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パッと見わからない?「出雲大社」と一文字違いのお札販売。古典的手口に注意!

2020年05月22日 19:51  弁護士ドットコム

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岩手県内の男女にお札を2枚1000円で訪問販売した60代男性(青森県)が逮捕された。


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NHKなどの報道によると、訪問販売は4月上旬。お札には「出雲大神」と書かれており、男性は「出雲の神様です」と話していたという。新型コロナウイルス感染者が国内唯一ゼロの岩手県だが、被害者は「感染が不安で、御利益があると思って買った」と話しているそうだ。



被害者が出雲大社に問い合わせたところ、神社とは関係のないお札と判明したことから、被害者としては「出雲大社のお札」と思って購入した可能性がある。



ところが、今回の事件は詐欺罪ではなく、クーリング・オフの説明書類を渡さずに販売した特定商取引法違反での逮捕だ。「出雲大社」という文言を用いずに、「出雲大神」と書かれたお札を買わせる行為は詐欺罪に該当しないのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。



●クーリング・オフがらみの逮捕に疑問も

ーー今回のケースは詐欺罪に当たりうるでしょうか。



詐欺罪が成立するためには、嘘をつく行為が必要になります。世間一般の人が騙されるような装い方をしたかが問題になります。 



本件であれば、訪問販売の男性は出雲大社の関係者ではないにも関わらず、「出雲の神様です」と言葉巧みに関係者を装っていると思われます。



お札には「出雲大神」と記載されていますが、「出雲大社」という言葉を使わなかったとしても、世間一般の人からすれば、ご利益のある出雲大社のお札だと勘違いするでしょうし、そうした勘違いを利用してお金を騙し取ろうとしているわけですので、詐欺に当たるのではないかと思います。



普通であれば、クーリング・オフの説明書を渡さないだけで特定商取引法違反の疑いで逮捕されるのか少し疑問ですが、こういうご時世なので、お灸を据える意味もあるのかなとも思います。



●出雲大社「40年以上前からある」

出雲大社の東京出張所という位置付けの神社「出雲大社東京分祠」(港区六本木)は「まぎらわしいのは事実。少なくとも40年以上前からこのような出来事が起きていて、こちらにも問い合わせがたびたび届くが、なんともしようがない」と語る。



出雲大社とは別の神社が「出雲大神」のお札を実際に作っているため、「出雲大社とは関係ありません」と言えても、「それは出雲大社のニセモノです」とは言えないそうだ。



「出雲の方から来ました」「出雲の神様です」とのセールストークでは、出雲大社側から抗議できないという。



ただし、「出雲大神」の信徒ではない者が、勝手にお札を刷って販売するケースも多いという。



●10年前は詐欺罪で逮捕?

「10年ほど前に事件があって、うちに来た刑事さんにお話をしたことがあります。そのときは『出雲大社のお札です』という言葉を使っていたため、詐欺事件として容疑者が逮捕されていたと記憶しています」



ちなみに、こちらのお札事件も信徒ではない者による犯行だったそうだ。



東京分祠では「出雲大神のお札に抗議することはないが、思い込んで購入されるかたもいるようです。新型コロナの悩みにつけ込む行為はよろしくありません」と話した。公式サイトで注意を呼びかけている。




【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp