2020年05月22日 10:02 弁護士ドットコム
自治体の職員が地方議会の議員にお茶を出すーー。2020年2月、埼玉県議会で県議にお茶を出していた慣例を廃止したことが話題になったが、東京都豊島区ではまだ廃止されていないようだ。
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豊島区の入江あゆみ区議が4月18日、区議会での「お茶出し廃止とマイボトル・マイペットボトルの持ち込み」に反対意見があったとツイッターで発言した。
いったいどんな理由で反対されたのだろうか。入江区議に話を聞いた。
入江区議は、2019年4月の初当選後、委員会に出席した際、男女関係なく区職員が議員一人一人にお茶を出すことに驚いたという。
「『お茶出しって今もあるんだ』とビックリしました。夏でも淹れたての温かいお茶を出してもらえます」
驚きが疑問に変わったのは、入江区議が水の入ったペットボトルを持ち込もうとした時だという。
「『規則で持ち込みは原則禁止です』と言われました。喉の調子が悪いなど特別な理由があるなら、議長に相談して了承をもらえば大丈夫とも言われましたが、『それは変だな』と思いました」
確かに、「自分で飲み物を用意してはいけません」というのは妙なルールだ。
たとえば、スポーツ観戦や空港などでペットボトルの持ち込みに一定の制限が設けられていることはある。しかし、これはテロ対策など保安上の理由によるものだ。区民の代表である区議会議員に対し、テロの心配は必要ないだろう。
また、持ち込みを認めれば、議員は好きなものを飲め、職員はお茶を出す必要がなくなるのだから、誰にとっても特に不都合はないはずだ。
埼玉県議会では、お茶出しだけを担当する臨時職員の女性を雇っていたが、豊島区議会については、「議会事務局で勤務している職員がお茶出しを担当しているので、人員整理の要素はない」(入江区議)という。
入江区議によると、持ち込み原則禁止などのルールを変えるには、議会改革検討会において全会派一致で承認を得る必要があるという。
そこで、入江区議のグループは同委員会で「お茶出し廃止とマイボトル・マイペットボトルの持ち込み」を提案。しかし、反対意見があり、提案は承認されなかった。
最大会派の自民党が、次のような理由で反対したという。
「色々な形のペットボトルを机に置くのは、見た目が悪いのではないか。ネット中継をみた区民が不快に思うかもしれない」
「出してもらったおいしいお茶を飲んで、議論を深めてきた」
入江区議はこれらの理由に納得できず、それが今回のツイートにつながった。
「飲み物なんて自分で用意すれば十分な話です。毎回お茶出しさせるというのは、無駄な作業だと思います。職員の方にはお茶出し以外の業務に集中していただいたほうが、議会にとっても有益なのではないでしょうか」
なお、ツイート後に、新型コロナウイルス対策として職員との接触を減らすなどの理由で、当面の間はお茶出しを休止し、事務局の用意するポットからのセルフ式とマイボトル・ペットボトルの持ち込みを併用して各自対応することになったという。
「この措置はあくまで暫定的なもので、私たちの提案が認められたわけではありません。引き続き『お茶出し』については活動していきたいと考えています」
弁護士ドットコムニュースは5月15日と20日、反対理由を確認するため区議会事務局を通じて自民党区議に取材を申し入れたが、期限までに回答はなかった。
秋田県議会は4月、各常任委員会などで県議や県幹部にお茶出しする慣例を廃止した。河北新報(4月23日)によれば、議会運営委員会で自民党会派から「無駄なことはやめよう」とお茶出し廃止の提案があり、その場で決まったという。
同じ自民党の議員でも、場所が異なれば、考え方もずいぶんと異なるようだ。
はたして、豊島区民は「ネット中継の見栄えの良し悪し」で議会や区議の評価を判断するのだろうか。お茶を出してもらわないと議論を深められない議会を評価するのだろうか。
入江区議によれば、「お茶出しに関する議論は何年もされてる」という。暫定的にお茶出しを休止している今、各区議自らお茶を用意しながら、その必要性を改めて検討してみてはどうだろうか。