2020年05月24日 09:21 弁護士ドットコム
東京出入国在留管理局(東京入管)の収容施設に長期拘束(収容)されている外国人女性たちが4月下旬、職員らによって組織的な虐待、セクハラを受けていたという疑惑をめぐり、収容中の難民申請者の女性が、手紙を通じて被害を訴えた。
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裸同然の姿で乱暴に扱われ、その様子をビデオ撮影されたうえ、後日、職員に「あんたの裸をみんなで見たよ。あんたは本当にセクシーだね」と言われたのだという。5月17日におこなわれた有志の国会議員らによるヒアリングの中で、女性の代理人弁護士が明らかにした。(ジャーナリスト・志葉玲)
法務省・出入国在留管理庁(入管庁)は、国連の難民条約に基づき、紛争や迫害から、日本に逃げてきた難民を庇護する責任がある。
だが、日本の難民認定率は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の年次報告書でも名指しされるほど、諸外国にくらべて低く、一度「不認定」とされた難民申請者は、再審査の手続き中であっても、入管庁の収容施設に収容される。
今回、被害を訴えた女性、Aさんも難民申請者で、現在も紛争が続くアフリカのコンゴ民主共和国の出身だが、東京入管の施設に収容中だ。
先日の筆者記事(https://www.bengo4.com/c_16/n_11222/)で書いた通り、今年4月25日、新型コロナウイルス感染を恐れた被収容者の女性たちが説明を求めたところ、男性職員を含む入管職員が女性たちを暴力的に「制圧」した。
この際に、Aさんも耐え難い屈辱を受けたという。
Aさんは支援者の協力を得て、福島みずほ参院議員に手紙で自身の被害を訴えた。その内容を一部引用しよう。
「収容センター側のリーダーたちは(仮放免を求める訴えに対し)十分説得力のある説明をしなかったのです。女性の担当官たちはこれに粗暴な態度で返し、続いて男性の職員たちを呼びました(中略)男の担当官たちは私の部屋まで入って来て、力いっぱい掴まれていたのでほとんど裸状態になっていた私を、その状態のまま乱暴に、手にしていたビデオカメラであらゆる方角(原文ママ)から撮影しました」
「(後日、入管の職員が)単刀直入に馬鹿なことを言ったのです。"私たちみんな、あんたの裸をライブで見たよ。そのフィルムをビューワーでずーっと見た。あんたはほんとにセクシーだねぇ"と彼女は言いました」(Aさんの手紙より)
Aさんの代理人をつとめる駒井知会弁護士によると、雑居房でAさんが着替えていたところ、男性職員らが押し入り、「懲罰房」と呼ばれる独房に下着姿のままのAさんを乱暴に連行して、その様子をビデオ撮影したという。
Aさんが受けたショックは大きく、その手紙で「今も、そしてこれからもずっと、東京入管によってなされた嘆かわしい行為で私は大変に辱められ、恥辱を感じ続けるでしょう」「私は完全に破壊されました」とつづっている。
収容中の女性たちの家族や支援者によると、4月25日はAさんのみならず、何人もの女性たちが入管職員らに暴力的に「制圧」されたという。
彼女たちは暴れたり騒いだりしたわけではなく、仮放免について責任者からの説明を求めていただけであったのに、東京入管側は問答無用の実力行使をおこなったとのことだ。
こうした報告を受けて、有志の国会議員らが5月13日、入管庁へのヒアリングを実施した。
入管庁の岡本章警備課長の説明から、「制圧」時の状況について東京入管側からしか聴取しておらず、被害を訴える当事者の話を聞いていないことが明らかになった。
そのため、議員らは当事者からも話を聞くよう求めて、5月17日に再度ヒアリングをおこなったものの、岡本警備課長は当事者への聴取をおこなっておらず、東京入管側が「制圧」時に撮影したビデオ映像から「規則に基づく職務執行」と判断したと主張した。
しかし、Aさんの手紙の内容については「初めて聞いた指摘」と把握していなかったことを露呈した。当事者から話を聞かず、東京入管側の言い分のみを鵜呑みにする入管庁の対応の問題点が浮き彫りとなった。
また、「制圧」時の状況について、前回のヒアリングから繰り返し議員らから説明を求められたにもかかわらず、岡本警備課長は今回も「関係者のプライバシーや保安に関わる」として、詳しい事実関係はまったく語ろうとしなかった。
そのため、議員らはこの日に結成された「難民問題に関する議員懇談会」(会長:石橋通宏参院議員)として、今後もヒアリングを継続する方針を固めた。
筆者が、岡本警備課長に質問したところ、彼が4月25日の「制圧」での具体的事実について一切語ろうとしないのは、個人の判断ではなく、入管庁内で論議してのものだという。
東京入管職員による虐待・セクハラ疑惑については、佐々木聖子長官や森まさこ法務大臣も説明責任が問われている。