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『鬼滅の刃』作者が女性でアンチが騒ぐのはミソジニーの現れか 「軽口」が誹謗中傷に発展するネットの危険性

2020年05月27日 07:20  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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週刊少年ジャンプの人気漫画『鬼滅の刃』(作:吾峠呼世晴)が5月18日に惜しまれながら最終回を迎えた。ところが、作者の吾峠氏が女性であることがネット記事で明かされると、波紋を広げることになった。

同作は、大正時代の日本を舞台に、身体破壊や人喰いなど残虐を極める「鬼」との戦いなど、少年誌ながらハードな描写もある。作者が男性だと思い込んでいた読者も多かったらしく、一部からは「幻滅」「ガッカリした」といった声も挙がっていた。しかし、少年誌の漫画家が女性であるということは、決してめずらしいことではない。(文:ふじいりょう)

今回のケースに一番近いのは"ハガレン"か


男性だと思っていた漫画家が実は女性だった、というケースで真っ先に思い当たるのは『金田一少年の事件簿』のさとうふみや氏。週刊少年マガジンで連載が決まったのにあたり、ペンネームを男性名にしたというのは有名な話だ。

また、ビッグコミックスピリッツ増刊IKKIなどで2001~18年と長期にわたって描かれていた『ドロヘドロ』は、"鬼滅"以上にグロテスクな描写もあったが、作者の林田球氏はやはり女性。このどちらも「女性だから」ということでファンから拒否反応があった、というのはあまりなかったように感じる。

吾峠氏のケースに一番近いのは、月刊少年ガンガンで連載されていた『鋼の錬金術師』の荒川弘先生だろうか。本人自画像がホルスタインで「雌牛だから男性と思われていたことがカルチャーショックだった」と後に語っている。読者側でも、一部ファンに批判的に捉えている反応はみられた。ただ、当時はSNSがなく、作者が女性であることが驚きであっても、それを理由に叩くことが社会問題化されるほどではなかった。

これらのケースと比較すると、"鬼滅"の場合は、週刊少年ジャンプという少年マンガ誌のトップランナーで掲載されているという点、昨年4月にアニメ放映が始まってさらに人気の火がついたという点が特徴として挙げられるだろう。アニメを観て、あとから漫画を追ったという人も多く、また「とりあえず『ジャンプ』に載っているから見た」という読者も相当数いる。

それだけライトなファンを抱えていて、一方でアンチも生まれる。このアンチの存在がたまたま「作者が女性だと明かされた」というトリガーで、ツイッター上に表出した捉えることもできそうだ。

「女性差別」とも捉えられる言葉を使っている人が多いのも事実

この動きを"女性蔑視""ミソジニー"などと批判することもできる。だが、作品の好き嫌いを表明することは自由だし、シリーズ累計発行部数が6000万部を突破するというメガヒット作品にはさまざまな読者がいて当然だ。今回の一件で"鬼滅"や"ジャンプ"の読者が狭量だと見るのは早計なのではないだろうか。

一方、ネット上の若いユーザーには、女性や性的マイノリティーを差別していると捉えられかねない言葉を簡単に使っている人が多いのも事実だ。彼らは本気で差別していたり、嫌悪の念があるわけではなく、他人をからかう程度の感覚でいるケースがほとんどだろう。こういった「軽口」がどこまで許容されるものなのかは、ネットを使う以前の教育の範疇だ。

いずれにしても、多くのSNSでは「他者を攻撃する投稿」は禁止されており、ツイッターも例外ではない。「規約をちゃんと読む」ということは忘れがちだが、ネット上の誹謗中傷が問題視される中、一度はしっかりと把握する必要があるのではないだろうか。