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『エール』吟(松井玲奈)の婚約者・鏑木役の奥野瑛太に注目 映画・ドラマに重宝される理由とは?

2020年05月21日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『エール』写真提供=NHK

 現在放送中のNHK連続テレビ小説『エール』には、メインキャスト以外にも個性豊かな登場人物が目白押しだ。特に東京編に入ってからは、喫茶店夫婦を演じる仲里依紗、野間口徹、早稲田大学応援団員として三浦貴大、一ノ瀬ワタル、慶應義塾大学応援団員として橋本淳など、映画やドラマで活躍する俳優たちが次々と登場。今回、そんな俳優たちの中で注目したいのが、奥野瑛太だ。


参考:三浦貴大、『エール』熱血漢の応援団長役に高まる期待 朝ドラで窪田正孝と共演する喜び


 奥野が演じるのは、若き軍人・鏑木智彦。音(二階堂ふみ)の姉・吟(松井玲奈)の東京でのお見合い相手・鏑木智彦として第28話に登場。「お見合いの失敗を続ける吟が初めて進展した相手」と吟と音の母・光子(薬師丸ひろ子)が話していたが、その言葉通り、鏑木は第39話で久しぶりの登場となる。


 奥野の名を世に知らしめたのは、入江悠監督作『SR サイタマノラッパー』シリーズのMC MIGHTY役。シリーズ3作目となる『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』では主演として作品を背負い、どん底まで堕ちていくMIGHTYを熱演。最後に闇の中から立ち上がる姿、渾身のフリースタイルラップは、青春映画屈指の名シーンと言ってもいいだろう。ライターの麦倉正樹氏は奥野の魅力を次のように語る。


「2009年公開の映画『SRサイタマノラッパー』でその存在を知って以来、さまざまな映画・ドラマでその姿を目にしてきました。『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』では、あれよあれよという間に社会の暗部に堕ちていってしまう役柄だっただけに、以降の活躍を見ていると、『あれから立ち直ったんだなあ』とMIGHTYと彼自身をどうしても重ねてしまう部分があります(笑)。MIGHTYと重なるような、いわゆる“チンピラ”の役柄も多く演じていますが、『エール』での爽やかな青年の姿に象徴的なように、作品によって雰囲気がまったく異なっています。『SRサイタマノラッパー』シリーズでは、基本的にサングラスをかけている姿だっただけに、もしかすると“MIGHTYの奥野瑛太”と気づかずに彼の姿を観ている方も多いかもしれませんね。


 『エール』でも軍人という役柄ですが、2019年公開の映画『アルキメデスの大戦』でも、主人公・櫂(菅田将暉)と敵対する側の軍人として、存在感を放っていました。体躯のスマートさと、精悍な顔立ちで、台詞が多くなくても、そこにいるだけで場の雰囲気が締まる。演出する側にとっては貴重な存在だと思いますし、それが映画・ドラマと多くの作品に起用されている理由だと思います」


 奥野も多く演じている“チンピラ”的キャラクターは、一歩間違えればただの記号的キャラクターになってしまうことも多い。しかし、奥野の演技にはそれがないと麦倉氏は続ける。


「映画『凪待ち』のノミ屋の店員役、『タロウのバカ』の半グレ集団のリーダー役にしても、ただの“悪いやつ”にならない、奥野さんが演じる人物には人間味がしっかりとあるんですよね。この人はここに至るまでに何かあったんだろうと思わず想像させる背景がある。ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系)でも、殺し屋として沢村一樹とも渡り合う演技を見せてくれましたが、ベテラン俳優たちを相手にもまったく引けを取らない存在感はすごいと思います。年齢を重ねて役の幅も広がっていると思うので、これからもさまざまな作品でその姿が観られることを期待しています」


 『エール』でもMIGHTYと同一人物とは思えない爽やかさを放っている奥野瑛太。裕一(窪田正孝)がコロンブスレコードと繋がることができたのも、奥野演じる鏑木が廿日市(古田新太)と親戚だったからだ。そう考えると、裕一と音、どちらにも関係がある人物として今後も重要な役となる可能性がある。数々の作品で存在感を高めてきた奥野だが、朝ドラを経てさらなる飛躍を遂げそうだ。また、朝ドラで初めて知り、気になったという方は、『SRサイタマノラッパー』シリーズもぜひチェックしてほしい。(石井達也)