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Extreme E:電動SUV戦に向けシモーナら女性ドライバーたちが続々とプログラム入り

2020年05月26日 07:11  AUTOSPORT web

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2021年開幕予定の『Extreme E(エクストリームE)』向けドライバープログラム入りが発表されたシモーナ・デ・シルベストロ
地球上のあらゆる自然環境を舞台に、電動オフロードSUVを使用して争われる『Extreme E(エクストリームE)』だが、その開幕初年度となる2021年シーズンに向け独自の“ドライバーズプログラム”リストに、シモーナ・デ・シルベストロ、ERCヨーロッパ・ラリー選手権参戦のケイティ・マニングス、そしてARCオーストラリア・ラリー選手権2016年王者モリー・テイラーの加入が発表された。

 シリーズ創設初年度にはすでに公表済みの5カ国を回るカレンダーを予定するエクストリームEは、各ラウンドの特性をArctic(北極圏)、Glacier(氷河)、RainForest(熱帯雨林)、Desert(砂漠)、そしてOcean(海洋)に対応する開催地をそれぞれ選出してきた。また、イベントフォーマットやレース中継にも独自のコンセプトが採用され、映像配信は“ライブドキュメント”の形態となり、開催地各国では地球環境保全と啓蒙を狙った活動も予定されている。

 その独創的EVオフロード・シリーズに参戦するエントラントには、史上初の電動SUVを操るドライバー育成や、今後の潜在的エントラント候補や参戦チーム支援を目的に、オーガナイザーによる『ドライバープログラム』が設定され、すでにアンドレ・ロッテラーやセバスチャン・オジェなど各分野を代表するトップドライバーの登録がアナウンスされている。

 さらに2020年4月末には、1台のマシンに男女1名ずつのドライバーが『Odyssey 21(オデッセイ21)』と呼ばれるワンメイク車両に同乗し、2周のレースで乗り換えを行うという革新的なレースフォーマットの導入も発表された。

 こうした流れを受けシリーズのドライバープログラムには新たにシモーナ・デ・シルベストロの参加がアナウンスされ、コンチネンタルのワンメイクタイヤ開発も担うミカエラ-アーリン・コチュリンスキーや、初代Wシリーズ王者のジェイミー・チャドウィック、そしてキャサリン・レッグらに続いて最新の女性ドライバーリストに加わることとなった。

「私はおなじく電動シリーズのフォーミュラE初年度から関与してきたけど、当時からこれはモータースポーツにとって何か新しく、とても重要なものだという感覚を持っていた」と語ったシモーナ。

「私たち全員が気候変動の最悪の影響を回避するために、現状の暮らしかたや消費を続けていけないことは充分に認識していると思う。私としても、自動車とそのテクノロジーの境界を押し拡げるシリーズに関われるのは栄誉だし、かつてはF1やインディカーで自分の限界に挑戦してきたけれど、今はエクストリームEでそれに取り組むべきときだと思っている」と続けた31歳のシモーナ。

「男女がフィフティ・フィフティ(50:50)というのも素晴らしいアイデアで、前例のないものね。ほぼすべてのモータースポーツでドライバーは一種の孤独状態で戦うのが基本だし、私はそのキャリアの大半でグリッド上で唯一の女性という時間を過ごした」

「誰かとチームを組む機会はとても楽しいだろうし、ワガママの余地もない。電動パワートレインの扱いはフォーミュラEでの経験が役に立つかもしれないけれど、多くのドライバーにとって砂漠や泥、氷河など未知のサーフェスでの戦いになる。そこで“ボーイズ”と協力して勝利を目指すのは最高にクールな経験になるでしょうね」

 シリーズに採用される電動SUV『Odyssey 21(オデッセイ21)』プロトタイプは、ABBフォーミュラE選手権でもシリーズ創生期に技術開発を担当したスパーク・レーシング・テクノロジーズ(SRT)と、ウイリアムズ・アドバンスド・エンジアリング(WAE)が設計・製造を担う。

 そのオデッセイ21はふたつのモーターがリヤに搭載され、その最大出力は400kW(約544PS)で、最大勾配130%の路面においても1650kgの車体を約4.5秒で62mph(約100km/h)まで加速させることが可能とされている。

 ERCヨーロッパ・ラリー選手権の2輪駆動部門を経て、現在はジュニアWRCにも参戦する22歳のマニングスは、トップタレントのリストに加わる状況と電動SUVでの競争力について「私はまだ、自分自身に対して何を期待していいかを考えるのも早すぎると思う」と、控えめながらも展望を語った。

「そのサイズと存在感を考えれば、マシンは思いもよらない方法で走る可能性が想像できる。ケン・ブロックがダカールラリーのステージに挑んだ映像を見たけれど、彼らのような経験者からのフィードバックを聞き、自分の手でステアリングを握ってみるのが待ちきれない気分よ。ぜひ体験してみたい」とマニングス。

 女性初のWRC世界ラリー選手権ウイナーであるミシェル・ムートンを「私のヒーロー」と崇めるマニングスは、足がペダルに届くようになった14歳から、イギリスでラリーカーのドライブを習得してきた。

 2016年にプジョー208 R2をドライブしてERCへの挑戦を始め、翌年にはFIAレディス・トロフィーを獲得。イギリス人としては49年の歴史上初の欧州タイトル獲得者となり、その後もERCでのチャレンジを続けて、2020年にはフォード・フィエスタR2でWRCデビューも果たしている。

「テストをして良い感触が得られたら、ラリーから応用できるスキルと新たに学ばなくてはならないテクニックがわかると思う。SRTのエンジニアは『WRカーのパワーとレイドマシンのトルクを持つ』と言っているし、サイズとパッケージングから考えれば、とても印象的でシュールな体験になりそうね」

 そして、おなじくドライバーリスト入りした2016年ARCチャンピオンのテイラーも、スバルWRX STIで選手権タイトルを勝ち獲ったスペシャルステージでのドライブとは「非常に異なる技術が必要になるはず」だと予測する。

「もちろん私はグラベルで多くの経験を積んできたけれど、砂漠や氷河はまったく違う体験になる。それに電動SUVのドライブもね。間違いなく急な学習曲線を描くことになるでしょうし、ラリーストの経験からマシンコントロールと路面変化への適応力は身に付けたと思っているけど、エクストリームEの特異性を前にワクワクが止まらない気分ね」と期待を口にする32歳のテイラー。

「モータースポーツに関して私が日頃からアピールする点のひとつは、ヘルメットをかぶれば男女差は関係なくなり、ストップウォッチはジェンダーに関する偏見を持っていないということ」

「ふたりでペアを組んで、おなじ役割を共有して戦うのはとても新しく喜ばしい挑戦で、私のバケットリストにも載る、世界でまだ訪れたことのない場所に行き、全員で未知のシリーズに参加するのが本当に楽しみよ」