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三浦貴大「頑張ることは繋がる」 現実とシンクロした『エール』からのメッセージ

2020年05月21日 12:51  リアルサウンド

リアルサウンド

『エール』写真提供=NHK

 「豊橋に帰ります。」という音(二階堂ふみ)の置き手紙と共に幕を閉じた『エール』(NHK総合)第38話。第39話では、団長・田中(三浦貴大)が裕一(窪田正孝)に応援歌作曲の最後の説得をする。


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 西洋音楽の知識を最大限に用いた「反逆の詩」を持ってしても、小山田(志村けん)から「……で?」と相手にもされなかった裕一は、すっかり自分を見失っていた。早慶戦まであと3日。「紺碧の空」は一音も書けておらず、裕一は田中に「応援歌って勝ち負けに関係ありますか?」と告げる。その言葉に、応援は自己満足ではないか、勝敗に関係があるのかと田中の心も揺れていた。


 そんな田中の背中を押したのは、豊橋から帰ってきた音だった。今の裕一に必要なのは、心からの言葉であると、「あなたの思い、気持ちを伝えて。凝り固まった頭を吹っ飛ばして!」と伝え、田中の襟を正す。


 そうして再び裕一の前に現れた田中が伝えたのは、甲子園と早慶戦にかける思いだった。中学時代、片田舎で野球に励んでいた田中。甲子園への原動力となっていたのは、バッテリーを組んでいた清水誠ニの存在だった。不慮の事故により、足を怪我した清水は、元どおりにならないまま学校を中退。夢を断たれた清水は、田中に「早稲田ば勝たせてくれ。それが一番の楽しみ」という言葉を残した。


 「頑張ることは繋がる」。選手が活躍するためには応援することしかない。音が裕一を思って日々奮闘しているように、そこにはかつて裕一の原動力にもあった「誰かのために」という思いが込められていた。心を動かされた裕一は涙を浮かべる。


 名前や功績より人の縁を信じる田中は、裕一に惹かれていたのは不器用という理由からだった。「人は感情の生き物」とは言ったもので、塞ぎ込んでいた裕一に久しぶりの笑みが戻る。明日までに曲を完成させることを約束し、シュークリームの美味しさに意気投合する裕一と田中。そんな2人を遠くから見守っていた音は、ホッと肩をなでおろしていた。


 『あさイチ』(NHK総合)の朝ドラ受けで、近江アナも触れていたように、今回の『エール』で誰もが思い浮かべたのは、昨日発表された夏の全国高校野球の中止、青春の3年間をこの夏にかけていた球児たちの思いだ。NHKの取材によれば、古関裕而の息子の古関正裕氏は「来年は、新型コロナウイルスが収まって『栄冠は君に輝く』が聞きたい」と大会歌が甲子園球場に鳴り響くことを願っているという(引用:夏の全国高校野球 戦後初の中止決定 新型コロナ影響 | NHKニュース)。田中の「頑張ることは繋がる」という言葉は、裕一だけでなく、多くの視聴者の心にも響いたはずだ。(渡辺彰浩)