラインを示しているように、映画館も再開にあたってはかなり厳しいウイルス対策が必要とされる。もっとも、映画業界としてもこれまで他国からも報告のない「映画館におけるクラスター発生」だけはなんとしても避けたいわけで、ウイルス対策に関しては行政から言われなくても最善を尽くすというコンセンサスができあっているはずだ。具体的には、館内でのマスク着用、人と人の距離の徹底、座席では左右一席ずつ空けて使用、というのがしばらくスタンダードとなっていくだろう。


 もう一つは、緊急事態宣言が解除されたことで、もはや休業補償の対象ではなく、またこれまで同様に、今後もいつ営業再開しても法的には罰則の対象にはならないということ。おそらく都内のメジャーのシネコン・チェーンは横並びでの再開になるだろうが、独立系の映画館ではそれぞれ独自の判断で再開に向けて準備を進めている。今のところ、早いところでは5月30日土曜日からの営業再開を予定していて、映画サービスデーとなる6月1日月曜日を営業再開の目安としている映画館も複数確認することができる。そして、その週にはメジャーのシネコン・チェーンもすべて営業再開となる見込みだ。


 これまで本コラムで再三述べてきたように、相次ぐ新作公開延期によってロードショー館でもしばらくは旧作の上映が中心となっていくだろうが、朗報も入ってきた。まだ東京の映画館が再開している見込みはない5月29日、イオンエンターテイメント配給の『ブラッドショット』がパンデミック後の外国映画のメジャー作品として最初の新作公開となる。同作のアメリカ公開はパンデミック直前の3月13日。その直後から段階的に各州で映画館閉鎖に入ったこともあり、公開から5日後の3月18日にPVOD作品として配信リリースされることが発表。3月24日にアメリカの各配信サービスでリリースされて以降、配信で好調な成績を収めている。


 続いて、ソニー・ピクチャーズは6月12日に今年の賞レースでも話題をさらった『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を全国128館で公開する。当初から予定されていた規模での公開という意味では、日本映画を含めて、実質的に本作がパンデミック後初の「全国公開メジャー作品」になりそうだ。


 一方、前週のコラム(5週ぶりランキング発表も夜明けはまだ先 命運を担うのは、米国も日本もワーナーに?)でも触れた7月3日公開予定だった『るろうに剣心 最終章 The Final』と8月7日公開予定だった『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は、来年のゴールデンウィークを新たな公開時期の目安に、公開延期が発表となった。理由はパンデミックにともなう作品の仕上げ作業の遅れと、「公開に至る様々な準備」を行うことができなかったためとのこと。数ヶ月ではなく大幅な公開延期となった背景には、既に公開延期となっているワーナーの他作品との調整、出演者たちのプロモーション・スケジュールの調整などのほか、製作予算や製作規模からも大ヒットさせることが前提の社運がかかったプロジェクトを、一席ずつ席を空けた劇場で公開するわけにはいかないという事情もうかがえる。


 今年は学生の夏休みも大幅に短縮されるとのことなので、特にティーン向けの作品にとって重要な「夏休み興行」そのものが成り立たなくなってしまうことが見込まれる。ウイルス対策やスケジュール調整だけではなく、映画興行にとって依然問題は山積みだ。(宇野維正)