2020年05月22日 10:02 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスの影響で、裁判所などでの労働事件の審理がストップし、労働者の生活が脅かされているといいます。
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日本労働弁護団が所属弁護士にアンケート調査をしたところ、依頼者から「再就職ができず、生活ができない」など不安の声があがっているそうです。
同弁護団は5月21日、労働組合も交えたWeb集会を開き、早期の審理再開を求めました。
「労働事件は、労働者と家族の生活がかかっている。緊急に解決する必要がある事件がほとんどです」
同弁護団の棗一郎弁護士は、審理再開の必要性をこう説明します。
たとえば、裁判所での紛争解決の手続の1つに、「労働審判」があります。紛争の「迅速、適正かつ実効的な解決」を目指すもので、3回以内の期日で審理が終わるスピード感が特徴です。
しかし、新型コロナの影響で多くの期日が延期されたまま、新しい期日もなかなか設定されていません。
また、より迅速性が求められる「仮処分」という手続きもあります。
裁判所は緊急性が高く業務を続けるとしていましたが、実態としては必ずしもそうはなっていないようです。
神奈川県の石渡豊正弁護士は4月のはじめに、担当する賃金未払い事件で仮処分を申し立てました。通常なら1~2週間ほどで期日が入るところですが、なかなか指定されず、最終的には2カ月近くかかることになったそうです。
Web集会に参加した労働組合からは、コロナ対策を理由に、会社から団体交渉を先延ばしされているとの報告も複数ありました。
組合から見れば、コロナにかこつけた団交拒否ですが、紛争解決の場である労働委員会の活動が大幅にストップしていることから、会社側に事実上のお墨つきが与えられている構図です。
解決が長引く分、さらなる不当労働行為が起きる恐れもあります。
また、京都府の塩見卓也弁護士からは期日の延期により、証言予定だった外国人技能実習生の在留期限が切れてしまう恐れが出てきたという報告もありました。労働委員会と急ぎ日程を調整しているといいます。
労働弁護団や組合もコロナの感染防止が重要であることに異論はないといいます。一方で、労働者や組合を早期に救済する必要もあります。
集会参加者は、法廷や大会議室など広い空間の活用、アクリル板などの遮蔽板の設置、テレビ会議の活用などの工夫で、手続きを速やかに進めてほしいと求めていました。