2020年05月25日 10:21 弁護士ドットコム
不倫を続けるカップルの思惑は様々だが、中には本気で相手にのぼせ、結婚を考えるケースもある。目下、W不倫をしているキヨミさん(仮名・30代女性)は最近、とんでもない行動に出てしまった。
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キヨミさんは、妻子ある男性と飲み屋で出会い、その1週間後に不倫を始めた。毎月休みを合わせ、平日の朝から夕方までラブホテルで過ごす不倫交際を続けてきた。次第に、キヨミさんは「カレの1番」、つまり妻になることを願うようになったという。
そこで意を決して、彼の自宅を訪問してしまったのだ。ピンポンとベルをならすと、出てきたのは、彼の妻だった。
感情が抑えきれなくなったキヨミさんは、「彼はあなたよりも私を愛している」と言い放ってしまったのだ。夫の不倫、その相手を知った彼の妻は、キヨミさんに不倫の慰謝料を請求しているという。
「アタシ、払う気ないから」「払う気はないけどね。強制執行とかしてこないでしょ」とキヨミさんは、なぜか強気だ。このような場合でも強制執行をすることはできるのか。萱垣建弁護士に聞いた。
ーーキヨミさんは、不倫の慰謝料は強制執行されないと思っている。実際に、強制執行はできるのだろうか。
「不倫の慰謝料請求でも強制執行(差押え)は可能です。
裁判となり、勝訴の判決が出された場合は、キヨミさんが判決を受け取ってから2週間経過すると、その判決は確定します。
相手方(彼の妻)はその後、この判決が確定したという『確定証明書』を裁判所から取り寄せることができます。判決が確定したかどうかは裁判所に問い合わせれば教えてくれます。ここまでで、強制執行の準備が整ったといえます」
ーー差し押さえの対象となるのは、どのような財産なのだろうか。
「現金以外にも、(1)キヨミさん名義の預金口座、(2)キヨミさん名義の車、(3)給料、(4)生活用品以外の高級家具などの動産類、(5)家や土地などの不動産、などを差し押さえることができます。
不動産の差押えの場合、すぐにお金の回収はできませんが、相手方は売却することが困難になります。
なお、給料については全額ではなく、手取額の4分の1か、手取額が33万円を超える部分についての全額、そのどちらか多い方となります」
ーー彼の妻は、キヨミさんが慰謝料を支払わないのではないかという不安もあるようだ。
「たしかに、判決が出る前に、慰謝料を支払わなければならない側が差押えに備えて預金口座の残高を少なくしておくこともあります。
そのようなことが想定されるのでしたら、訴訟前に、仮の差押さえの手続きをすることを考慮しても良いでしょう。これが認められると相手方はお金を引き出せなくなるからです」
【取材協力弁護士】
萱垣 建(かやがき・たてる)弁護士
平成5年登録。弁護士経験25年以上。平成23年度愛知県弁護士会副会長。愛知県弁護士会及び中部弁護士会連合会の委員会の委員長、日本弁護士連合会の委員会の副委員長を経験。わかりやすく、疑問が残らないように説明することがモットー。
事務所名:万朶総合法律事務所