今回の外出自粛を機に、日本でもオンライン授業を受ける子どもが増えている。『ガイアの夜明け』(テレビ東京)が5月26日放送回で、日本の"オンライン授業の遅れ"を取り上げると、ネット上で話題になった。番組では、アメリカ、イギリス、中国の都市部でオンライン授業に取り組む様子を紹介。一方、日本については
「教室でのデジタル機器の使用が多い国、日本はOECD31か国中最下位(上位はデンマーク、スウェーデン等)」
「日本の各自治体では、オンライン授業を導入できた自治体はわずか5%(4月16日時点)」
というデータが示された。これにツイッター上では「先進国で底辺じゃないか」「日本のオンライン授業が遅れてるのは絶望的。子供達が犠牲になってる」などと危機感を募らせる投稿が相次いだ。(文:okei)
「もう紙の教科書なんて使っていない」とニューヨークの中学教諭
紹介された国の中で特に進んだ印象を受けたのが、アメリカだ。ルイジアナ州の小学校では、オンラインで授業だけでなくバースデーソングを歌ってクラスメイトをお祝い。ニューヨークの公立中学の先生にいたっては、自宅からオンライン授業を行っており、生徒たちも慣れた様子で授業に参加していた。この先生は、
「もう紙でできた教科書なんて使っていないわ。デジタルでも普通の教科書と同じ内容で対話もできて、動画も見られるのよ」
と語る。アメリカでは、10年前のオバマ政権時代からオンライン教育を積極的に取り入れ、国を挙げてデジタル教育を推し進めてきたという。
また、中国・上海では2月17日から小中学校で一斉休校が始まったが、そのわずか2週間後に、すべての学校でオンライン授業が開始された。もともと学校と家庭をつなぐコミュニケーション用のアプリがあり、それでオンライン授業ができるよう、民間のベンチャー企業が開発を急いだという。生徒の手書き答案(算数)をAIが瞬時に採点するなど、先生の負担を減らす工夫もあった。驚くことに、これは上海の小中学校のおよそ8割で導入しているという。
先生の負担増が課題?「先生がそれぞれ動画を作る必要はないのでは」との指摘も
一方、日本ではオンライン授業が進んでいない。主な理由は、端末やネット環境が整っていないことだという。学校開始の時期や授業の方法は全国的に地域差がある。地元テレビ局と連携して授業を放送するなど、それぞれの地域で工夫して行っているが「課題が出されて、そのまま」という保護者からの不満も多い。
オンライン授業モデル校となっている墨田区の公立中学校では、先生たちがオンライン授業の動画制作をするなどして模索中だ。ベテランの先生ほど機器操作に慣れていないという課題はあるものの、推進役の先生の動画は、生徒にも「わかりやすい」と好評だった。
これに視聴者からは「現場の先生方全員が各々動画を作る必要はないと思う」など、先生の負担を心配する声が相次いだ。民間のプロや文科省が作ったものを利用した方がいいという意見や、クオリティーに差があり子どもがかわいそう、といった声も出ている。
他方、日本が極端に遅れた印象となった番組に対して「各国のトップ地域や富裕層ばかり取材すればそうなるのは当たり前」などと各国の格差を含めた紹介がないことへ不満をもらす人もみられた。
確かに、日本でもすでに中高一貫の私立高校などではオンライン授業が行われており、熊本市の小学校ではビデオ会議システムを使った双方向の授業を行っているという。地域差はどこの国でもある問題だ。とはいえ、今回、オンライン授業の進捗を他国と比較したことで、教育に対する国の姿勢の差を感じ、残念な気持ちになった人が多かったのは確かだ。