2020年05月25日 10:21 弁護士ドットコム
2020年9月までに日本全国でジェネリック(後発医薬品)使用率80%との政府の目標がありますが、「絶対にジェネリックは嫌だ」と拒否する人たちがいます。先発品メーカーに勤務して、その売り上げから給料をもらっている人以外には、選ぶメリットがない、と言っていいくらい皮肉なことなのですが、なぜそのように考えるのでしょうか。(薬局薬剤師ライター・見習い師)
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医療従事者、患者それぞれに、ジェネリックを拒否する人たちがいます。しかし、よくよく話を聞くと、きちんとした理由のある人は少ないのが実情です。
<ジェネリック拒否派の医師、薬剤師の意見>
これまでに筆者が直接医師から聞いたジェネリック拒否の理由
・理由はないけど、ジェネリック変更は嫌だ。
・患者が先発品希望なので、ジェネリック変更はダメだ。
・ジェネリックなんか効かない。
・先発メーカーとの「お付き合い」があるんだから、勝手にジェネリックに変更するな。〇〇%以上先発品調剤させるって約束しているんだよ。
薬剤師がジェネリック変更に消極的な理由(平成28年ジェネリック医薬品アンケート集計結果 全国健康保険組合島根支部より)
・効果に疑問がある。
・医療機関が積極的でないため。
<ジェネリック拒否派の患者の意見>
筆者が患者から聞いたジェネリック拒否の理由
・昔からずっと先発だったから、今更変えたくない。
・オーソライズドジェネリック(後述)を使ってみたが、合わなかった。
・ジェネリックは効かない気がするから先発品に変えた。先発品でもいまいち症状は治まらないが、ジェネリックには戻したくない。
・週刊誌に、ジェネリックは中国製と書いてあったから不安。
・何の薬か覚えていないけど、ジェネリックに変更したら気持ち悪くなったことがある。だから、全部先発品が良い。今までジェネリックだって知らないでずっと使っていた薬も、ジェネリックだと聞いて気持ち悪くなったから先発品に変えてもらった。
・(東京都の小児医療費助成により、)医療費がかからないから高い方が良い。医療費助成されなくなったらジェネリックに変更しても良いかも。
ネットの意見
・効果が同じと言われても信用できない。
・なんだかよくわからないけど、強く勧められるから拒否したくなる。
・ジェネリックは中国製と聞いたから不安。
・ジェネリックばかり使っていると、先発メーカーの開発力が低下する。
昔(20年以上前)は、先発品は大企業、ジェネリックは中小企業が作っていました。この歴史から、ブランド志向の人はジェネリックを拒否する傾向があります。
ジェネリック発売になると先発品の売り上げが減るため、先発メーカーや子会社が、自ら製造方法も添加物も同じオーソライズドジェネリック(以下、AG)を発売するという戦略が広がっています。しかし、ジェネリック拒否派の人たちは、AGも拒否します。「ジェネリック」の「ジェ」と聞いただけで、それ以上の説明を聞くことを拒みます。試しに一度飲んでみても、「合わなかった」から先発品を希望します。
このことから、ジェネリック拒否派の人たちは、明確な理由があってジェネリック拒否しているというよりも、気分的な問題だけで拒否していることが多いようです。
まれに、本当にジェネリックに変更したことが理由で、添加物によるアレルギーが起きることがあります。本当に添加物によるアレルギーが原因なのだとすると、別メーカーのジェネリックなら問題ないはずです。例えば、血圧の薬アムロジピン2.5mgには、先発品を含めて61銘柄が存在します。先発品だけでも4銘柄あり、添加物が違います。
先発品vsジェネリックという対立軸で考えること自体が、実はあまり意味のないことです。ジェネリックの多くは中国で製造されていますが、先発品も、多くが中国で製造されています。
そもそも、先発品、ジェネリックの区別は、厚生労働省がリストで指定しているものです。この指定は、薬価改定の際に変わることがあります。今までジェネリックだったものが先発品となった事例も、今まで先発品だったものがジェネリックとなった事例もあります。
また、現在は、以前のように、大企業が先発品を作っていて中小企業がジェネリックを作っているような単純な図式ではありません。先発品メーカーは、発売後長年経過し、売上の落ちた薬の販売権をジェネリックメーカーに売却していることがあります。
もともと先発品だけを作っていたメーカーも、次々とジェネリックに参入しています。ファイザー、武田薬品の子会社武田テバ、第一三共の子会社第一三共エスファ、エーザイの元子会社エルメッドエーザイなどがジェネリックを製造販売しています。
イソジンガーグルは、変わった経緯で、はじめに製造販売していたメーカーから他のメーカーに売却されました。はじめに製造販売していた明治製菓ファルマは、イソジンガーグルの販売権をムンディファーマに売却後、イソジンガーグルのジェネリック(販売名:ポピドンヨードガーグル「明治」)を発売しています。先発品よりもジェネリックを製造販売することを選んだ事例です。
日本では、国民皆保険制度により、0~3割負担で病院受診し、薬局で薬の調剤を受けられます。窓口で支払わなかった残りの費用は、社会保障費から支払われています。給料からの天引き分や消費税です。
それだけでは全然足りていないので、国債(借金)によって不足分を賄っています。借金はどんどん増えていますので、若い世代ほど、重い負担を背負わなければなりません。
社会保障費を抑制するため、財務省や厚生労働省からは、先発品とジェネリックを同じ薬価にする案や、先発品とジェネリックの差額を10割自己負担にする案も出ています。平成30年10月1日生活保護法改正により、生活保護の医薬品はジェネリックで給付することとなりました。生活保護以外の患者についても、ジェネリックが原則となる未来は近そうです。